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薬局経営 薬剤師 薬局経営者 2023.01.05 公開

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リフィル処方箋とは?薬局経営への影響や今後の課題も解説

アメリカでは70年以上もの歴史があり、その他の国でも取り入れられているリフィル処方箋制度。日本でも、2022年4月の診療報酬改定に合わせて導入されました。この制度は、医療機関や患者さまだけでなく、薬局の経営者や薬剤師にも関係があります。そのため、その影響について気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、制度が導入された背景やメリット・デメリットをはじめ、現状と課題について詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#業務効率化 #医療政策

目次

リフィル処方箋とは?

リフィル処方箋とは、症状が安定している患者さまに対して医師が許可した場合、医療機関を受診しなくても上限3回までは同じ処方箋を使って薬を購入できる制度です。

これまでは、定期薬が変わらず同じ薬を処方してもらう場合でも、必ず医療機関の受診が必要でした。そのため、患者さまには通院の負担が生じ、医療機関には窓口や対応の負担が発生していました。

双方の負担軽減と医療費の抑制を目的として、新たに制定されたのがリフィル処方箋制度です。日本では、2022年4月の診療報酬改定で導入されました。

アメリカで最初に導入され、現在ではカナダやイギリスなど欧米でも取り入れられています。アメリカでは、初診の患者さまにリフィル処方箋が出されるケースもあるほど浸透している制度です。

リフィル処方箋の仕組み・流れ

リフィル処方箋の場合、1回目、2回目、3回目で患者さまへの薬の処方がどのように変化するのかを説明します。
※2022年9月時点の情報をもとに記載しています。

まず1回目は、医療機関を受診して発行された処方箋を基に薬が処方されます。2回目と3回目は医療機関を通さず、薬局で薬を処方することになります。

リフィル処方箋における1回あたりの投薬期間に決まりはなく、医師が病状をふまえて定めることになっています。

有効期限は、1回目は従来の処方箋と同じく、発行されてから4日以内です。
2回目と3回目については、薬を飲み終わる日を次回の調剤予定日とし、その前後7日間を有効期限とする形になります。

対象となるのは厚生労働大臣が定める医薬品以外で、投薬期間が決められている以下の医薬品は対象外です。

・麻薬
・向精神薬
・湿布薬
・薬価収載1年以内の新薬

薬局では、処方箋に新しく追加された「リフィル可」の項目のチェックの有無でリフィル処方箋かどうかを判断します。

薬局での対応や2回目以降の詳細な流れは、以下の資料をご覧ください。

▼参考サイトはコチラ
厚生労働省『保険医療機関及び保険医療養担当規則』
日本保険薬局協会『リフィル処方薬の手引き』

分割調剤との違い

リフィル処方箋と混合しやすいのが、2016年の診療報酬改定で新たに制定された分割調剤です。次では、これらの違いを解説します。

分割調剤では、長期間保管が困難なもの、後発医薬品をはじめて処方された場合や医師の指示がある場合などに、3回に分けて調剤が行われます。

たとえば90日分の処方の場合は、30日毎に調剤が行われます。

リフィル処方は、1回目の用量が終わる7日前後に次の調剤が3回までできる仕組みです。

薬局は、分割処方で調剤すると医師へフィードバックする必要がありますが、リフィル処方ではフィードバックの必要に応じて行われます。

分割調剤とリフィル処方における調剤は、一見似ているように思えますが、異なるので把握しておきましょう。

リフィル処方箋のメリット・デメリット

患者さまと医療機関の負担軽減のために新たに始まったリフィル処方箋制度。では、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット

リフィル処方箋のメリットは、患者さま・医療機関・薬局それぞれにあります。

●患者さまのメリット
通院にかかる時間や金銭面の負担を軽減できる点です。

医療機関の受診間隔が広がる(頻度が下がる)ため、病院へ行く時間の確保や待ち時間の節約、金銭面の負担軽減につながります。

●医療機関でのメリット
リフィル処方箋によって、窓口対応や医師の診療に関する負担の軽減、それに伴うほかの患者さまに割ける診療時間の確保です。
最も重要な診療にかける時間を確保できるうえ、残業なども削減できる可能性があります。

●薬局でのメリット
かかりつけの薬局として稼働しやすくなることです。
リフィル処方箋で調剤を行う場合、これまで以上に患者さまへの継続的な薬学的管理指導が求められるようになります。

残薬状況や健康状態の確認など、患者さまとのコミュニケーションが増えることで、これまで以上にその方の健康に寄り添った指導ができるでしょう。

デメリット

メリットがある一方、医療機関と薬局にはデメリットもあります。

●医療機関でのデメリット
受診回数が減ることによって、収入の減少が考えられます。また、病状の変化に気づくのが遅れる可能性もあるでしょう。

●薬局でのデメリット
まず、業務負担が増えることが考えられます。
患者さまが調剤を受ける次回の予定確認や、予定される時期に患者さまが来局しない場合、電話などで確認する必要があるためです。また、患者さまが次回の調剤をほかの保険薬局で依頼することを希望した場合、調剤の状況を含む必要な情報を本人に提供する手間もかかります。

よって、継続的な薬学的管理指導のため、患者さまには同一の保険薬局で調剤を受けるように説明することが必要です。

そのほか、医師に代わって薬剤師が調剤時に患者さまの体調などを確認して受診の必要性を判断しなければなりません。そのため、医療における責任が重くなるといった側面もあります。

リフィル処方箋の現状と課題

次に、リフィル処方箋制度の現状を見ていきましょう。薬局においては、普及率などの課題もあるようです。

リフィル処方箋の現状は?普及率はまだまだ低い

日本保険薬局協会の調査結果によると、リフィル処方箋の普及率は以下のようになっています。

11,882件の薬局のうち、リフィル処方箋の受付をしたことがあるのは2,087件(全体の17.6%)。従来の処方箋の受付回数と比較すると、総受付回数に対してリフィル処方箋の受付回数は0.053%と、まだまだ従来の処方箋が中心となっています(2022年6月時点)。

まだ対応していない医療機関や経過観察が必要な患者さまが多いことも、普及していない要因の一つと言えます。ただし、まだ始まったばかりの制度であり、これからの普及に期待できるでしょう。

▼参考サイトはコチラ
日本保健薬局協会「リフィル処方箋応需に関する調査報告書」

業務負担の軽減や医療機関の連携などが課題に

リフィル処方箋の課題としては、主に次の3つがあげられます。

・薬局の負担をどのように減らすか
・患者さまの処方箋の管理や情報共有
・医療機関との連携

薬局では、情報の管理と履歴などの記載、2回目以降別の薬局で受け取り希望の場合の対応など業務量が増加するため、それらの効率化が求められます。

また、リフィル処方箋は3回にわたり同じ処方箋を使うため、患者さまのなかには紛失してしまう方もいます。しかし、現時点では再発行が認められていません。

2022年10月からは、リフィル処方箋でオンライン服薬指導をする場合に、患者と薬局の関係にもよりますが、薬局で処方箋原本を保管できる場合もあります。

このようにまだ始まったばかりのリフィル処方箋制度にはさまざまな課題があり、現在改善が進められている段階だと言えます。

▼参考サイトはコチラ
内閣府 規制改革推進会議 第9回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 規制改革要望に関する照合及びその回答

薬局経営への影響とは

リフィル処方箋の導入により、かかりつけ薬局として果たす役割の重要性が増すことから、リピータ―となる患者さまを獲得するきっかけになると考えられます。

一方で、薬剤師は医師に代わって調剤情報を管理し、患者さまの服薬状況や残薬、健康状態などを把握する必要があります。そのため、薬剤師の責任が重くなることも懸念点の一つです。

患者さまへの継続的な薬学的管理指導が必要となれば、薬局経営における現場の体制見直しや薬剤師の負担軽減も考えていかなければなりません。

加えて、医療機関との連携により、情報提供や患者さまへの受診勧奨が求められます。薬局では、これまで以上に対人業務を重視し、体制の構築や改善を行っていくことが求められるようになるでしょう。

かかりつけ薬局として、患者さまにより寄り添った医療が提供できるように

リフィル処方箋制度は、患者さまの負担軽減の一方で、さまざまな取り組みが薬局側へ求められることになります。

かかりつけ薬局の重要性が増し、これまで以上に患者さまに寄り添った指導が必要です。

その役割を果たすためにも、薬局は今まで以上に状況を適切に判断し、患者さまとコミュニケーションをとり、医療機関との連携を進めることが必要となるでしょう。

リフィル処方箋について定められた2022年の診療報酬改定と薬局でのフォローアップについては、下記の記事で詳しく解説しています。

【2022年度調剤報酬改定】薬局での患者フォローアップの流れと考え方

ぜひチェックして、日々の業務に役立ててください。

監修者情報

上村 直樹(かみむら なおき)

薬剤師、薬学博士

上村 直樹(かみむら なおき)

株式会社ファーミック 富士見台調剤薬局 代表取締役
東京理科大学薬学部 嘱託教授
(公社)東京都薬剤師会 相談役 (元副会長)
(公社)神奈川県薬剤師会 倫理審査会 会長
(公社)日本薬剤師会 (元理事)

主な著書は、「医薬品情報学」(化学同人)、「患者に説明できる調剤報酬」(南江堂)、「謎解きで学ぶ 処方解析入門」(薬ゼミファーマブック)、新ビジュアル薬剤師実務シリーズ「薬剤師業務の基本」「薬局業務の基本」 (羊土社)、「OTC 薬入門」(薬ゼミファーマブック)など、その他多数。

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