目次
クリニックの内装を検討する際の基礎
クリニックの内装は患者さんの印象を左右し、円滑なクリニック経営を継続するための重要なポイントとなります。一方で、クリニックを設計する際には医療法や建築基準法など遵守しなければならない法令もたくさんあり、違反すると開設が認められないケースもあるため注意しましょう。クリニックの内装を検討するときは、法令をしっかり把握していくことが第一の条件となります。
その上で、患者さんが気持ちよく通院できるような清潔感や明るさを備え、混み合わないスペースの確保、プライバシーに配慮した動線などを考えていくのが基本です。
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クリニックの内装で重要な法令
クリニックを開設するには、都道府県知事の許可が必要です。医療法や建築基準法を遵守したクリニックの構造、防火・防災体制、診察室など必要最低限の広さを満たしているかどうかも審査の対象となります。
具体的には、医療法では診療所と廊下は明確に分けることと定められており、広さは診察室が9.9㎡以上、待合室が3.3㎡以上であることが望ましいとされています。そのほか、1室で複数の診療科を担当することは好ましくないこと、診察室は医師1人につき1室が望ましいことなどさまざまな決まりがあるため、クリニック内装の計画を立てるときは専門知識のある業者に依頼するのがおすすめです。
また、クリニックの建物には建築基準法が適応されます。クリニックは一般建築物として扱われるため、20床以上の病院よりも規制が緩くなりますが、耐震構造、防火や防災設備などの基準を満たさなければなりません。
出典:診療所の構造設備基準等について(東京都荒川区)
(https://www.city.arakawa.tokyo.jp/a032/jigyousha/toroku/shinryoujokouzou.html)
診療科ごとの内装ポイント
クリニックの内装は患者さんの印象を左右し、気持ちよく通院できるクリニックか否かの判断材料の一つとなります。そのため、内装は診療科による患者層に合わせて工夫する必要があります。
①内科
内科は最も標榜数が多い診療科です。患者さんは小児から高齢者まで幅広く、重症度なども個々に異なります。内装を考えるときは、来院が予想される患者層に合わせて動線を検討しましょう。
来院患者数が多い場合は、診察室、処置室、検査室などの距離をできるだけ近くして無駄な動線を省き、患者さんの回転率を高める内装が好ましいとされています。一方で、検査時のプライバシー確保が必要となる場合には、隔離された空間の確保や遮音性などを重視することが求められます。
②耳鼻科
耳鼻科は花粉症の流行期など一年の中でも特定の時期に患者数が増える診療科です。効率よく診療や処置が行えるよう、スムーズな動線を考える必要があります。具体的には、処置台で診療から処置、処方までの流れを終えられる動線が理想です。
また、耳鼻科には感染症患者が来院する可能性があります。待合室とは別に隔離したスペースを確保しておくとよいでしょう。
③皮膚科
皮膚科は診察時に肌を見せることが多いため、診察時のプライバシー管理が必要です。一方で、保険診療が主体の皮膚科は患者数が多いため効率よく診療を終えていかなければなりません。そのためには、カーテンなどで仕切った空間を複数作るなどの工夫が求められます。
また、自由診療を行う皮膚科ではレーザー機器などの大型医療機器を複数そろえるケースも多くなります。動線の邪魔にならないスペースを確保しましょう。
④小児科
小児科の診察室や処置室には保護者が同席するケースが多いため、十分な空間を確保するのが望ましいでしょう。
また、点滴や注射をするスペースはできるだけ待合室から距離を置くと、他の患者さんに泣き声などが聞こえにくく、恐怖心を与えにくいと考えられます。待合室にはキッズスペースを設けるなど、小児に通院の苦痛を感じさせない雰囲気づくりも大切です。全体的に優しい色合いの壁紙や家具をそろえるのも一つの方法です。
さらに、小児がぶつかったり、つまずいたりする可能性がある物品は患者さんの動線に設置しないのもポイントです。
⑤整形外科
整形外科は患者数が多く、患者さんの年齢層は小児から高齢者までさまざまです。また、整形外科は自力での歩行が困難な患者さんも多く来院するため、車いすの利用者がいる可能性を考え、廊下などは広めのスペースを確保しましょう。
さらに、整形外科は診察室、検査室、リハビリ室など多くの動線が存在するため、それぞれの動線が効率よくスムーズに回転できるよう工夫が必要です。
⑥歯科
歯科クリニックでは、同時に複数の患者さんの診察や治療を行う必要があります。内装を検討するときは、ユニット間で効率よい動線が築けるようにしましょう。また、ユニットごとのプライバシーを確保するには複数の診察室が必要になるため、スタッフが各診察室を行き来できるよう患者さんが立ち入れない場所に通路を作っておくなどの工夫が求められます。
感染対策のために手洗い場を多く設けておくのも効率的な動線の設計に必要です。
⑦美容科
美容系クリニックは、完全予約制のケースが多いため同じ時間帯に受診する患者数は多くありません。しかし、プライバシーの管理には細心の注意が必要であり、患者同士が顔を合わせる時間を極力減らした動線の設計が求められます。
また、個室のパウダールームやロッカー室の完備なども需要が高く、スペースと予算が許す限り患者さんが気持ちよく通院できる空間をつくりましょう。
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クリニック内装の流れ
では、実際にクリニック内装はどのような流れで行われるのでしょうか。具体的なクリニック内装の流れを見てみましょう。
設計
クリニック内装には、第一にクリニック設計の知見がある業者の選定が必要です。過去の施工事例などを参考に、望むクリニックのテイストに合った業者を選びましょう。
業者を選定したら、次は実際に打ち合わせを重ねながら計画とデザインを決めていきます。計画段階では、予算や期間だけではなく予測される患者層、希望する動線やクリニック全体の雰囲気などを明確に伝えることが大切です。
こうして打ち合わせによる情報を元に業者が内装のデザインを計画します。一般的には複数のプランを立てて平面図、パース、立体図などを作成し、さらに打ち合わせを重ねて改善点などを抽出していきます。
納得できる内装の計画が練られたら業者と正式に契約して工事が開始されます。
工事
内装のプランが仕上がったら、設計図に沿って工事が行われます。工事は一般的な家屋と同じく、まずは設計図通りに配線や配管を作る設備工事が執り行われます。
設備工事が完了すると壁や天井などを整える造作工事と仕上げ工事が行われ、クリニック内装が完成します。また、この段階では、壁紙や照明などクリニックの雰囲気を左右する物品の選定が必要です。計画段階で全ての物品をあらかじめ決めておくケースもありますが、内装工事開始まで猶予がある場合は、壁紙やカーテンなどはサンプルを取り寄せて好みのものを選び、照明はショールームで明るさや雰囲気などをチェックするのがおすすめです。
引き渡し
クリニック内装が完成したら、いよいよクリニックの引き渡しです。引き渡しの前には完成検査を受けて、設計図との違いがないか厳密にチェックされます。
引き渡しのときには、完成したクリニックの細かいところまでしっかりチェックし、気になる箇所がないか確認しましょう。壁紙の歪みなど少しでも気になる点があれば、引き渡しが完了する前に業者に伝えてください。
残金がある場合は残金を清算後に引き渡しとなります。内装業者の規定によりますが、一般的には引き渡し後も数年ごとの定期点検があるため、どのタイミングで行われるのか確認しておくとよいでしょう。クリニック内装業者を選ぶときは、十分なアフターケアの体制が整っているか否かも重要なポイントとなります。
クリニック内装に関する注意点
業者にクリニック内装を依頼するときには、以下のような点に注意が必要です。方法を誤ると医療機関としての開設許可が下りなかったり、患者さんの印象を悪化させて経営に影響を与えたりすることがあります。
法律にのっとっているか確認
クリニック内装には、上述したように医療法や建築基準法など守らなければならない決まりがたくさんあります。クリニック内装を検討するときは、法規制にのっとって計画されているか必ず確認しましょう。一般的なクリニックは一般建築物に分類されるため、厳しい規制はありませんが、診察室などの広さ、防火・防災設備などには一定の基準があります。
法令に違反したクリニック内装にすると都道府県知事からの開設許可が下りない場合がありますので注意が必要です。
見込まれる患者層に合った配慮
クリニック内装の計画を練るときには、見込まれる患者層の年齢、重症度といった属性に合った設備や動線設計をする必要があります。患者層や診療内容によって求められるプライバシー管理や動線設計が異なりますので、よくシミュレーションをして計画を立てていくことが大切です。
また、診療科によっては待合室などでのアレルギー対策が必要になることがあります。患者さんのニーズに合った設備を取り入れましょう。
コンセントや水道の位置
コンセントや水道の位置は動線に影響を与える大きな要因です。特に電源が必要な医療機器を多く使用するクリニック、処置ごとの手洗いが必要なクリニックなどは動線を考えた上でコンセントや水道の位置を決めましょう。また、コンセントや水道は数が不足しても後から追加するのは困難です。これらの設備が不足しないように計画段階で必要な個数を吟味しておきましょう。
クリニックの内装工事に必要な費用
クリニックの内装工事にかかる費用はクリニックの規模や導入した設備などによって大きく異なりますが、一般的には以下の水準となります。
坪単価
クリニックの内装工事の坪単価はクリニックの属性によっても異なりますが、一般的には40万円前後※とされています。もちろん、CTやMRIなど高額な医療設備が必要な場合や壁紙や調度品などにこだわった場合などは坪単価も高くなります。
坪単価は、設備や広さによって大きく変わるため、設計の計画段階で明確な予算を提示しておきましょう。いろいろな部分にこだわると坪単価が跳ね上がるケースも少なくありません。打ち合わせを重ねながら予算に合った坪単価の内装計画を仕上げてください。
設計費
クリニック内装の設計費用は一般的に、工事総額の10~20%程度※のケースが多いでしょう。または、工事面積当たりの坪単価5~8万円程度※と工事総額にかかわらず面積によって価格を決定する場合もあります。
設計費も大きな出費になるため、契約予定の業者がどのような料金体系なのか事前に確認しておきましょう。特に工事面積が広い場合は、面積によって価格が決定する料金体系では費用が高くなる可能性があります。
工事費
クリニック内装の工事費用はクリニックの広さ、設備によって大きく異なります。高額な医療機器がない一般的な25坪のクリニックの工事費は総額で1,000~1,200万円ほど※になるケースが多いでしょう。
ただし、レントゲン室などのような医療設備が必要になると価格はさらに高くなります。計画段階では医療設備も含めた工事費の総額を算出して予算に収まるか確認することが必要です。予算を超えた場合は必要に応じて計画している設備の一部を取り止めたり、中古物品を使用したりする工夫が求められます。
※ウィーメックス株式会社が独自で調査した結果であり、実際にかかる費用は工事業者へご確認ください。
クリニックの内装費用を抑えるには
クリニックの内装工事にはさまざまな費用が発生するため、高額になる傾向があります。少しでも内装費用を抑えるにはどのようことに注意したらよいのか見てみましょう。
複数の業者を比較する
クリニック内装費用を安く抑える一番のポイントは、複数の業者から見積もりを出してもらうことです。業者によってかかる費用は大きく異なるため相見積もりを取って、費用の比較をしましょう。
もちろん費用が低ければよいというわけではありませんが、複数の業者を比較することで適正価格での工事を請け負う業者を見つけられる可能性は高まるでしょう。
発注や支払い方法にも注意する
クリニック内装の発注方法には、設計から工事まで一つの業者に依頼するケースとデザインなどの設計をする業者と実際に工事を行う業者を分けるケースがあります。一般的には設計から工事まで同じ業者に依頼した方が費用は抑えられるでしょう。
また、支払い方法も業者によっては一括払い、分割払いと選ぶことができます。一括払いは値引きが適応となる場合があるため、支払い方法と割引率などもチェックしましょう。
内装業者を選ぶ際のポイント
最後に、クリニック内装の業者を選ぶ際の注意点をご紹介します。理想のクリニック内装を叶えるには納得できる業者を選ぶことが大切です。
内装実績を確認する
クリニック内装業者によってデザインのテイストなどが異なります。業者を選定するときは、どのようなテイストのデザインが可能なのか過去の内装実績を確認しましょう。過去に施工した実績がないデザイン性の内装でも依頼すれば叶うケースもありますが、好みの内装を多く手掛けている業者は安心感があると言えます。
また、内装実績を確認する場合には計画しているクリニックの規模と似た内装工事をしているかもチェックしましょう。
打ち合わせが丁寧
クリニック内装をするためには、事前に打ち合わせを重ねて設計図などを作成してもらう必要があります。打ち合わせは回数が多くなるケースもありますが、納得いくまで打ち合わせの時間を確保できる業者が安心できるでしょう。また、作成した設計図などに打ち合わせで希望した内容が正しく盛り込まれていることもよい業者のサインです。
打ち合わせが丁寧で希望を理解し、実際の計画に活かしている業者を選びましょう。
内装費用が適切か
クリニック内装にかかる費用はクリニックの規模や設備だけでなく、契約する業者によっても大きく異なる場合があります。上述したように内装業者を選ぶときは相見積もりを取って適正な価格か確認しましょう。デザインなどが気に入ったとしても価格が相場よりも高い場合は要注意です。
ただし、美容系クリニックなどのように高いデザイン性を求めた内装では価格の相場がわかりにくいケースもありますので、予算の範囲に収まる業者を選ぶとよいでしょう。
電子カルテのご相談はメディコムに
これからクリニックの開設を予定されている方は電子カルテの選定も必要となります。電子カルテならクラウドの利便性と診療の質向上にこだわったシステムを搭載するメディコムの電子カルテがおすすめです。メディコムの電子カルテは医事一体型電子カルテシステムで、レセプト作業にも活躍します。
また、導入後のサポート体制も充実しているため、万が一のトラブルにも安心して診療ができます。無料オンラインデモでお試しができるので、実際に操作して使いやすさを実感してみてください。
ニーズに合った業者選びを
クリニック内装はクリニックの印象を左右する大切な要素です。クリニック内装を検討している方は複数の内装業者と打ち合わせをして相見積もりを取り、その中から最もご自身のニーズに合った業者を選んでください。
また、クリニック内装にはさまざまな法規制があるため、業者を選ぶときは費用や施工期間だけでなくクリニック内装の経験がある業者か否かも施工事例などでチェックしましょう。
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