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クリニック経営 医師 事務長 2023.07.14 公開

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医療DXとは?メリット・課題点と推進のポイントを紹介

医療機関のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しています。2024年4月からの医師の時間外労働規制、少子高齢化による医療機関の人材不足など、医療DXを後押しする動きが強まる中、「具体的に何から始めればいいのか」「現場にどう説明すればいいのか」といった悩みを抱える医療機関も少なくありません。本記事では、医療DXの基礎知識から、メリット、具体的な進め方、注意点まで、現場で実践できる情報を詳しく解説します。医療機関の経営者やDX推進担当者の方々に、特に参考にしていただける内容となっています。

※本内容は公開日時点の情報です

#業務効率化 #紙カルテの電子化 #医療政策

目次

医療DXとは?基本と重要性

医療DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、医療分野においてデジタル技術を活用することで、医療の質や効率を向上させる取り組みのことです。

具体的には政府が掲げる「医療DX令和ビジョン2030」に基づき、各医療機関においてオンライン予約・診療、標準型電子カルテやAIなどによる院内デジタル化の推進等を指します。

これにより、医療機関ではオンライン資格確認や電子カルテの標準化により業務効率が向上します。さらに医療資源の効率的な活用や、新薬・新治療法の開発にもデータを活用できるため、医療全体の質の向上にもつながることになります。

なぜ今、医療DXが必要とされているのか

医療DXによる変革は、待ったなしの状況にあります。その理由は、医療現場が直面している以下4つの課題があるためです。

  • 少子高齢化により医療従事者が慢性的に不足
  • 紙カルテ管理やFAXなど、アナログな業務による非効率な運営
  • 医療従事者の過酷な労働環境
  • 医療機関の経営状態の悪化

医師の働き方改革も急務となっています。2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されたため、業務効率化は避けられません。さらに、医療費抑制政策や人件費高騰も追い打ちをかけています。

医療DXは各課題の解決手段です。デジタル技術の活用で以下のような成果が見込めます。

  • 手書き書類の電子化で記入作業を効率化
  • 患者情報の連携で入力ミス防止、データ管理の効率化

政府は今後、さらなる推進を図る予定です。時代に適応し、地域医療を支えるためにも必要性の理解と前向きな検討が求められます。

医療DXで実現できること

現在の医療業界の課題を改善するために、今後も医療DX推進の動きは加速すると予想されます。ここからは、医療DXによる変化について解説します。

医療DXによる患者サービス事例

患者サービスの向上は、選んでもらえる医療機関の取り組みとして必須です。医療DXの具体的な内容としては以下が挙げられます。

オンライン予約

従来、診察の予約制度はあったものの、電話や受付へ出向くのが一般的でした。診察自体の予約をオンラインでできれば患者さんの利便性が高められます。また、診察のスケジュールも管理しやすくなるため、時間やコスト削減が可能です。

なお、予約のキャンセルもオンライン上で完結できるようにすれば、無断キャンセル防止につながります。結果として、診療時間全体が効率化されます。

オンライン診療

オンライン診療は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって普及したサービスです。患者さんにとっては、自宅や職場からビデオ通話や電話などで受診できるため、通院の手間を省けます。

オンライン診療は利便性が高まるだけではありません。医療過疎地でも専門的な医師の診察を受けられるため、医療格差の是正にもつながります。診療報酬が充実すれば、さらなる拡大が見込まれるでしょう。

医療DXによるメリット

医療DXによって得られるメリットは多方面に渡ります。ここからは、具体的なメリットを実業務と経営面の2つの側面から解説します。

業務効率化と質の向上

医療DXによって院内情報のデジタル化と共有が進めば、業務効率が向上し手厚い診察の提供が可能です。具体的に役立つ2つのツールについて解説します。

電子カルテ導入

電子カルテは診療の現場を大きく変えるツールです。診療に欠かせない項目をひな形として作っておけば、標準化と効率化を両立できます。この点は、紙カルテにはないメリットです。

また、データのデジタル化は診療の精度を高めます。過去の処方歴やアレルギー情報を画面上で確認できるため、安全な投薬が可能です。さらに、他職種間の情報共有もスムーズになります。

電子カルテの導入によるメリット・デメリットの詳しい内容は下記の記事で解説しています。ぜひご覧ください。

参考記事:電子カルテを導入するメリット・デメリットとは?

画像診断支援AIの活用

画像診断支援AIは、AIを活用した画像診断のサポート技術です。診断の精度向上や読影時間短縮など、医師の負担軽減に役立ちます。画像診断機器に対して、放射線科医の数が十分とはいえない状況のため、さまざまな企業が開発し導入が進んでいます。

待ち時間の可視化

医療DXにより待ち時間の可視化が可能になります。可視化により、患者さんと医療機関の双方にメリットがあります。具体的な内容を下記の表にまとめました。

患者側メリット 医療機関側メリット
現在の待ち人数の把握 受付業務の負担軽減
診察開始時間の予想 問い合わせ対応時間の削減
時間の有効活用 患者満足度の向上
ストレス軽減 業務効率の改善

予約制を採用していないクリニックにとって、待ち時間の可視化は必須といえる機能です。患者さんと医療機関双方の利便性を高め、良好な関係を構築しましょう。

経営改善・コストの削減

現在、物価高騰や新型コロナウイルスなどの影響による経営難から、閉院を余儀なくされるケースも少なくありません。このまま閉院が増加すれば、地域の医療アクセスは悪化してしまうでしょう。

診療情報のデジタル共有により、診療情報提供書などの書類作成の手間が不要になります。結果として人件費などのコストが削減でき、経営状況の改善につながります。

医療DX推進のための政府の動向

政府は、持続可能な社会保障をかなえるための医療DX推進に注力しています。2022年5月には自由民主党政務調査会が「医療DX令和ビジョン2030」を提言し、医療業界に3つの変革を起こす計画を立てています。どのようなことが掲げられているのか、詳しく見てみましょう。

全国医療情報プラットフォーム

マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認システムのネットワーク拡充により、患者さん・医療機関・介護事業者・自治体がそれぞれの情報を一元化して共有する仕組みづくりが掲げられています。

患者さんは医療保険情報・検診情報、医療機関や介護事業者はレセプト・カルテ情報・処方箋情報・ケアプランなどの情報をクラウド間連携することで、より効率的で無駄のない医療・介護を受けられるようになります。

また、自治体も予防接種情報・検診情報・認定情報などを共有することで地域医療の質を高めることが可能です。

さらに、ここから得られるビッグデータの活用により創薬や治療法などの研究開発にもつながると考えられています。

電子カルテ情報および交換方式の標準化

従来、各医療機関で保管している患者さんの情報は、診療情報提供書を用いたやり取りを経なければ他機関の情報を把握できませんでした。そのため、緊急時は煩雑なやり取りが医療や介護の妨げになっていたのも事実です。

また、やり取りがなければ他機関の情報を把握できないため、ドクターショッピングを繰り返す患者さんに不適切で過剰な医療が提供されてしまうケースも少なくありませんでした。

このような問題を解決するため、医療DXでは電子カルテの情報を医療機関同士でスムーズに交換したり、共有したりできるシステムづくりに取り組んでいます。2025年の本格稼働に向けて、連携テストやモデル事業などの動きが進んでいる状況です。

出典:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスについて」
(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001309907.pdf)

診療報酬改定DX

医療DXの推進により、医療機関の負担を最小限にして診療報酬の最適化を目指す仕組みづくりが目指されています。

現状のシステムでは、診療報酬が改定されるたびにレセプトコンピューターのプログラム修正が必要です。そのために大きな労力や費用も要します。

診療報酬改定DXでは、レセプトコンピューターに共通算定モジュールを導入することで迅速に診療報酬改定に合わせた更新を実施できる仕組みの実現が提言されています。

参考記事:5分でわかる「医療DX令和ビジョン2030」

医療DXの具体的な進め方

ここからは、医療DXの概要やメリットを踏まえたうえで、どのように進めればよいのか、4つのステップに分けて解説します。

Step1:現状の課題を洗い出し、解決したい優先順位をつける

スムーズに医療DXを導入するには、まず現状分析から始めます。限られた予算と人材を効果的に活用するため、優先順位の設定が必要です。

具体的には、客観的なデータ分析として以下の項目を調査します。

  • 残業時間の多い部署の特定
  • 医療ミスの発生頻度の把握
  • 患者クレームの内容分析
  • アナログ業務の洗い出し

また、多角的な視点での課題抽出も欠かせません。関係者別の課題を下記の表にまとめました。

関係者例 注目すべき課題の視点
経営層 収益性と運営効率
現場スタッフ 業務負担
システム管理者 セキュリティと運用面
患者 利便性

各意見をもとに優先順位を決定します。主観ではなく緊急性や重要性、実現可能性を考慮した判断が求められます。

また、外部環境の変化に応じて定期的な見直しも必要です。オンライン診療システムの進化やAI問診の普及など、デジタル技術の発展に柔軟に対応できる体制を構築しましょう。

Step2:それぞれの課題を解決するためのソリューションを選ぶ

目的を設定したうえで、医療DXのソリューションを選定します。課題解決に最適なツールの導入により、業務改善の効果を最大化できるためです。

事務業務の改善にはレセプトコンピューターが効果的です。保険請求業務の正確性が高まり、作業時間も削減できます。また、ワークフローシステムの導入でペーパーレス化も進みます。

患者サービスの向上には予約システムが不可欠です。待ち時間の可視化機能により、患者さんの利便性は向上します。オンライン診療システムの導入で、通院が困難な患者さんへの対応も可能になります。

ソリューション選びでは複数のベンダーからの見積もり取得が欠かせません。機能・操作性・費用対効果・保守体制を総合的に評価し、自院の規模や特性に合わせた最適なシステムを選定しましょう。

Step3:スタッフへの説明と教育

医療DXの推進には、スタッフの理解と協力が不可欠です。システム変更への不安や抵抗は自然な反応であるため、丁寧な対応が求められます。

まず、変更の目的と期待される効果を明確に伝えましょう。業務効率化や負担軽減など、スタッフにもたらされるメリットを具体的に説明します。

現場の混乱を防ぐため、以下のような教育計画を立案します。

  • 分かりやすいマニュアルの作成
  • eラーニング教材の活用
  • 個別サポートの実施
  • 質問窓口の設置

特にDXに不安を感じるスタッフには、個別対応の時間が必要です。基本操作から丁寧に説明し、徐々に習熟度を高めていきます。

また、導入後のサポート体制も重要です。システムトラブルや操作方法の問い合わせに迅速に対応できる窓口を設置し、周知します。スタッフの習熟度に応じて運用を調整し、スムーズな導入を実現させましょう。

Step4:段階的な導入と効果測定

医療DXの導入は慎重に進める必要があります。大規模なシステムトラブルを防ぎ、スタッフの負担を最小限におさえるためです。

導入初期は特定の部門や機能から開始します。例えば、予約システムなら一般外来から始め、専門外来へと範囲を広げていきます。個人情報の取り扱いに変更がある場合は、患者さんへの周知も必須です。院内掲示や配布物で変更点を説明し、理解を得るよう体制を整えましょう。

導入において重要な投資判断も段階的に進めます。その際の注意点は以下のとおりです。

  • 初期投資の分散による負担軽減
  • 効果検証に基づく追加投資判断
  • システムの安定性確認
  • 運用上の課題把握

導入後の効果測定は、定量・定性の両面から実施します。業務時間の短縮や待ち時間の減少など、数値で把握できる指標が最適です。また、スタッフや患者さんへのヒアリングから、現場の実感も収集します。

形式的な評価は避けなければなりません。現場の声に耳を傾け、実態に即した改善を進めます。必要に応じて運用方法の見直しも検討しましょう。

医療DX推進の課題と対策

医療DXは効率よく安全な医療や介護の実現を可能にすると考えられていますが、一定の課題も指摘されています。具体的な内容を見てみましょう。

デジタル格差

医療DXによって広まったオンライン診療は、過疎地でも専門的な医療を受けることを可能にしました。医療格差を是正するのに役立つのも事実ですが、デジタルツールを使いこなせない高齢者などは十分に活用できません。

このようなデジタル格差によって、受けられる医療や介護にも格差が生じると懸念されています。

セキュリティ管理

医療業界が扱う情報は患者さんの診療情報は、極めてプライバシーが重視される情報です。そのため、情報を一元管理するには、ハッキングやウイルスなどのサイバー攻撃によって外部に漏洩しない確固たるセキュリティ管理が求められます。

今後、全国医療情報プラットフォームが構築されていく過程では、全体としてのセキュリティ管理が大切です。それだけではなく、医療業界に関わる個々人がセキュリティ管理の意識を高めていくことも必要です。

出典:厚生労働省「令和6年度版医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル〜医療機関・事業者向け〜」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001253953.pdf)

導入コスト

医療DXは将来的に考えれば医療業界全体のコスト削減につながります。しかし、パソコンをはじめとするデジタルツールの導入には、一定のコストがかかるのも事実です。

現在の医療機関や介護事業者は経営状況が順調ではないケースも多く、デジタルツールの導入が経営圧迫につながってしまうことも少なくないでしょう。

政府は中小病院や診療所などの負担を最小化できるよう、標準型電子カルテや共通算定モジュールの提供を検討したり、補助金制度も導入したりしていますが、全国に広めるには莫大な導入コストがかかると考えられます。

参考記事:最新の補助金制度について

医療従事者のITリテラシー

デジタルツールを医療や介護の場に活用していくには、医療従事者もITリテラシーを高める必要があります。デジタルツールにトラブルが発生したときの対応やアップグレード、メンテナンスの作業なども行わなければなりません。

デジタルツールに対する知識やスキルが十分でない医療従事者も多いため、デジタルツールの扱いに精通した人材の確保や育成が求められます。

既存システムとの連携

医療機関では、電子カルテやレセプトコンピューター、放射線システムなど、部門ごとに異なるシステムを導入しています。新システム導入にあたり、既存システムとの連携が課題となります。その理由は、互換性の確保やデータ移行には、多くの時間とコストが必要なためです。

システム連携への不安がある場合は、早めの対策が有効です。各システムのサポート担当者に相談し、想定される問題点を洗い出します。

データ移行のリスクを最小限に抑えるため、以下の手順で進めるとよいでしょう。

  • 移行計画の立案:データの種類や量、移行順序、所要時間など
  • テスト環境での検証:サンプルデータを用いた移行手順の確認や、データの整合性チェック
  • 段階的な移行:一部の部門や過去データから開始し、問題がないことを確認しながら範囲を広げる
  • バックアップ体制の整備:移行中の不測の事態に備え、元データの保存と復旧手順を確立する

医療情報システムは患者さんの命に直結します。慎重な計画と準備のもと、安全な移行を実現しましょう。

医療DXの今後の展望

超高齢社会において次世代も持続可能な社会保障をかなえるため、医療DXは今後もますます推進すると考えられます。

医療DXは、患者さんの利便性向上やコスト削減などのメリットがある一方で、セキュリティ管理やデジタル格差などによるさまざまな課題もあります。

医療DXは黎明期にありますが、課題を解決しながら生み出されたサービスや製品をうまく取り入れて医療の効率化を図っていきましょう。

医療DXを推進する製品の紹介

ここからは、医療DX推進に役立つ製品として、「クラウドカルテ」と「電子薬歴システム」の2製品を紹介します。

クリニック向け電子カルテ「Medicom クラウドカルテ」

Medicom クラウドカルテは、医療機関向けに開発されたクラウド型の電子カルテシステムです。25年以上の開発経験と国内トップシェア※の実績を持つPHCグループが開発し、使いやすさ、算定・会計効率化、医療DX対応・サポートの3つの特長を備えています。

充実した機能面に加え、オンライン資格確認や電子処方箋などの最新医療政策にも対応しています。無料デモや資料請求も受け付けており、最短5営業日で利用開始が可能です。

以下より資料請求やお問い合わせいただけます。お気軽にご連絡ください。

※一般診療所向け電子カルテ 診療所シェアNO.1
出典:株式会社富士経済「2023 医療・ヘルスケアDX関連市場の現状と将来展望』より2022年企業シェア・金額ベース 診療所向け電子カルテ(PHC実績)

「Medicomクラウドカルテ」について、お問い合わせはこちら

保険薬局用電子薬歴システム「Pharnes X-MX」

Pharnes X-MXは、メディコムが開発した保険薬局向け電子薬歴システムです。薬歴表紙・監査情報・過去薬歴などを一画面で表示できるため、スムーズに薬歴を把握できます。

また、過去の処方を横並びに表示し変更点が色付けされるため、処方内容の変化を見て取ることができます。

さらに、長期投薬の患者さんの来局予測チェックにより、医薬品の仕入れ予定などへの活用も可能です。

ノートパソコン用のソフトを使えば薬局外でも使用できるため、訪問診療時など場所を選びません。その他、相互作用や重複投薬のチェック機能も充実しており、見落としや多剤服用などの防止にもつながります。

「Pharnes X-MX」について、詳しくはこちら
  • メディコムのオンラインデモメディコムのオンラインデモ

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