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クリニック開業 医師 事務長 2025.04.10 公開

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初診患者を集めるには地域住民へのアピールが大事

診療所経営のための最新の統計データに基いた「数字」と「経営戦略」を掲載。昨今、診療所を取り巻く環境は大きく変化しています。実例も多数掲載しています。今のような激動の時代に健全な経営を考えるための一助にぜひ、ご覧ください。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討 #診療所経営の教科書

診療所経営の教科書 第3版

目次

初診患者を集めなければ何も始まらない

初診患者の獲得に成功したあるクリニックの事例を、具体的にご紹介したいと思います。

このクリニックは、市場調査の結果、1日平均患者数が20〜30人と決して良くありませんでした。患者人口は多いのですが、競合も多かったのです。

ただ、この場所で開業を決めた以上、とにかく集患をしなくてはいけません。初診患者を集めることが第一歩であることは、誰でもわかります。でも、どうしたら初診患者を集められるのかは、当初は整理ができていませんでした。

そこで、実にいろいろな集患対策を試みました。思い出すだけでも下記の通りです。

①周辺の商店街・老人会への告知
②周辺企業への告知
③駅前でのチラシ配り
④定期的な住民向けセミナーの開催
⑤地域フリーペーパーへの寄稿
⑥メールマガジンの配信
⑦園児健診・産業医等の積極的な受け入れ
⑧スギ花粉の減感作療法の導入
⑨すべての患者さんへのカルテ開示(紙カルテの手渡し)
⑩薬の宅配サービス

商店街・老人会・企業への告知

これは、市場における“認知”を促すための大事なマーケティング活動です。

まず、院長先生に協力を仰ぎ、地元の商店街の集まりや老人会の集まりがあると聞いたら、開業前から顔を出して、挨拶をしてもらいました。

企業への営業は、事務方とスタッフの仕事です。当時はビルのセキュリティも今ほどうるさくなかったので、ビルというビルを上から下までまわり、企業の総務や庶務などの部署を訪ね歩き、クリニックのチラシを置いてきました。

これらはいずれも効果がありました。商店街や老人会のつながりで、地元の人がちらほら来院するようになりました。また、いくつかの企業からインフルエンザの集団予防接種を頼まれたり、企業の保健室から患者さんが紹介されてきました。

チラシ配りには“副作用”も

同じく“認知”を促すためのチラシ配りは、一定の効果はあったものの“副作用”も大きく、今では積極的に行っていません。開院当初はスタッフも時間があったため、チラシを片手に、駅前などで配布しました。クリニックのチラシが珍しかったためか、意外と手にとってもらえることも多かったです。

ただ、このやり方はクリニックに興味が無い人にもチラシを渡したので、かえって目立ちすぎて逆効果になってしまいました。派手に動きすぎたと、大いに反省したのを覚えています。

医療情報の発信は効果的なPRになる

地域住民向けの健康セミナーの開催や、フリーペーパーへの寄稿は、長続きのする良いアピール方法です。

セミナーの参加者は、毎回大勢いるわけではありません。ただ、インフルエンザや花粉症など、季節に合わせたセミナーを定期的に開催することで、その開催案内そのものが地域への“認知”の浸透に役立ちました。

同様のPR効果は、フリーペーパーへの寄稿でも大きかったように思います。

時節柄の病気について、200〜300字程度のコラムをドクターに執筆してもらいました。その記事の切り抜きを持参して来院される方もおり、“試行”を誘導する効果がありました。医療の情報発信の大事さを実感した次第です。

メールマガジンは、メールアドレスをお預かりする仕組み上、一度来院された方への配信に限定されます。そのため当初は“継続”を目的として配信したのですが、その読者が口コミ源となり、初診患者の集患にも役立ちました。

あるとき、数人の子供が立て続けに、似たような皮膚炎で来院したことがありました。ドクターが「チャドクガの毛虫に刺された」と診断し、その見分け方や注意点、治療方針をメルマガで流したところ、ある幼稚園の子供達が大挙して来院したのです。幼稚園の庭でチャドクガが大発生し、お母さんたちの間で治療法と医療機関名が口コミで伝わったということでした。

最近では、自院のホームページにおける動画配信やSNSの積極活用、オウンドメディアによる医療情報の発信が大きなPR効果を発揮しています。セミナーや勉強会、フリーペーパーなどはどうしても参加人数に限りがありますし、時間的な効果も限定的となりがちです。その点、動画やオウンドメディアによる発信は、検索にヒットしている限りは、ずっと広報的な効果が見込めます。またSNSの中でもLINEやTwitterでの情報発信は、メールアドレスを取得するよりも心理的ハードルが低く、気軽に患者さんに直接アピールできる手段となっています。今後はこうした情報発信の手段を積極的に取り入れていく必要があるでしょう。

園児健診・産業医の受け入れ、その他の対策

園児健診や産業医は、時間換算すると大した報酬にはなりませんが、開業当初のまだ忙しくない時期のクリニックにとっては、営業的に重要な役割を果たします。園児健診でも産業医でも、やはり病気は見つかるものです。患者さんにかかりつけ医がいない場合には、自院に誘導することも可能です。

スギ花粉の減感作療法は、ドクターのアイデアから始まった取り組みです。診療の特徴を出せないかと知恵を絞り、新しい治療方法を取り入れました。当時はまだ自由診療の範疇であり、エビデンスに基づいて慎重に進める必要はありましたが、一部の患者さんの評判を呼び、口コミで患者さんが増えていきました。

カルテ開示は集患効果が絶大

患者さんへのカルテの開示は、もともとは「患者さんに治療の内容を理解してもらいたい」という医療上の目的から始めたものでした。しかし、初診患者さんを集めるのに、最も効果があったのがこのサービスなのです。当時はカルテの開示自体が目新しい時期でしたが、院長の英断により、当初からすべての患者さんにカルテを開示し、かつ毎回コピーを受付で手渡ししていました。

これには患者さんも相当に驚かれたようです。「あのクリニックではカルテをもらえる」「カルテって、こんなことが書いてある」「読めば意外とわかる!」というような噂が広まりました。これがクリニックへの信頼感・安心感につながり、何かあったらあのクリニックにかかろうという、“試行”を促すきっかけとなりました。また、一旦カルテ開示に慣れてしまった患者さんは、他のクリニックに鞍替えしないので、強力な“継続” の要因となりました。

薬の宅配サービス

薬の宅配は、患者さんには好評だったものの、コストと手間のために断念したサービスです。このクリニックは院内薬局だったので、時間がかかる調剤の場合には、あとで薬剤師がご自宅に宅配するというサービスを当初は提供していました。開業直後の不慣れな時期で、調剤に時間がかかる分を、仕組みで乗り切ろうとした側面もあります。薬の待ち時間が無くて良いという評価をいただいていましたが、患者さんが増えてくると、薬剤師が一時とはいえ院内を離れることは難しくなりました。

これらすべての集患対策が、意味があり効率的であったかと言われれば、NOだと思います。ただし、いろいろな取り組みをしたことの成果は総合的にはあり、開業後1ヵ月ほどで1日60人くらいが来院するようになり、今ではピーク時には200人を超えています。

重要な視点はただ1つで、「とにかく初診患者さんを集めないことには始まらない」ということです。まだ知られていない地域住民の方に、いろいろなアピールを行ったことが、成果につながったと考えています。

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