目次
薬剤師を取り巻く環境は変化している
薬剤師の業務は、対物業務から対人業務へとシフトしているのをご存知でしょうか。薬という「物」を扱う仕事よりも、「人」と接する仕事に注力すべきだと厚生労働省からも指針が公表されました。
具体的には「患者のための薬局ビジョン」に対物業務から対人業務へ移行させる旨の記載がされています。対物業務と対人業務の代表例は以下の通りです。
〈対物業務〉
- 処方箋の受け取り、保管
- 調剤
- 薬袋の作成
- 報酬算定
- 監査
- 在庫管理
〈対人業務〉
- 処方箋の内容チェック
- 疑義照会
- 丁寧な服薬指導
- 在宅訪問での薬学管理
- 副作用・服薬状況のフィードバック
- 処方提案
- 残薬の調整
対物業務から対人業務へとシフトさせるためには、かかりつけ薬局の推進が欠かせません。しかし、かかりつけ薬局の機能を果たしている薬局はまだ多くないのが実情です。かかりつけ薬局の推進と共に、対物業務への移行が進められています。
出典:患者のための薬局ビジョン 概要(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/gaiyou_8.pdf)
薬剤師に求められるスキルとは
薬剤師の仕事は、薬剤師の資格さえあれば誰でも行えます。しかし、資格を持っているだけで薬剤師として良い仕事ができるとはいえません。
病院や調剤薬局、ドラッグストアなど薬剤師が活躍できる場所は多くありますが、どこの職場でも共通して必要とされるスキルがあります。
- 医薬品に関する豊富な知識
- 業務の正確さ
- ヒアリング力
- 伝達力
- 多職種とのコミュニケーション能力
薬剤師として働くためには、医薬品に関する豊富な知識が必須です。調剤併設店やOTC医薬品販売店舗で働いている薬剤師は、あわせて市販薬に関する知識もしっかり身につけておかなければなりません。
業務の正確さも求められます。計数調剤は数を間違えないように行い、計量調剤は数ミリの違いも出ないように行います。
ヒアリング力や伝達力といったスキルも重要です。患者さんから必要な情報を聞き出し、それを必要な人へ届けなければならないためです。医師や看護師とのチームワークを高め、円滑なコミュニケーションをとる必要があります。
人材育成のポイント
部下や後輩が自ら向上心をもって成長してくれたとしても、経営者や管理薬剤師が期待しているような人材に育つとは限りません。
これからの病院や調剤薬局などを支える柱となる人材を育成していくためには、次に紹介する4つのポイントを押さえておくことが大切です。ポイントを理解しておくことで、スムーズな人材育成ができるでしょう。
企業理念・ビジョンから考える
まずは、企業理念やビジョンをしっかり構えておくことが重要です。企業が進もうとしている方向性が見えなければ、部下や後輩はどこを目指して日々の業務をこなしていけば良いのか分からなくなります。
ただし、企業理念やビジョンをただ浸透させれば良いというわけではありません。浸透させたうえで、それを業務に活かせるようにする必要があります。
たとえば「地域社会に貢献する」というビジョンがあったとしましょう。どのようにして地域社会に貢献していくか、人それぞれ違うイメージをもっていることかと思います。経営者や管理薬剤師が一つの道筋を立てておかなければ、せっかく企業理念やビジョンを共有しても、部下や後輩がそれぞれ違う方向に進んでしまうので注意が必要です。
「かかりつけ薬剤師を推進する」「薬に関する知識を広げる」「健康相談を行う」など、具体的な例を提示しつつ企業理念やビジョンを共有します。
教育プランの策定
教育プランとは、人材を育てるための計画書のことです。行き当たりばったりで人材育成を行うのではなく、教育プランをしっかり作成してから育成を行いましょう。そうすることで、人材育成を行う先輩薬剤師の技量に左右されずに一定の教育レベルを担保できます。
教育プランを作成する際は、人材育成を行ううえでの課題の洗い出しから始めます。理想とする人材像と、実際に働いている薬剤師との間に乖離がないかを明確にしましょう。どのような立場の薬剤師にどういったスキルが不足しているのかを明らかにし、スキル不足を補う教育プランを作成します。
次に、研修内容についても考えていきましょう。人材育成における課題を把握し、どのような研修が必要なのかを明らかにします。調剤スキルが必要なのか、接客スキルを向上すべきなのか、それともコミュニケーション能力をもっと高めるべきなのか、具体的な課題を明らかにして適切な研修を用意します。
やみくもに研修を行っても意味がないため、研修を行う目的や目指すべき結果を設定し、段階的にスキルを習得できる研修を用意するのが理想です。
目標と評価基準を決める
人材育成を行う際は、あらかじめ最終目標や評価基準も決めておきます。目標がないのに人材育成を行っても、途中で軸がぶれてしまい理想とする人材は育ちません。軸を固定して理想とする人材育成を行うためにも、目標や評価基準はしっかりと決めておくべきです。
また、目標や評価基準を事前に決めておくことで、評価を受ける薬剤師にとっても評価を行う側の経営者や管理薬剤師にとっても納得感の高い評価を行えます。評価基準と照らし合わせて自分自身の成長度合いを確認できることから、客観的なモニタリングを行ってもらうことも可能です。
ただし、評価基準を経営者や管理薬剤師のさじ加減で決めてしまうようなシステムにしてしまうと、公平性のある評価ができません。そのため、評価基準は定量・定性の両軸で立てるように注意が必要です。
定期的に面談・指導を行う
育成を行いたい部下や後輩と定期的に面談や指導を行います。人材育成において、面談や指導は欠かせません。教育プランに則ってどれだけ学習できたか、目標を達成するために何を行いどれくらい目標に近づけたのかなど、面談を通して確認します。
ただし、形式だけの面談を行っても意味がありません。面談者だけが一方的に話すのではなく、後輩や部下が自発的に話せるような時間を作りましょう。そして、話の内容に合わせて「次はここを目指してみようか」「悩みがあるなら一緒に解決しよう」「もっとこうしてみたら良いのではないか」など、適切なフィードバックを行います。
そのためには、日頃から部下や後輩と円滑なコミュニケーションをとっておくことが重要です。面談を行っても、お互いに信頼関係がなければ適切な評価はできません。状況に応じて、指導も行います。ただし、一方的に想いを伝えようとしても相手には伝わらないので注意しましょう。相手が何を思っているのかしっかり聞くことを意識しながら適切なタイミングで指導を行います。
まとめ
経営者や管理薬剤師になると、人材育成について考える機会が増えます。部下や後輩を育てなければ、普段の業務が回らなくなったり患者さんに迷惑をかけてしまったりするためです。薬剤師の人材育成を行う際は、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
- 1.企業理念・ビジョンから考える
- 2.教育プランの策定
- 3.目標と評価基準を決める
- 4.定期的に面談・指導を行う
人材を育てたいという強い思いがあっても、自己流で育成していては成果につながりにくくなります。効率的に、かつ効果的に人材育成をしていくためにも、ポイントをしっかり押さえておくことが大切です。人材育成は簡単なものではありませんが、ポイントを知っておくだけでも、違いが出てくることでしょう。
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