目 次
患者さんサイドに立つ薬局づくりで地域に根ざす
「旅行先や買い物している時にこの薬局のことを思い出してくださっているのかと思うと本当に嬉しい」とほんじょう薬局“二代目”の草分陽一先生は、なじみの患者さんから手土産やお菓子などをいただくたび、地域に根ざして信頼される喜びを実感しているといいます。
2008年2月に移転開局したほんじょう薬局は、日本一長いと称される天神橋筋商店街の起点に位置し、繁華街・梅田に挟まれた本庄地区で約100医療機関から月平均700~800枚の処方箋を応需する保険薬局です。卒業した薬科大学の大学院から製薬メーカーの研究職を経て薬局を継いだ草分陽一先生と、1986年に同地区で自宅ガレージを改装して薬局を創業した母親の孝子先生の2人で運営しています。
「チームワークを求められる研究所に4年ほど勤務した経験により、どのような年代の患者さんにも対応できる薬局薬剤師になれました」と言いますが、それよりも「子どもの頃は薬局の売場の中で宿題していました」と、医薬分業制度が本格化する前のOTC販売中心の相談薬局を知る生い立ちが、気さくなお人柄を形成したようです。
新薬メーカーの開発セクションから物販をベースにした開局薬剤師へと転身した孝子先生も「競合相手が前や隣に出てこようが、うちを選んでくださる薬局を目指そうと息子に伝えてきた」と患者サイドに立つ薬局づくりを進めています。
ほんじょう薬局の周辺は、住民同士のつながりが濃い地域になっています。「独居の高齢者が倒れた時、救急車の手配から容体の説明まで近隣の人が行いました」という話が物語るように、昔ながらの人付き合いが残っています。
Pharnesで結ぶ処方医との連携と電子薬歴によるフォロー
「PharnesV‐MX」は、紙薬歴から電子薬歴へ切り替えることを契機に2013年1月に導入しました。
「それまでは別会社のレセコンを使っており、そこの電子薬歴と比較検討した結果、メディコムの方が使いやすかった」と選択の理由を話し、「シンプルな入力操作と充実したチェック機能」を挙げる一方「いろんな機能が付きすぎていると逆に使いきれません」とユーザー重視の設計に注目しています。
地域住民と身近に接する薬局薬剤師の場合、市販薬に関する質問も日常的に受けます。これについては「OTC医薬品の添付文書も検索できるため、医療用医薬品との相互作用を未然に防ぐことができます」と服薬情報の一元的・継続的な把握に役立てています。
また、血糖やコレステロールなどの検査値を付ける機能をめぐっては「経過を数値でフォローできるので節制して頑張る患者さんと並走できます」と接遇により多くの時間を割けるようになった点を高く評価しています。
さらに「添付文書をすぐに開けるので処方箋発行医や看護師さん、患者さんから受ける電話の問い合わせに即座に答えられます。入力からアウトプットまですべての動作が早く、効率的に作業できます」と対人業務を進める上で大きな恩恵を受けています。
この地区の三師会は関係が良好で、医師側から「医薬品に関しては薬剤師さんが専門だから間違いに気付けば指摘してほしい」と申し入れられるほどだといいます。お互いに信頼を寄せ合う背景があれば、処方箋監査や疑義照会を含めて質の高い薬物療法が提供できます。
「患者さんが複数の医療機関を受診されていると医師は把握しきれません。レセコンのチェック機能には併用禁忌で何回も助けられています」と有害事象のリスク回避にも結び付いています。
調剤報酬を請求する薬局側にとってありがたい機能としてポップアップ操作アシストがあります。算定すべき加算などをきめ細かくポップアップで知らせてくれるので「算定漏れ」がなくなります。「いったん点数を取り損ねるとdo処方でそのままずっと続いてしまう恐れがありますからね」と草分先生。
この他、PhanesVシリーズに関しては「収載された薬のデータ反映が早く、薬価収載当日にダウンロードできるようになっています」とデータベースの活用による事務作業の効率化も果たせます。「アナログ人間」でパソコンを敬遠していたという孝子先生も今や「直感的で使いやすい。私でも使いこなせるのですから誰でもできますよ」と請け合います。
ほんじょう薬局では、電子薬歴に雑談で知り得た情報も記録し、体調変化の要因を探る材料にしています。例えばペットロスや家族構成など記載した情報を元に後日、声をかけると「覚えていてくれたのですか」と感激されることも少なくないそうです。
見えてきたこれからの薬局・薬剤師の新たな役割
2022年4月の診療報酬改定では、一定期間内なら1枚の処方箋を反復して利用できるリフィル処方箋やオンライン診療・服薬指導の評価の見直しなど薬剤師職能を高度化する制度が導入されます。「母の時代からやってきたことに制度がようやく追い付いてきたように思います」と草分先生は述懐します。
地域に密着したほんじょう薬局には、患者さんから感謝の気持ちが寄せられるというエピソードを前記しましたが、入退院の際に立ち寄って草分先生の意見を求めてきたり、余命を宣告された患者さんが入院先から電話でお礼を述べてきたこともあったそうです。
「薬はどこで調剤してもらっても同じです。うちの薬だけ特別に効いたり、おいしかったりするわけではありません。それでもうちを選んで来てくださる患者さんのために頑張ることが私たちの仕事です」と創業者の孝子先生は迷いなく語ります。そのバトンを継いだ陽一先生も「患者さんの感動の何%かはカウンターの向こうで起きるという言葉があります」と在宅介護支援など新たなミッションステートメントを築こうとしています。
親から子へ受け継がれた患者との分け隔て無い関係性に、これからの薬局・薬剤師の在り方が見え始めています。
ほんじょう薬局
住所:大阪府大阪市北区本庄東2-4-9
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