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企業健康経営 人事・総務 コメディカル 2024.07.01 公開

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【津下先生解説】食習慣や休養習慣などの目標立案のコツとは vol.9

第4期特定健診・特定保健指導制度が2024年4月から開始されました。ウィーメックスは指導品質の向上のためのセミナーを開催し、第1期より厚生労働省等の検討会委員を務めている女子栄養大学特任教授の津下一代先生に解説いただきました。本コラムでは、講演内容のポイントをさらに詳しく解説いただき、連載でお届けいたします。今回は2024年3月7日開催のセミナー後の視聴者質問の中から、第4期の目標立案時の留意点ついて教えていただきました。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策

目次

Q1. 2cm,2kgの主要達成目標とは別に行動変容もポイント加算となった背景について、改めてお伺いしたいです。保健指導の目的は内臓脂肪の減少ですが、エネルギー量削減に直結しない行動変容もポイント算出対象であるため、支援時に留意したいと思っております。

A.第4期からのアウトカム評価では、エネルギー収支に直接関係する食生活や運動習慣のほか、「エネルギー量削減に直結しない行動変容」もポイント算出対象となります。ただし、行動変容の内容は何でもよいわけではなく、「内臓脂肪の蓄積に起因する生活習慣病リスクを有する人」にとくに改善してもらいたい生活習慣に限定しています。例えば、喫煙、飲酒、休養、記録などです。

【津下先生解説】食習慣や休養習慣などの目標立案のコツとは vol.9

喫煙はメタボを引き起こしやすいだけでなく、メタボとの重複により循環器死亡を高めるリスク因子です。また特定保健指導の階層化に用いられますので、禁煙を最終評価時まで2ヵ月以上実施できたことを評価の対象としています。
飲酒習慣の改善は、エネルギー収支に影響するだけでなく、肝機能の改善にも効果的です。過量の飲酒により肝細胞が過労状態になると、糖・脂質代謝に異常をきたし、脂肪肝などを悪化させます。2合以上の飲酒者の場合にはまずは休肝日を作る、2週間程度のアルコールオフ期間を作ることなどを勧め、肝臓の負担を減らすことを優先するとよいでしょう。
休養習慣としては、睡眠不足の改善が重要です。睡眠不足状態では食生活・運動習慣等の改善意欲が低下しやすいこと、また、肥満は睡眠時無呼吸症候群と関連が深いことから評価対象としています(Q2参照)。
記録としては、毎日体重や血圧を測り、結果を記録することを推奨しています。特定保健指導の目的としてセルフケアが重要であること、また、記録から賞賛できる点や修正点を発見し、効果的な継続支援につなげることができるなどの効果も期待されます。

一方、留意したいのが食生活の評価です。食生活の改善はエネルギー収支を整えるための、最も重要な行動変容です。「野菜を多くとる」「食塩を減らす」などは健康的な食生活ではあるものの、エネルギー摂取量が変わらない場合には評価対象とはならないことに留意してください。「野菜を多くとることにより、脂肪の多い食品を減らすことにつなげる」、「薄味にすることで食べ過ぎを防止する」など、エネルギー摂取量の減少につなげて目標設定をするように意識するとよいでしょう。

Q2. 休養習慣の行動変容は食習慣や運動習慣と異なりエネルギー量削減には直結しにくい行動変容ですが、制度として休養習慣の改善に対して期待していることをお伺いしたいです。対象者の状況から睡眠の質の改善も必要と判断した場合、質の改善に繋がる目標を提案するかなど検討したいと考えております。

A.睡眠時間が極端に短いと、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まること、睡眠不足の状況では生活習慣改善に取り組む意欲が低下することから、健診時の質問票で「睡眠で休養が十分とれていますか?」に「いいえ」と回答した人に対しては、まずは睡眠に関する保健指導を行うことが推奨されます。
最近発表された「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を参考にするとよいでしょう。
成人に対しては、以下の3つのポイントがあげられています。

〇適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。
〇食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
〇睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることが重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する。

なかでも閉塞性睡眠時無呼吸は肥満と合併しやすく、昼間の眠気により交通事故の危険を高めたり、心血管事故の原因となったりします。睡眠時間は取れているけれど熟眠感がない、いびきをかいたり呼吸が止まるなどの指摘を受けている場合には、医療機関の受診を勧める必要があります。

一方、特定保健指導で重視する食生活や運動習慣の改善が睡眠に好影響を与えることも知られています。有酸素運動を実施したり、しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えると、体内時計が調整され睡眠・覚醒リズムが整い、質の良い睡眠につなげることができます。

Q3. 特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き等を読んでも、改正後の評価方法や目標の立て方を理解できているか自信がなく不安が残っています。理解を深める方法がありましたらアドバイスいただきたいです。

A.新しい仕組みの導入ですので、保健指導者も運営サイドも不安も大きいと思います。
そこで保健指導の記録をこれまで以上に具体的につけること、チームで確認することを推奨します。その際、長文を書くのではなく、生活習慣の課題、行動目標と実施計画(できればそれを設定した理由)、行動変容の記録(状況の確認)等について、簡潔に記載しておきます。とくにポイント評価の対象となる行動変容については、いつ設定し修正したのか等、最終評価時以降に客観的な評価に用いることも意識して、記載する習慣をつけるとよいでしょう。

▽前回のコラムをご覧になりたい方はこちら
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/healthmanage-point-08
▽関連資料
『対象者と信頼関係を築くためのスキルの習得』
https://go.medicom.phchd.com/wellsportstep_seminar_material_20240307(PDF)

筆者情報

津下 一代

津下 一代(つした かずよ) 様

女子栄養大学 特任教授

名古屋大学医学部医学科を卒業後、国立名古屋病院内科、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務。
12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長に就任。令和2年より女子栄養大学特任教授として活躍。

健康日本21(第三次)推進専門委員会、健診・保健指導の在り方に関する検討会などの厚生労働省等の委員、健康・医療新産業協議会・健康投資WGなどの経済産業省の委員を務めるなど、多方面で活躍。

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