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クリニック・薬局経営コラム

薬局における事業承継

 近年は中小企業やクリニックの事業承継が問題になることがありますが、薬局に関しても同じく事業承継に関する問題があります。今回は事例を紹介しながら、薬局の事業所系についてのメリット・デメリットや成功のポイントを解説していきます。

1:事業承継とは

 事業承継とは文字通り事業を承継する、すなわち誰かに経営を引き継ぐことを意味します。一般的には親族にバトンを渡すイメージが強いかと思いますが、近年は後継者不足の観点から親族以外への承継も決して珍しくはありません。これには従業員への承継、またM&Aを活用した承継を含みます。
 会社や事業を譲り渡す側のメリットとしては、廃業を避けられる点がまず挙げられます。既存の取引先などとの関係上簡単にたたむわけにもいかないとの背景や、興した会社の想いを繋いでもらいたいといった考えまで、廃業を避けたい理由は様々です。いずれにしても会社を残せるというのは最大のメリットでしょう。また、M&Aを活用すれば売却益、譲渡益を得られます。廃業を選べば金銭を得られないだけではなく、廃業のための費用が発生してしまいます。その点、会社や事業の評価が得られれば相応の対価を受け取れるのも事業承継のメリットの一つです。
 もちろん、M&Aを活用して引き継ぐ「買い手側」のメリットも十分あります。例えば経営状況を掴んで事業の開拓、拡大に踏み切れるのは調剤薬局のような店舗業にとってはかなりの利点です。新規開業ではいくら調査を重ねてもあくまで予測に過ぎません。大きくずれて利益が見込める時もあれば、方や大幅に下方修正とのリスクも潜んでいます。その観点からいえば経営数字をある程度確認できるのはリスクヘッジとの見方もできます。他にも新規事業の立ち上げと比較しビジネス拡大のスピードを高められる点ではM&Aは優れた選択肢ともいえるでしょう。

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2:事例紹介

【譲渡側】大手グループ調剤A社

 グループ子会社の複数店舗のうち1店舗、○○薬局が不採算のため事業譲渡による切り離しを検討。
 門前クリニックの院長は60代前半、ご子息が同診療科目のDrだが病院に勤務しており後を継ぐかは不明。
 不採算の理由は人件費。譲渡前、薬剤師は社員2名パート1名、調剤事務パート2名が勤務。
 売上からみると薬剤師は1名減の体制でも運営可能だが、混み合う時間帯や有給休暇への対応を考えて手厚く配置し、結果経営を圧迫した形となる。年間の損失は100万円にも満たない程度だがここ数年赤字が続いており、改善も見込みにくいことから事業譲渡を決定した。
 薬剤師の残留は不可、調剤事務に関しては相談可能、営業権は500万円(税別)に固定資産と医薬品在庫を加えた金額との条件で仲介業者に依頼。

【譲受側】独立希望薬剤師Bさん

 大学卒業後、調剤併設ドラッグストアに入社。学生時代からの夢であった独立開局に向けて実務経験を積み、かつ自己資金を貯めるために就職先は比較的年収の高い企業を選択。
 管理職も2年目より任されやりがいも感じていたが独立をしたい気持ちが高まり、紹介会社に登録し案件を探す。
 出身大学と地元は離れており、業界の知人友人も出身大学を中心に多いことからできれば地元ではなくこれまでの繋がりを活かせる出身大学の地方が第一希望。
 いくつかの案件を見て2年ほど経ち、仲介業者からの連絡で○○薬局の情報を入手する。大手企業が運営しているため利益は出ていないが、人員を削減してプレイヤー兼経営者として携わりつつ、未取得の加算を算定できれば回収は早期で可能だとも思えた。
 自己資金300万円をもとに融資も無事通り、仲介手数料500万円(税別)の提示を受けていたが交渉を重ね最終的に400万円(税別)となったことからも譲受を決意した。

 売り手としては門前クリニックとの関係性ももちろんありますが、不採算店舗のため切り離したいとの要望が強く、どうしても高く売りたいとまでは考えておられませんでした。買い手側からすると多額な投資とまではいかず、1店舗目には丁度良い手頃なサイズ感で採算も見込めるため双方のニーズが合致し成約に至ったという事例です。

3:成功のポイント

〇譲渡側

 譲渡側は重視する点を明確にしておくのが事業承継成功のカギを握っています。
 少しでも多く売却益や譲渡益を獲得したいのか、あるいはこれまで通り理念を大切にして経営を行ってもらいたいのか、一刻も早く引き継ぎたいと時期に重きを置くのか。
 「高く売りたい、けどこれまで築いてきた会社の看板も残したい」と要望が多くなるとどうしても話がまとまりにくくなり、時期を逃してしまいかねません。闇雲に先延ばしすると薬価改定、診療報酬改定の影響によっては大きく価値が下がってしまう可能性もあるためタイミングも重要です。

〇譲受側

 譲受側にとっても薬価改定、診療報酬改定は当然考慮すべきポイントですが、着目すべきはやはり経営数字です。仲介業者が入っていたとしても正確に出された数字ではないケース、あるいは承継後の業績をあまりに甘く予想を見積もったケースもあります。楽観視はせず、シビアに見るぐらいの姿勢が良いかと思います。また従業員を引き継ぐ場合にも注意が必要です。いくら雇用契約が同等とはいえ経営母体が変わるのは少なからず影響を与えます。加えて事業承継を直前まで知らされていない状況下では、気持ちの整理もできていないこともあるため、慎重に話し合いを進めるのがベターです。

まとめ

 最後に、繰り返しにはなりますが薬価改定や診療報酬改定によって薬局の価値が大きく左右されるのが調剤薬局の特色です。タイミングを逃さないためにも情報交換や面談の機会といった場作りも成功のポイントといえるでしょう。

筆者情報

瀬迫 貴士

有限会社フレンド 常務取締役
大学を卒業後、製薬企業に入社しMRを経験。その後実家の調剤薬局に籍を移し、薬剤師として現場にも立ちながら経営を行っている。

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