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企業健康経営 人事・総務 コメディカル 2024.10.18 公開

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【津下先生解説】指導者の特性に合わせた保健指導効果の高め方について vol.11

第4期特定健診・特定保健指導制度が2024年4月から開始されました。ウィーメックスは指導品質の向上のためのセミナーを開催し、第1期より厚生労働省等の検討会委員を務めている女子栄養大学特任教授の津下一代先生に解説いただきました。本コラムでは、講演内容のポイントをさらに詳しく解説いただき、連載でお届けいたします。今回は組織全体で品質を標準化する方法について教えていただきました。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策

目次

Q1. 標準化するための視点について教えてください。

【津下先生解説】指導者の特性に合わせた保健指導効果の高め方について vol.11

A. 特定保健指導品質を向上させるためには、「保健指導プロセスの標準化」と「保健指導スキル向上に向けた標準化」の2つの視点で考えるとよいでしょう。

「保健指導プロセスの標準化」は、保健指導の着実な実施のために不可欠な標準化といえます。事業の流れに従って、すべきことを整理し、スケジュール、役割分担、必要物品、対象者の導線、保険者からの特別な依頼事項等をチェックリスト化します。これが整っていないと、保健指導に対する不満が高まることになります。

「保健指導スキル向上に向けた標準化」は、チームとして保健指導効果を高めていくための標準化です。組織として保健指導スキル育成を標準化していくことで、保健指導品質を高めることにつながります。これが整うことにより、保健指導に対する満足度が向上し、組織としての信頼を高めることにつながります。

Q2. 保健指導スキル向上に向けた標準化について、具体的な手法を教えてください。中でも保健指導スキル評価表の作成や活用方法等のポイントを知りたいです。

A. 保健指導で必要とされるスキルを明確にし、指導者がどのくらいの自信をもって対応できるかを確認します。「標準的な健診・保健指導プログラム、研修ガイドライン」のスキル評価表は、特定保健指導実施者であれば、どの職種であっても抑えなければならない事柄をリスト化したもので、セルフチェックに適しています。また、ロールプレイによる客観的評価や対象者アンケート、事業評価からの課題抽出などにより、保健指導技術の評価を行うことができます。見えてきた課題に対して、丁寧に経験を積むこと(振り返り、OJTのルーチン化)により克服できるものもありますが、研修等の集中的な学習により対応能力を高めなければならないものもあります。

保健師、管理栄養士はそれぞれの専門課程で教育を受けているため、得意分野に濃淡があります。スキル評価表を用いた研究では、管理栄養士は食生活指導については強みを持つものの、検査結果の説明や禁煙、運動についての知識や技術を強化する必要があること、保健師・看護師は食生活指導について苦手意識を持っている割合が多いことが分かりました。得意分野は他の職種に教え、不得手なところは他職種の保健指導から学ぶなど、勉強会の機会を定期的に組み込んだり、外部研修の機会を活用したりするとよいでしょう。

保健指導を統括するリーダー的な立場の人は、スキル評価表や客観的な評価から保健指導者の特性を把握し、チーム編成や育成計画を考えていきます。カンファレンスでは、多職種の意見を聞けるように配慮することも大切です。


参照元:健診・保健指導の研修ガイドライン(令和6年度版) 保健指導スキル評価票

Q3. 評価した後の振り返りの仕方や記録において、初任者、経験者、リーダーそれぞれで留意するポイントの違い等あれば教えていただきたいです。

A. 初任者においては、まずはメタボリックシンドロームに関する保健指導の基本をおさえたうえで、活用できることが求められます。職種の違いにかかわらず、健診データの説明、減量目標の設定、具体的な改善方法について提案できることが不可欠です。特定保健指導の進め方について、組織でのルールを十分に理解したうえで対象者に説明できること、判断に迷う場合には上司、同僚に確認する習慣をつけることが大切です。

経験者は保健指導にも慣れてきたところで、ともすればマンネリ化につながりやすい段階です。よりよい保健指導を目指して学習を進める意欲を高めること、困難事例に対処できることが求められます。幅広い知識の習得や新たなアプローチ法を知ることが有用です。保健指導の事例をまとめて考察、発表する機会を作ることで、評価の視点を踏まえた保健指導を意識できるようになります。経験者の継続的な学習姿勢は初任者のモデルにもなりうることを認識して、丁寧な振り返り習慣と工夫を続けることが大切です。

リーダーは、多彩な個性を持つ保健指導者の学習意欲を高め、チーム全体としての効果が上がるように取り組んでいきます。また、保健指導技術だけでなく、企画と評価、外部との折衝など、あらたな課題に取り組んでいく必要があります。広い視野で仕事をすることにより、保健指導の品質について改めて考えていくことにつながることでしょう。

▽前回のコラムをご覧になりたい方はこちら
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/healthmanage-point-10
▽関連資料
「チームで指導力を高める『スキル標準化の仕組みの作り方』」
https://go.medicom.phchd.com/wellsportstep_seminar_material_202407(PDF)

筆者情報

津下 一代

津下 一代(つした かずよ) 様

女子栄養大学 特任教授

名古屋大学医学部医学科を卒業後、国立名古屋病院内科、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務。
12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長に就任。令和2年より女子栄養大学特任教授として活躍。

健康日本21(第三次)推進専門委員会、健診・保健指導の在り方に関する検討会などの厚生労働省等の委員、健康・医療新産業協議会・健康投資WGなどの経済産業省の委員を務めるなど、多方面で活躍。

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