ピンチを乗り切る増患対策
患者数減少の理由は、外部要因と内部要因がある
先生がご自身のクリニックをオープンしたとします。ほどなく経営は波に乗り、数年後には院長としての自信もついてきました。しかしどうも最近、患者が減ってきた様子。さあ、「再び患者を集めるにはどうするべきか?」というのが今回のテーマです。クリニックを構えて何年経とうとも、患者の極端に少ない日々が続くことは恐怖以外の何ものでもありません。「来月も再来月もこのままだったらどうしよう?」「家賃や給料など月々の支払いは待ってくれないし…」といった不安がジワジワと胸に影を落としていくさまは、勤務医時代には味わうことのない心境でしょう。すぐさま手を打ち憂鬱な気持ちを消し去りたいところですが、こんな時ほど要注意。「一刻も早く増患を!」と焦燥感に駆られるあまり、見当違いの対策を選びがちなためです。まずは状況を冷静に判断し、患者が減った原因がどこにあるのかを分析することが大切です。その際、「患者数減少の理由には外部要因と内部要因がある」ということを予備知識として持っておくと、原因の追求と対策がスピーディーに行えるでしょう。
外部要因に対しては、アピールポイントを見極め積極的にPR
外部要因とは、クリニックの外で起きていることです。例えば競合クリニックのオープンや拡張工事等による道路事情の変化、周辺地域の人口構成の変動などがあげられます。外部要因に関してはその性質上、基本的にクリニックサイドから原因を直接取り除くことができません。近所にオープンしたクリニックに患者を取られたからといって、「業務妨害だから移転しろ!」と言えないのは当然です(もちろん資金や時間に余裕があれば自院が引っ越しをしてもいいのですが、あまり現実的な解決法ではありません)。このような外部の変化に対処したい場合は、患者に対するクリニックのアピールポイントを、その変化に合った適切なものにすることが重要です。
たとえば、ライバルクリニックの特徴が新しさや院長の若さだった場合、自院のホームページを経験や信頼感を打ち出したものへとリニューアルする、道路事情が変わったことでクリニックの場所が分かりづらくなっているとしたら、駅や電柱の交通広告を見直す、などの具体策があげられます。人口構成の変動に対しては、お年寄り人口が増加したなら早朝診療を、通勤/通学者人口が増加したなら夜間診療を、日中のビジネスマン人口が増えたならお昼の診療をそれぞれ重点的に行えるよう診療時間を変更し、それを徹底してPRしましょう。
内部要因に対しては、できる所からすみやかに改善していく
一方、内部要因とはクリニック内で起きていること。接遇品質の低下や医療技術/機器の旧式化などがあげられます。つまりクリニックで提供しているサービスの質に関することがほとんど。これらは外部要因に比べると直接解決できる分、手をつけられる箇所からの改善が見込めます。たとえば患者に対する接遇などは、すぐにでも見直すべきポイントです。開業当初は新鮮な気持ちから懸命な姿勢だったのに、一定の年月が経つとどうしても慣れが発生してきます。患者に「おもてなしの心」で接しているか? 上から目線で話しかけていないか? などのチェックをスタッフ相互に行って注意を促していきましょう。
また、開業すると勤務医時代と違って最新の医療情報を入手しづらくなります。日々の業務にかまけていると、医療の最前線から遠ざかっていくばかり。最近ではネットの知識ながら、よく勉強している患者もいるためうかうかしていられません。心当たりがあるならば、学会誌を読むばかりでなく学会にも積極的に出席し医療技術の見直しを図りましょう。
なお、内部要因が医療機器の旧式化である場合は機器への再投資を検討することとなりますが、これについては採算が合うかどうかの下調べを慎重に行って下さい。もちろん患者減少の原因が一つであることは少なく、外部/内部の要因が複合的に絡み合っている場合もあります。しかし原因をつきとめ冷静に対処しようと考えた時、上に述べたような分析と対策はきっと役に立つことでしょう。
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