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診療報酬・調剤報酬 医師 事務長 2023.07.14 公開

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診療報酬改定は何年ごと?背景や次の改定タイミングについても解説

医療機関が提供する診療行為や医療サービスの対価として国民健康保険などの公的医療保険から医療機関に支払われる報酬が診療報酬です。医療機関の収入は、保険診療の診療報酬と自由診療の報酬に分けられますが、多くの医療機関では保険診療の診療報酬が収入の柱となっています。「診療報酬の改定」というニュースをテレビなどで目にしたことがある方も多いかもしれませんが、診療報酬とはどのようなもので、なぜ改定が行われるのかといったことはわかりづらいでしょう。そこで、この記事では診療報酬の概要や、なぜ改定が行われるのか、いつ次の改定が行われるのかなどを詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策

目次

診療報酬改定は2年ごと

診療報酬の改定は定期的に行われています。まずは診療報酬がどういったサイクルで改定されているのかを確認していきましょう。

診療報酬の改定は基本的に2年に1回行われています。直近では2022年度に診療報酬の改定が行われているため、次の診療報酬改定のタイミングは2024年度ということになります。診療報酬の切り替わりのタイミングは、毎回4月1日です。そのため、新たな診療報酬が導入されるのは2024年4月1日ということになりますが、次の改定のタイミングは通常と異なり、4月1日ではなさそうです。医療機関やシステムを構築するベンダーの負担を考慮して、スケジュールを後ろ倒しにすることが検討されているからです。なお、現在の段階では2024年の何月何日に診療報酬が改定されるかは明らかになっていません。

診療報酬改定とは

国民健康保険やサラリーマンの方が加入する健康保険などの公的医療保険から医療機関に支払われる報酬を見直すことが診療報酬改定です。薬の価格については毎年見直しが行われ、診療行為に対する対価の見直しは原則2年に1回行われています。診療行為の対価は1点10円で計算されており、初診料は288点、再診料は73点など診療内容ごとに細かく点数が決められています。この点数の見直しが診療報酬の改定です。

診療報酬は、医師の人件費や技術料といった「本体」部分と、薬の価格や医療機器の材料費などにあたる「薬価」の部分に分かれます。さらに本体は、医科診療報酬、歯科診療報酬、調剤診療報酬に分かれており、それぞれ改定率が異なります。例えば、直近の改定である2022年度のそれぞれの改定率は、医科診療報酬が+0.26%、歯科診療報酬が+0.29%、調剤診療報酬が+0.08%でした。

▽参考記事
厚生労働省「診療報酬改定について」
厚生労働省『令和4年度診療報酬改定の概要【全体概要版】』(PDF)

そもそも診療報酬とは

2年に1度の改定が繰り返されているだけに、診療報酬改定のための議論が行われていることをニュースなどで知っている方もいるでしょう。ニュースを見て「何を議論しているの?」「なぜ頻繁に改定しなければならないの?」と疑問に思う方もいるでしょう。そもそも、診療報酬とはどういった制度で、なぜ日本の医療にとって必要なのでしょうか。

一般的なサービスや商品を購入する際に多くの人は、料金を確認した上で購入を検討すると思います。医療機関において、医療サービスの料金表にあたるのが診療報酬です。例えば、初診の診療報酬は288点と決められています。1点10円で計算されるため、初診時の医療費は2,880円となります。

医療費の自己負担率は、原則として年齢によって決められており、小学生から69歳までは3割負担、70歳から74歳までが2割負担(現役なみの所得がある方は3割負担)、75歳以上は1割負担(現役なみの所得がある方は3割負担)です。そのため、自己負担額が3割の方の場合、初診料の自己負担額は850円、1割負担の方で280円と自分の支払う医療費があらかじめわかるようになっています。

診療報酬は、医療行為ごとに細かく決められており、1点10円で計算することは全国どこの医療機関でも変わりはありません。本来、医療機関で提供する医療行為や医療サービスの価格は医療機関ごとに決めることが可能なものです。しかし、診療報酬制度によって国が医療行為や医薬品代の値段を細かく定めているため、患者さんは法外な医療費を請求される心配なく、医療サービスを受けられるようになっています。

診療報酬の目的について

一般的な企業が企業活動を行うためにランニングコストがかかるように、医療機関を運営していくにもコストがかかります。医師や看護師といった医療従事者の人件費、医療機器や医薬品の購入費用などが必要です。診療報酬の目的は、これらのコストを賄うことにあります。

医療機関は公的医療保険から診療報酬を受け取る仕組みのため、患者さんは診療費を全額負担することなく医療サービスを受けることができます。医療機関も提供した医療サービスに応じて決められた額の報酬が確実に受け取れるため、診療報酬制度は患者さん、医療機関の双方にとってメリットが大きい制度といえるでしょう。

診療報酬の用途について

医療機関が診療行為や医療サービスを提供することによって得た対価である診療報酬は、その医療機関を運営していくための費用にあてられます。医療機関の運営費には、例えば、医師や看護師などの医療従事者の人件費、薬や医療機器の購入費用などがあります。

診療報酬と聞くと、医師だけの収入と思う方もいるでしょう。しかし、実際には医師の収入だけではなく、医療機関が運営していくためのさまざまなコストにあてられているのです。診療報酬制度があるため、患者さんは安心して医療サービスを受けられます。また、医療機関は医療費の不払いの心配なく医療行為を提供できるのです。

診療報酬の役割と社会への影響について

診療報酬は病院にかかる患者さん本人のほか、患者さんが加入する公的医療保険からも支払われるものです。医療費のうち、患者さん本人が支払うのは1~3割で、残りを公的医療保険が支払います。

診療報酬制度がなく、患者さんの自己負担額が増額されてしまえば、医療費が払えないため適切な治療が受けられないという方が増えてしまうでしょう。また、医療費が高額になれば患者さんの足が遠のき、患者さん不足に陥ってしまう医療機関が出てくる可能性もあります。さらに、高額な自己負担額を支払える高額所得者だけに医療サービスを提供するという医療機関が出てくる可能性もあるでしょう。

実際に、国民皆保険制度を導入しておらず、診療報酬という考え方がないアメリカは、日本では考えられないような高額な医療費が請求されることで有名です。ニューヨーク市のマンハッタン地区では、盲腸の手術・入院の費用は100万円以上になるといわれています。診療報酬制度はそうしたことを防ぎ、日本の国民皆保険制度を支えるとても大切な制度です。

▽関連記事
診療報酬とは?仕組みや支払例、診療報酬改定について解説
▽参考記事
日本医師会「日本と諸外国の医療水準と医療費」

診療報酬改定はなぜ行われるのか

診療報酬は2年に1回の改定が繰り返されていますが、なぜそんなに頻繁に改定する必要があるのでしょうか。それは、その時々の社会情勢や経済状況に応じるためです。

例えば、公的医療保険でカバーされる医療行為は非課税取引です。そのため、医療機関は医療サービスを提供した対価を受け取る際に、患者さんから消費税を受け取ることはありません。しかし、医療機関が薬や医療機器を購入する際には当然、消費税を支払っています。医療機関は消費税を取れないにもかかわらず、消費税を支払わなければならないのです。

このギャップを埋めるために、消費税増税のタイミングで消費税分を上乗せした形で診療報酬の改定が行われることは少なくありません。最近では2019年10月1日に消費税が引き上げられましたが、それに合わせて診療報酬の一部が引き上げられています。

診療報酬改定は誰がどのようなスケジュールで行うのか

診療報酬の改定は、最終的には政府が決めますが、それまでに1年がかりで議論が行われます。「診療報酬の改定率が決まった」というニュースは目にしたことがあっても、誰がどのようにして、診療報酬の基本方針や改定率を決めているのかは知らないという方も多いかもしれません。ここで、診療報酬が決まる基本的なスケジュールを見ていきましょう。

まず、改定の前年の春から夏にかけて、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が議論を行った上で、診療報酬改定の方向性を示します。議論を行うメンバーは、保険料の支払い側が7人、診療側が7人、社会保障を専門とする学者や有識者などの公益委員が6人というメンバー構成です。診療側は現在、日本医師会、病院団体、日本歯科医師会、日本薬剤師会の各代表です。支払い側は、保険者を代表する団体などから選出されます。

秋以降、社会保障審議会が、中医協の答申を審議します。社会保障審議会とは、厚生労働省に設置されている審議会の一つで、診療報酬などの医療制度をはじめ年金制度や介護制度、児童福祉制度など広く社会保障に関するさまざまな課題に対して審議する場所です。社会保障審議会で、個別の診療報酬の点数設定や算定条件が議論されます。毎回12月をめどに診療報酬改定の基本方針が示されています。

そして、内閣が予算編成過程で診療報酬の改定率を決定。翌年の1月、厚生労働大臣が中医協に対し、内閣が決定した診療報酬の改定率や社会保障審議会において策定された基本方針に基づき、診療報酬の改定案の調査・審議を行うよう諮問します。中医協でさらに議論を深め、2月頃に最終的な診療報酬改定の内容を決定。3月には、厚生労働大臣が診療報酬改定の告示を発出し、4月1日から新たな診療報酬が適用されるという流れになっています。

令和4年度(2022年)の診療報酬改定の概要

2022年の診療報酬改定にあたって、厚生労働省が「令和4年度(2022年度)診療報酬改定の基本方針」を策定しています。それによると、2022年の診療報酬改定の基本方針の柱は以下の4つです。

  • ①新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築など医療を取り巻く課題への対応
  • ②健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
  • ③患者・国民に身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
  • ④社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

これらの基本方針をもとに、診療報酬の改定が行われています。

①についての具体例としては、「当面、継続的な対応が見込まれる新型コロナウイルス感染症への対応」「医療計画の見直しも念頭に新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築に向けた取組」などが示されました。

また②についての具体的な方向性の例は「医療機関内における労務管理や労働環境の改善のためのマネジメントシステムの実践に資する取組の推進」、「業務の効率化に資するICTの利活用の推進、その他長時間労働などの厳しい勤務環境の改善に向けての取組の評価」などが挙げられています。

③については、「患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価や医薬の安定供給の確保等」「医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応」などの具体例が挙げられています。

④については、「後発医薬品やバイオ後続品の使用促進」「費用対効果評価制度の活用」などが示されました。

また、診療報酬は、医科診療報酬、歯科診療報酬、調剤診療報酬に分かれており、それぞれ改定率が異なります。直近の改定である2022年度のそれぞれの改定率を見ていきましょう。医科診療報酬は+0.26%、歯科診療報酬は+0.29%、調剤診療報酬は+0.08%でした。それに加えて、「看護の処遇改善のための特例的な対応」で0.20%、「不妊治療の保険適⽤ための特例的な対応」で0.20%が加算されています。

診療報酬の改定は加算されるだけではありません。減算されることもあります。例えば、2022年度の診療報酬の改定では、「リフィル処⽅箋の導⼊・活⽤促進による効率化」で-0.10%、「⼩児の感染防⽌対策に係る加算措置(医科分)の期限到来」で-0.10%となりました。その結果、診療報酬の「本体」部分の2022年度の改定率は+0.43%となっています。また、診療報酬のうち「薬価」部分は1.37%引き下げられ、全体では-0.94%でした。

▽関連記事
2022年度 最新版 診療報酬改定の基本方針と改定率に関して

診療報酬改定の今後

1990年度に20兆円を突破した国民医療費は、1999年度には30兆円を突破しました。2013年には40兆円に達し、2021年度は約43兆円を記録しています。日本で人口が最も多い世代、いわゆる団塊の世代が後期高齢者に差し掛かることから、国民医療費は今後さらに伸び続けていく見通しです。増えた分の国民医療費を負担するのは、国や現役世代です。

しかし、増え続ける国民医療費を国や現役世代が負担するといっても、いつかは限界が来るでしょう。次回の診療報酬の改定のタイミングは2024年です。団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年を前にした最後の改定となります。加えて、同じタイミングで介護報酬も改定されます。医療報酬と介護報酬のダブル改定となる2024年は、今まで以上に大きな改定となることは想像に難くありません。すでに、2024年の診療報酬改定のための議論は開始されていますが、議論の成り行きを注意深く見ていきたいところです。

2024年の改定に向けて準備を

診療報酬は、日本の国民皆保険制度を支えるとても大切な制度です。診療報酬という制度があるからこそ、病院などの医療機関は不払いの心配がなく医療行為を提供できます。診療報酬の点数は、提供した医療サービスごとに細かく決められており、診療報酬は医療機関の運営費にあてられます。そのため、診療報酬がどのように改定されるかは、医療機関の経営の根幹にかかわると言っても良いほど重要なことです。次回、診療報酬が改定されるのは2024年。そのための議論はすでに始まっています。どのように改定されるかは今後、注意深く見ていく必要があるでしょう。

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