「定時退勤も、病棟看護の質向上も叶えるDXを」中小規模病院にみる電子カルテ運用による業務改善・改革の実践
医療法人社団 秋桜 丸川病院は、2020年1月に一般・療養型中小規模病院向けWeb型電子カルテシステム「Medicom-CK」を導入しました(現在はMedicom-CKⅡを運用)。残業が常態化し、定時退勤ができない職場環境を改革することを目標に、業務改善・効率化の実現のために、電子カルテを活用しようという狙いでした。課題解決や目標達成のために導入検討をどのように進め、何を基準に電子カルテを選定していったのか、導入後にどのような効果が生まれ、その成功要因は何であったのかを伺いました。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
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一般・療養型中小規模病院向け電子カルテ「CKシリーズ」導入事例
医療機関様概要

医療法人社団 秋桜 丸川病院
住所:富山県下新川郡入善町青島396-1
開業年月:1979年9月
理事長:丸川 忍 氏
院長:丸川 浩平 氏
診療科目:脳神経外科・神経内科・整形外科・内科・消化器内科・リハビリテーション科
病床数:38床(一般病床)
従業員数:109人
Webサイト:http://www.marukawa-hp.com/
定時退勤と病棟看護の質向上が狙い

丸川浩平先生が院長を継承した当時、職員の長時間労働が常態化し、残業は当たり前という考えが横行していたといいます。一方、子育て中の看護師も多く、時短勤務者ながら就業時間内に退勤できないこともありました。そうした課題を解決し、全職員が定時退勤できるよう、業務の改善活動を推進してきました。電子カルテ導入を検討する際にも、(1)定時に退勤すること、(2)看護の質を向上させること、(3)診療報酬上の記載をしっかりとすること、という3つの目的を掲げ、職員への周知を図りました。
同院ではMedicom-CKを導入する以前に、メディコムの病院用医事一体型電子カルテシステムを運用し、外来診療の電子カルテ化と医事業務をシステム化していましたが、病棟業務は紙伝票を中心としたアナログ運用で、看護業務自体が煩雑化していました。「看護師の退勤時間は19~20時、看護主任クラスに至っては21時を超えることもありました」(丸川院長)と当時を振り返ります。病棟看護業務を効率化し、定時退勤を実現することが、電子カルテ導入の第一の狙いでした。
第二の狙いは看護の質向上に向け、病棟も含め病院全体の電子カルテ運用を実現すること。当時の病棟で行っていたアナログ運用では情報が散在し、看護師間の申し送り情報だけでは継続看護実施が十分にできているとは言えない状態でした。病棟における情報共有の課題を、電子カルテ(看護業務支援機能)を活用し解決することで、看護の質を向上させるという狙いがあったといいます。
ただ、病棟を含めた病院全体の電子カルテ化に対して、懸念もあったようです。その1つは、丸川院長が勤務医時代に利用していた大規模病院向け電子カルテに対するイメージによるものでした。「機能などが重装備であるためか、レスポンスに難点があったことに加え、電子カルテに入力した情報活用による多職種連携も十分できていなかったと感じていました」(丸川院長)と振り返ります。
工夫してきた看護記録を実現可能な電子カルテと評価
そこで丸川院長は、信頼を寄せる販売代理店に自身の考えや、どのように業務を改善したいか相談したところ、担当者から提案されたのがMedicom-CKでした。
最初のデモンストレーションで見たMedicom-CKの印象は、「以前の病院で経験したレスポンスの問題もなく、非常に軽快に動作することでした」(丸川院長)と話します。また、看護計画機能は「病棟電子カルテ運用前に、当院で工夫して実践していた看護計画運用が、電子カルテ導入後も同じように実現できそうだというイメージを持ち、立案された計画、それに対する評価が見やすく整理されているという印象を受けました。それは、病棟看護師も同じ意見でした」(丸川院長)と話します。
Medicom-CKの看護計画機能は、問題点を指定すると予め設定された看護目標と介入項目を利用して簡易的に計画立案ができ、関連した看護記録も管理できます。これらをさらに使い易くできるよう、電子カルテ稼働後も自分たちでカスタマイズできることも評価のポイントでした。
電子カルテ稼働当初は、看護計画機能活用により看護師間の情報共有の効率化を図りましたが、現在は看護師のみならず、当機能を多職種連携に活用しており、セラピスト、栄養士、地域連携室などに至るまで多職種で利用し情報共有を行っています。「紙カルテと電子カルテの大きな違いは、情報集約と共有が容易にできることにあります。紙カルテは1冊を複数のメンバーで相互に利用するため、書きたいときに書けない、見たいときに見られない。見たい情報が何処に書いてあるのかわからないという状態でした」(丸川院長)と言い、「システムに自分達を合せるばかりではなく、自分達が利用しやすいカルテを実際に利用しながら工夫して作り上げていく事も大切です」(丸川院長)と話します。こうした取り組みの結果、誰もが利用し易い電子カルテを実現でき、派生効果として不安視されていたパソコンが得意でない職員も、何ら問題なく電子カルテを利用されています。
その上で、電子カルテ提案の際に望むことは、「電子カルテを使う前に、使った後の事をイメージすることは難しいため、電子カルテ稼働をゴールとはせず、さらに使いやすく工夫できる余地がユーザー側にあるのか、といった情報提供があると有り難いです」(丸川院長)と話します。
情報取得・共有が確立されチーム医療が向上
丸川病院は、電子カルテシステムと同時に医事会計システムを更新し、既設の医用画像管理システム(PACS)やリハビリテーション支援システム、調剤部門システムなど各種部門システムと連携した病院情報システムを構築。運用開始から4年半が経過しましたが、病院全体でどのような運用成果を上げ、業務改革が進展したのか――。

「今は、看護師をはじめ各部署の職員はほぼ定時内に業務を終了できるようになりました。1日の業務が終了していれば、定時前でも退勤していいルールにしています。医事部門も月末・月初めは遅い時間まで残業するのが常でしたが、その残業時間もほぼ削減されたのは大きな成果といえます」(丸川院長)と、第一の目的は達成できたといいます。
電子カルテ化により院内情報は一元的に集約されますが、記録された情報を瞬時に取得・参照できなければ、情報共有の上でも意味がないと指摘する丸川院長。「情報をどこに記録し、どう記述するかの運用ルールを各部門で決めています。例えば、病棟看護師が持つ情報をリハビリ部門が参照する際に、必要とする情報がどこに記録されているのがベストか連携部門どうしで相談しながらルール化していることで、情報取得・共有が円滑にできチーム医療の向上に寄与していると思います」(丸川院長)。各職員が情報記録・取得に要する時間効率が上がったことにより、患者と向き合う時間が確保され、直接業務に集中できるようになったとしています。
また、Web技術によりブラウザで利用するMedicom-CKを採用した副次的成果として、電子カルテ端末を増設してもフリーライセンスであることからコスト増にならないことも評価しています。病棟看護師が病室ラウンド時などに利用するタブレット端末も電子カルテ稼働後、十数台に増やし、新規事業として取り組んでいる訪問診療時に居宅内での電子カルテ利用も実現できました。中小規模病院にとって、コストを抑えられること、あるいは限定的な運用から院内全体へのスケールアップにも最適だとしています。
導入成果は運用による付加価値創造で決まる
電子カルテ活用による業務改善・改革を実践してきた経験を踏まえ丸川院長は、電子カルテ導入を検討する中小規模病院に対し、電子カルテを運用していく上で次のような点が重要だと指摘します。
「各部門の中心となる職員が、現在行っている業務が果たして一番効率的なのか、ベストな方法なのかと常に考え、検証しながら日々の業務にあたることが重要だと思います。提供される機能に不都合を感じながら使い続ける、既定の機能だから仕方ないという認識で使用しているのでは、電子カルテ運用のメリットを最大化することはできないでしょう」(丸川院長)。電子カルテはあくまでツールであり、活用によって業務を効率化するという意識の必要性を強調しています。
また、部門業務の最適化のための活用でなく、情報共有をベースとしたチーム医療を実践できる全体最適を実現できる運用が重要だともいいます。「そのために各部門スタッフにも、他部門との連携を意識した運用方法を浸透させていくことが大切です」(丸川院長)。
一方、本部長の中島和彦氏は、電子カルテの導入・運用は診断機器の運用のように医業収入に結びつかないため経営的には生産性はないと指摘。「院内の業務改善や労働環境の整備といった面にどれだけ電子カルテを活用していけるかがポイントです。運用による付加価値をどれだけ創造できるかが重要になります」(中島氏)と提言しています。