「電子カルテの買い替えが起きる原因」
長年慣れ親しんだ電子カルテを買い替えるという決断は、診療所経営者にとって大きな決断となります。買い替えることによって、現場で大きな混乱が生まれることもあるでしょう。にもかかわらず、なぜ買い替えにいたったのか。今回は電子カルテの買い替えが起こる原因を考えてみます。
電子カルテの買い替えに躊躇する
「電子カルテは買い替えが難しい」システムとよく言われます。この認識はある意味正しいのですが、全く買い替えができないわけではありません。買い替える際の注意点をしっかり理解していれば買い替えは可能なのです。しかしながら、これまで長年使ってきた電子カルテをいざ買い替えると考えると、かなりの躊躇が生まれるのはやむを得ません。
電子カルテは買い替えが難しいシステムですから、よっぽどな理由がなければ、わたしも買い替えはお勧めしていません。ちなみに、ここでいう買い替えとは、電子カルテのメーカー自体を変えることで、同一メーカーのモデルチェンジによる買い替えではありませんのご注意ください。
買い替えが難しい理由
買い替えが難しい理由は、①データの移行、引継ぎが完全にはできないこと②操作を一から覚え直さなくてはならないこと③周辺システムの連携をやり直す必要があること④システム同士に機能差があること、などが主な理由となります。特に②の操作を一から覚えることや、④の機能差については、現場から大きな反発が生まれる可能性があります。
買い替え理由の第1位は「サポート体制」
残念ながら、買い替えに至ったクリニックに話を伺うと、買い替える理由の多くがサポート体制に対する不満でした。以下がヒアリングした電子カルテの買い替えにいたった理由です。
<電子カルテの買い替え理由>
・電子カルテのトラブル時に来てくれなかった。
・サポートの電話をかけても、営業時間外だった。
・診療報酬の算定に関する相談にまったく対応してくれない(以前は対応してくれた)。
・2年に1度の診療報酬改定のたびにバタバタする。スムーズではない。
・セットやテンプレートなどの修正を依頼してもなかなか対応してくれない。
・担当者が変わっても引継ぎがしっかりされていない。
・購入したとたん担当者が来なくなった。
このように、買い替え理由はサポート体制の不満に集中しています。一方で、機能不足や操作感に不満をもって買い替えるケースはほとんどありませんでした。サポートの良し悪しは買ってみないとなかなかわからないものです。また、導入前はそれほど重要視していないのかもしれません。しかしながら、実際導入してみたら、そこが大きな問題であったという理由に他なりません。
「更新価格」に対する不満
また、通常5年~6年に一度ある電子カルテ更新時の価格に関する不満もお聞きします。「電子カルテ更新時に買った時と同じだけの金額が必要となる」が代表例です。電子カルテはパソコンで動くシステムですから、OSが変更されるたびに大きなシステム変更が行われており、その都度後継機種が生まれることで、そのような状況が生まれていました。
しかしながら、このようなことも最近では、更新時に「ハードのみの買い替えで済む」ケースも増えていたり、そもそも「継続して使用することが前提となっている」ケースもありますので、こういった問題はいずれはなくなるのかもしれません。
「周辺システムの連携」に対する不満
近年、クラウド化によってシステムの開発環境が大幅に改善されたために、周辺システムと呼ばれる製品群が増加傾向にあります。周辺システムとは、画像ファイリングシステム、予約システム、Web問診システム、自動精算機・セルフレジ、キャッシュレス、レセプトチェックシステム、保険証リーダー、診察券発券機などです。最近では、オンライン資格確認もその一つになります。
これらの周辺システムは電子カルテ連携させなくても使用はできますが、システムそれぞれに患者IDを入力する必要があり、2重入力が発生するうえ、患者の取り間違いの原因となってしまいます。そのため、ID連携やチェックイン連携をするのが主流になっており、システム間の連携の際には、電子カルテメーカーに連絡し、連携調整をお願いすることになります。この際に、連携を積極的に進めていないメーカーであれば、「そのシステムはつながりません」といった回答が返ってくるのです。
最近、導入が始まっている「オンライン資格確認」についても、メーカー間の対応の差が顕著に出ています。お問い合わせをすると「いますぐやりましょう」と積極的なメーカーも入れば、「まだ、しばらくは(対応)しなくていいです」と消極的なメーカーもあります。
この差は、どこから生まれるのでしょうか。それは、連携調整は手間がかかる作業です、時間もかかります。フィールドサポートを多く抱えていない企業にとっては、できるだけ後回しにしたいと考えているのではないでしょうか。つまり、この問題もサポート体制の問題なのです。