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診療報酬・調剤報酬 薬局経営者 薬剤師 2023.02.28 公開

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2023年度薬価改定のポイントと薬局経営への影響を解説

2022年12月に開かれた中医協薬価専門部会により、厚生労働省は2023年の中間年度薬価改定を行う方針を固めました。例年通り、2023年4月1日からは新薬価に変更されることとなります。 今回の記事では2023年中間年度薬価改定のポイントや、薬局経営における課題などについてわかりやすく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策 #マネジメント

目次

薬価改定とは

まずは薬価改定の目的・仕組みについて見ていきましょう。

薬価改定の目的

ご存じの通り、薬価とは国(厚生労働省)が一律に定めた医療用医薬品の価格のことです。そして薬価改定は定期的に薬価の見直しを行う制度を指します。

薬局や病院、診療所などは医師の診療に基づき医療用医薬品を用いた場合は、薬価に基づいて薬の費用を国および患者に請求しますが、薬の卸業者から医療機関に仕入れる際の価格は、当事者間で自由に設定できます。薬局や病院、診療所などにとって、薬価と医薬品の仕入れ価格の差額は直接の利益(薬価差益)となるため、なるべく安い価格で医薬品が仕入れられるように卸業者と交渉を行うのが一般的です。

その一方で、厚生労働省は定期的に、医療機関が卸業者から仕入れている薬の価格を調査します。この価格を「市場実勢価格」と呼び、市場実勢価格と薬価との間に一定以上の差がある場合に薬価を引き下げて差を少なくするのです。
薬価改定は、以前は2年に1度の頻度で行われていましたが、2021年度からは中間年度改定も開始されたため実質毎年行われることになりました。

※過去にも消費税の増税などを理由とし、1年で改定されたことがあります。

薬価改定のメリット

薬価改定で薬の価格が定期的に見直されて価格が下がることで、国民の医療費負担は軽減されます。また、薬剤料分の保険診療請求額が減ることで国全体の医療費削減にもつながります。日本は少子化が進む一方で、2025年には団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者になるとされています。そして国民人口のおよそ30%以上が65歳以上となり、「超高齢社会」に突入した我が国では、「医療費削減」は喫緊の課題です。

※65歳以上の高齢者の割合が、人口の21%を超えた社会を超高齢社会と言い、日本では、2010年に23%に到達し超高齢社会になりました。

薬価改定のデメリット

通常の薬価改定では薬価が引き下げられる場合が多いため、改定が行われるたびに医薬品の価値が下がり、医療機関側の収益(薬価差益)は下がります。そのため多くの医療機関では改定前に医薬品在庫の調整を行いますが、人件費などの余分な管理コストや業務負担がかかることになります。また製薬会社側の収益も下がることから、開発費用が回収されにくくなり新薬開発へのモチベーション低下と国の企業競争力の弱体化につながる可能性があるとされています。

薬価改定の仕組み

では、薬価改定後の新薬価はどのように決められるのでしょうか。
薬価改定に関わる文書では「乖離率」や「調整幅」という言葉がよく出てきます。これらを元にした薬価改定の決まり方や計算方法についてお伝えします。

乖離率(かいりりつ)とは

「乖離率」とは、薬価と市場実勢価格がどれだけかけ離れているのかを表した数値です。市場実勢価格と薬価の差を、薬価で割ったときの割合を示します。値が大きいほど薬価改定の対象になりやすいです。
乖離率は以下の計算式で算出されます。

乖離率=(薬価ー市場実勢価格の加重平均値)÷薬価×100

たとえば改定前薬価100円、市場実勢価格の加重平均値が90円の薬があるとすると、乖離率は以下のようになります。

乖離率=(100ー90)÷100×100=10%

▽参考記事
厚生労働省『令和2年薬価調査結果』

調整幅とは

薬価改定は薬価を市場実勢価格に合わせることを基本としています。しかし、薬価をそのまま市場実勢価格にまで引き下げてしまうと、医薬品の流通管理に必要な配送料、保管・廃棄費用などが加味されないため、「調整幅」が設定されています。

現在は基本的に改定前薬価の2%は維持するように定められており、乖離率から調整幅2%を差し引いた分が、薬価改定での引き下げ幅となります。
たとえば、改定前薬価100円、市場実勢価格の加重平均値が90円の乖離率10%の薬があるとして、新薬価は以下のようになります。

10%(乖離率)ー2%(調整幅)=8%の引き下げ幅
新薬価=100円×(100ー8)/100=92円

2023年度薬価改定のポイント

2023年度は、中間年度薬価改定が始まってから2回目の改定にあたります。
初回の2021年度と比較しながら、2023年度改定のポイントをご説明します。

改定の対象範囲について

2023年度は、平均乖離率7.0%の0.625倍超となる乖離率4.375%を超える品目が対象とされることになりました。これは全医薬品の69%にあたります。
前回2021年度の中間年改定では平均乖離率8%の0.625倍である乖離率5%を超える品目を対象に約7割の品目の薬価が引き下げられたことから、前回相当の改定が実施されることとなります。

調整幅は通常改定と同様

2023年度の調整幅は、通常改定と同じ2%です。
前回2021年度の中間年改定では、コロナ特例で2%+0.8%の見直しがありましたが、今回は予定されていません。

医薬品の安定供給や新薬開発に一定の配慮策も

昨今の医薬品流通現場の状況は2021年度の中間改定時とは大きく異なります。
医薬品(とくにジェネリック医薬品)の供給が不安定であることや、加えてコロナワクチンや検査キットの配送・流通も行わなければならないことから、医薬品卸業や医療機関の負担が増大しています。また、ガソリン代・電気料金などが高騰していることもふまえ、今回は以下のような配慮がみられます。

新薬創出・適応外薬解消等促進加算

新薬創出・適応外薬解消等促進加算は、革新的な新薬の創出を促進するために、ジェネリック医薬品(後発品)の無い新薬に対して、市場実勢価格に基づいた薬価の引下げを猶予するものです。今回の改定では加算額を特例的に増額することで、従来の薬価と遜色ない対応を行うことが決められています。

不採算品再算定

医療用医薬品における不採算品とは、薬価改定において薬価が下がり、採算が取れなくなってしまった品目を指します。
不採算品再算定は、これらの品目のうち代替薬が無いなどの理由で医療上の必要性が特に高い医薬品に限り、薬価を引き上げる制度のことです。
今回の改定では医薬品の安定供給問題や、急激な原材料費の高騰などの問題に対応するため、2022年11月までに不採算の報告があった1,100品目全品を対象に適用するとしています。

このように、2023年度中間年度薬価改定では、新薬創出等加算と不採算品再算定の薬価引き上げによる2つの特例的対応により全品目の48%(9,300品目)が対象となった結果、医療費削減効果は3100億円となる見込みです。

▽参考記事
厚生労働省『令和5年度薬価改定について』
厚生労働省『令和5年度薬価改定について(論点整理)』

薬局経営への影響とは

薬価改定が実質毎年行われることで、薬価差益の減少や在庫管理コストの増大による医療機関の負担は大きいと言えます。とくに薬局では売上の7割以上を薬剤費が占めており、その割合は病院やクリニックなどよりも大きいため、経営面で一層シビアな対応が求められるでしょう。
さらにジェネリック医薬品を中心に医薬品の流通がいまだ不安定ななかで、患者さまに医薬品を安定的に供給する重責もあります。
厳しい状況下でも、以下のような点に留意して対応していきましょう。

取り扱う品目により薬価改定の影響は異なる

乖離率が異なることから、薬価改定で受ける影響も取り扱う品目によってある程度異なります。(平均乖離率は、内用薬が8.2%、注射薬が5.0%、外用薬が8.0%)
その点を考慮すると、以下のような影響が予想されるでしょう。

乖離率が大きく影響も大きい ・消化性潰瘍用剤(11.3%)
・血圧降下剤(11.3%)
・高脂血症用剤(12.7%) など
乖離率が小さく影響も小さい ・漢方製剤(3.7%)
・腫瘍用薬(4.2%)など

( )内は乖離率。

仕入れ価格により薬局の収益も変動する

多くの品目は薬価改定により薬価は下がってしまうので、売上にあたる調剤報酬は下がります。しかし、その分の仕入れ値を下げることができれば、一定の利益の確保も可能です。
安定供給や安全性が確かな品目・メーカーを見極め、新薬価が始まる4月までに取引先の卸業者との価格交渉をしっかりと行いましょう。

地域支援体制加算の追加加点の特例措置が実施(1~3点)

2023年4月~12月まで限定の追加措置として、以下のような医薬品安定供給への取り組みに配慮する加算も行われることが決まっています。

  • 地域の薬局間での医薬品備蓄状況の共有と医薬品の融通
  • 医療機関への情報提供(医薬品供給の状況、自局の在庫状況)、処方内容の調整
  • 医薬品の供給情報等に関する行政機関(都道府県、保健所など)との連携

しかし、この加算を算定するためには、追加の施設基準を満たす必要があります。

[追加の施設基準]

  •  (1)地域支援体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること。
  •  (2)後発医薬品調剤体制加算に係る届出を行っている保険薬局であること。
  •  (3)地域の保険医療機関・同一グループではない保険薬局に対する在庫状況の共有、医薬品融通などを行っていること。
  •  (4)(3)に係る取組を実施していることについて当該薬局の見やすい場所に掲示していること。

算定が可能な薬局は追加の施設基準を満たすことで、加点を受けられる体制に整えていきましょう。

▽参考記事
日本薬剤師『予算・税制改正等に関する要望 <重点事項>』

2023年度の薬価改定に備えて早めの対策を

2023年度の薬価改定は、平均乖離率7.0%の0.625倍超となる乖離率4.375%を超える品目が対象となり、医療費削減効果は3,100億円となる見込みです。
薬価改定が実質毎年行われることで薬局の負担は大きくなっていますが、「超高齢化社会」のわが国で、医療費削減は喫緊の課題と言えるでしょう。

在庫管理の徹底や仕入れ値価格の交渉、地域支援加算の追加加算などの救済措置も利用しながら、薬局経営に取り組む必要があります。とくに仕入値価格の交渉は、薬剤の売上比率が高い薬局において重要であり、早期から交渉を開始する必要があると言えます。そのほか、処方箋収入以外の収益確保についても見直すことも有効でしょう。

下記の記事では薬局経営で取り組むべき利益創出や業務改善のポイントをご紹介しています。ぜひご一読のうえ、経営に役立ててください。

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監修者情報

大西 大輔

MBA 経営情報学修士

水口 錠二 (みずぐち じょうじ) 氏

一般社団法人日本医療報酬調査会 代表理事
池坊短期大学 文化芸術学科 (元教授 副学長)
学研グループ株式会社全国医療教育推進協会 (元取締役)

主な著書は、「調剤薬局開業成功マニュアル」(ぱる出版)、「日経ドラッグインフォメーション」(日経BP社)、「クリニックの継承開業成功マニュアル」(ぱる出版)、「月刊ナーシング」(株式会社Gakken メディカル出版事業部)、「病院の収益改善マニュアル」(ぱる出版)、「医者代クスリ代が半分になる方法」(ゴマブックス)、「調剤報酬請求事務練習ノート」(ぱる出版)など、その他多数。

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