診療に集中できる事務長制
経営に余裕が出てきたら事務長制の検討を
前回ご説明した通り(バックナンバー:『勤務医から開業医への意識改革・心構え』参照)、無事にクリニックを開業できた先生には「経営者・管理者・医師」の三役の立場がその一身にのしかかってきます。おそらく勤務医時代に比べ多忙を極めるはずですが、それでも開業直後は経営にあまり余裕がないことが多いこともあり、事業主として覚悟を持って三役をこなすことが必要だとお伝えしました。
では、開業後順調に患者を増やし続け、経営にも心にも余裕が出てきた場合はどうでしょうか。開業を志していた時の気持ちを振り返り、「自分が理想としてきた医師像から少しかけ離れてきた。もっと医療に集中したい」と感じる場合があるかもしれません。経営や管理を極めたくて開業医となる先生は少ないでしょうから、このような欲求が生まれるのも自然なことです。そんな時は「事務長」を採用し、経営者・管理者としての院長をサポートしてもらうことを検討してみてはいかがでしょうか。
人件費を抑えるには非常勤という手も
事務長とは、医療行為以外の業務を院長に成り代わり監督する責任者です。規模の大きな病院では珍しくない役職ですが、最近ではクリニックでも徐々に見受けられるようになってきました。資金繰りが安定してきたクリニックの院長にとって、次なる最大の悩みは人事・労務面の業務が増加することのストレス。そこを事務長に手助けしてもらい、院長自身は診療に専念し医療技術の向上によりさらなる増患を目指そう、というわけです。
ただ、事務長を雇用するとなるとやはり気になるのが人件費。たとえ院長の激務やストレスが軽減されるとしても、「医療行為にまったく関わらないスタッフを一人でも雇うことは贅沢だ」と考える先生もいらっしゃるでしょう。その場合は、非常勤という勤務体制から検討を始めてはいかがでしょうか。仕事量との兼ね合いもありますが、週1回から2週に1回ほどの割合で労務管理業務を中心に受け持ってもらうのです。この「非常勤事務長制」なら人件費の負担を最小限に抑えることができるため、多くのクリニックにとって検討の価値があるのではないでしょうか。
事務長のポジションを高めることが必要
条件が合えばすぐにでも導入したくなる事務長制ですが、落とし穴もあります。医療行為に携わらないため、事務長の立場は常に危うさと隣り合わせなのです。例えば看護師や臨床検査技師らの目には、クリニックに直接の収入をもたらさない事務長の仕事は“非生産的業務”だと映ってしまうことも。そうして事務長が現場のスタッフから軽視された挙げ句、事務長制自体が形骸化してしまうケースが意外に多いのです。ですから事務長を迎え入れる際には、彼/彼女の「長」としてのポジションを高めてあげる必要があります。それには管理職としての業務の範囲や権限を明確にし、「クリニックに不可欠な役職」であることを印象づけなければなりません。週に1回程度しか出勤してこないような非常勤事務長であればなおさらです。
もちろん事務長本人にも「院長に成り代わってクリニックを運営していく」という意識を持ってもらいましょう。院長とスタッフの橋渡し的存在になってくれるよう、常にコミュニケーションを密にとることも必要です。事務長がスタッフ・院長の両方から信頼される存在となってくれれば、間違いなくコスト以上のメリットをクリニックにもたらしてくれるはずです。
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