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2025年度(令和7年度)の薬価改定の概況
薬価改定とは、医療用医薬品の公定価格である薬価を見直す取り組みです。改定は2年に1回の頻度で行われ、4月の診療報酬改定のタイミングで実施されます。
2021年度以降は、診療報酬改定のない年にも薬価改定が行われるようになりました。このような改定は「中間年改定」と呼ばれています。
直近の中間年改定は2023年度であり、2025年度の薬価改定(中間年改定)は2025年4月1日に実施されました。
厚生労働省の方針として、これまでの慣例に固執することなく、状況変化に応じて改定を行うことが示されています。そのため、従来の中間年改定では変更が見られなかった内容も含まれました。主な改定ポイントは、以下のとおりです。
2025年度 薬価改定のポイント | 概要 |
---|---|
薬価改定の対象範囲 | 新薬創出加算対象品目・新薬創出加算対象外の新薬・長期収載品・後発医薬品・その他の5つに分けて設定する。 |
改定を受ける品目の割合 | 改定を受ける品目の割合は、9,320品目のうち53%になる。 |
新しい加算・控除 | 既収載品の改定時加算や新薬創出等加算の控除などが実施される。薬剤費の削減額は2,466億円であり、国費の抑制効果は648億円。 |
薬局経営への薬価改定の影響
薬価改定では薬価が引き下げられるため、薬局側の収益(薬価差益)は下がります。一方で、薬局側の仕入れ値が下がれば、一定の利益を確保することが可能です。
そのため、安定供給が確かなメーカーや品目を見極め、地域の薬局で連携して薬の卸業者と価格交渉をしていきましょう。
また、改定前から各薬局で医薬品の在庫調整が行われますが、在庫切れが発生すると、必要な薬が確保できず経営に支障が出る可能性があるため、計画的に補充をしておくことも重要です。
既収載品の改定時加算や新薬創出等加算の控除の仕組みなども踏まえ、薬局における収益確保のための対策を徹底していきましょう。
2025年度に押さえるべきポイントは?
2025年度に押さえるべきポイントは、以下のとおりです。
薬価引き下げの対象範囲と算定ルール
薬価引き下げの対象範囲と算定ルールは、以下のとおりです。
医薬品の安定供給やイノベーション推進の観点から、新薬創出加算対象品目と後発医薬品は「平均乖離率の1.0倍超え」になっています。
新薬創出加算対象外の新薬は「平均乖離率の0.75倍超」であり、過去2回の改定時よりも緩和しています。
一方で、長期収載品は「平均乖離率の0.5倍超」となり、対象を広げました。
カテゴリ | 2025年度 | 2023年度 | 2021年度 | |
---|---|---|---|---|
新薬 | 新薬創出加算の対象 | 平均乖離率の1.0倍超 乖離率5.2%超 |
平均乖離率の0.625倍超 乖離率4.375%超 |
平均乖離率の0.625倍超 乖離率5%超 |
新薬創出加算の対象外 | 平均乖離率の0.75倍超 乖離率3.9%超 |
|||
長期収載品 | 平均乖離率の0.5倍超 乖離率2.6%超 |
|||
後発医薬品 | 平均乖離率の1.0倍超 乖離率5.2%超 |
|||
その他 | 平均乖離率の1.0倍超 乖離率5.2%超 |
|||
平均乖離率 | 5.2% | 7.0% | 8.0% |
算出式は以下のとおりです。
新薬価 =【医療機関・薬局への販売価格の加重平均値(税抜の市場実勢価格)】×【1+消費税率(地方消費税分含む)】+調整幅
※改定前の薬価(税込み)を上限とする。
※調整幅は、改定前の薬価の2/100に相当する額。
不採算品再算定の対象(薬価引き上げ)
安定供給問題や急激な原材料費の高騰に対応するため、医療上の必要性が特に高い品目を対象として不採算品再算定が適用されます。
具体的な対象品目は次のいずれかを満たす品目です。
- 基礎的医薬品とされたものと組成及び剤形区分が同一である品目
- 安定確保医薬品のカテゴリA及びBに位置付けられている品目
- 厚生労働大臣が増産要請※を行った品目
※2023年10月18日、同年11月7日感染症対症療法薬等の安定供給に向けた大臣要請を指す
基礎的医薬品の要件は以下のとおりです。
- 医療上の位置付けが確立し、広く臨床現場で使用されていることが明らかである
- 15年以上薬価基準に収載されており、かつ成分・銘柄ごとのいずれの乖離率が全品目の平均乖離率以下である
- 過去の不採算品再算定品目、病原生物に対する医薬品、医療用麻薬、生薬、軟膏基剤、歯科用局所麻酔剤のいずれかに該当する
安定確保医薬品とは、国民の生命を守ることを目的とし、安定確保について特に配慮が必要とされる医薬品を指します。
厚生労働大臣が増産要請を行った品目は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの拡大に伴い需要が切迫している鎮咳薬や去痰薬などです。
最低薬価の引き上げ
賃金上昇や物価高騰などを踏まえ、最低薬価が3%程度引き上げられました。対象となる品目は以下のとおりです。
対象カテゴリ | 対象品目 |
---|---|
日本薬局方収載品 |
錠剤 1錠 カプセル剤 1カプセル 丸剤 1個 散剤(細粒剤を含む)1g 顆粒剤 1g 末剤 1g 注射剤 100mL未満1管又は1瓶 100mL以上500mL未満1管又は1瓶 500mL 以上1管又は1瓶 坐剤 1個 点眼剤 5mL1瓶、1mL 内用液剤、シロップ剤(小児への適応があるものを除く)1日薬価、1mL 外用液剤 (外皮用殺菌消毒剤に限る)10mL 貼付剤 10g、10cm×14cm以上1枚、その他1枚 |
その他の医薬品 |
錠剤 1錠 カプセル剤 1カプセル 丸剤 1個 散剤(細粒剤を含む)1g 顆粒剤 1g 末剤 1g 注射剤 100mL未満1管又は1瓶 100mL以上500mL未満1管又は1瓶 500mL 以上1管又は1瓶 坐剤 1個 点眼剤 5mL1瓶、1mL 内用液剤、シロップ剤(小児への適応があるものを除く)1日薬価、1mL 外用液剤(外皮用殺菌消毒剤に限る)10mL 貼付剤 10g、10cm×14cm以上1枚、その他1枚 |
既収載品の改定時加算など
2025年度の薬価改定では、中間年改定では初の対応となる「既収載品の改定時加算」や「新薬創出等加算の累積額の控除」が適用されました。
既収載品の薬価改定時の加算の対象品目は、2023年11月から2024年10月までの間に該当することとなった品目に限ります。
また、創薬イノベーションの推進や国民負担の軽減といった考え方を踏まえ、加算及び累積額の控除(新薬創出等加算対象品目等を比較薬にして算定された品目の取扱いも含む)の両方に適用される予定です。
まとめ
2025年度の薬価改定では、薬価引き下げの対象範囲がカテゴリごとに分類されました。また、最低薬価の引き上げや既収載品の改定時加算、累積額の控除なども実施されています。
薬の卸業者との価格交渉や、医薬品の在庫調整などを徹底していきましょう。一方で、日々の在庫管理や受発注に手間を要している方も多いのではないでしょうか。そのような方には当社のクラウドサービス、Wemex 薬局経営支援がおすすめです。薬局のバックオフィス業務を効率化したい方は、ぜひお気軽にお問合せください。
また、2025年度は調剤報酬についても一部改定がなされています。
当社ではこのような最新情報を踏まえ、安定した経営を図るための薬局運営や、医療DXを活用し、地域から選ばれる薬局の経営事例などを紹介するセミナーを4月24日(木)に実施予定です。ご興味のある方はご参加ください。
出典:中央社会保険医療協議会 薬価専門部会(第234回) 議事次第(厚生労働省)
中央社会保険医療協議会 令和7年度薬価改定について(参考資料)(厚生労働省)
厚生労働省 Press Release(令和7年3月7日)の内容をもとに、ウィーメックス株式会社で独自に解釈、編集したものです。
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