
目次
診療所の平均患者数の試算
診療所の患者数において、40人/日は、1つの目安となります。
厚生労働省の「社会医療診療行為別統計」(令和3年)によれば、全国の診療所における月当たり外来患者数は、延べ8,096万人です。一方、厚生労働省の「医療施設調査」(令和元年)によれば、全国の診療所数は、約10万2,616件です。月当たりの外来診療日数が21日(週5日稼働)〜25日(週6日稼働)として、1日当たり患者数は32〜38人となります。つまり、平均的には1日36人が診療所の外来患者数の目安と考えられます。
ただし、これはあくまで平均値です。1日100人以上来院しているクリニックも多く存在しますし、1日の来院数が十数人というクリニックもあります。
年収にすると約2,300万円に相当

診療所の採算という観点では、1日40人が目安となります。平均的な内科診療所の収支構造を見てもらうとわかりますが、院外薬局で単価5,200円程度の患者が40人来院し、かつ1日0.5人の健診を受け入れている医療機関の売上は、月額525万円になります。
この規模の診療所の平均的なスタッフ数は、看護師1名、事務2名程度と考えられ、都心ならば坪15,000円で40坪の家賃(地方ならば坪10,000円弱だが、もっと広くなる)をみておく必要があります。
この場合、院長の所得である「利益」が、月190万円程度となります。これは年収にして2,300万円程度に相当し、ここから税金を引いた上で借入金の返済等を加味すると、勤務医よりは若干良いけれども、決してお金持ちとは言いがたい平均的な個人開業の院長の姿が浮かび上がってきます。
つまり、1日40人の来院数を確保することが、リスクをとって開業した院長先生の、1つの目標とも考えられます。
年1人当たりの診療時間は10.5分
1日40人という数値は、診療時間という観点からも重要な示唆を与えてくれます。診療時間を9時〜13時、15時〜18時とした場合、仮に患者さんが等間隔で来院されたら、1人当たりの診療時間は10.5分となります。
この10分間には診療の準備(カルテの用意や確認)と各種検査結果の確認、そして診療後のカルテ記載が含まれることを考えれば、実際に医師が患者さんに向き合っていられるのは5分前後が良いところだと思われます。
診療時間が5分を切ると患者さんの満足度が激減するという調査結果があります。患者さんがある程度話をすることができ、一定の満足を得て帰られる時間を確保する意味でも、1日40人は目安となる数値です。

逆に言えば、1日40人を超えて50人、60人となってくると、医師が患者さんに割ける時間は充分ではなくなります。そのため、再診患者さんは時間をかけずに上手に診るとか、看護師等のコメディカルを活用するといった工夫が必要になります。
これらの観点から、一般的な診療所にとって1日40人は“マジックナンバー”とも言える数値です。クリニックを経営される先生、またそれに関わる税理士やコンサルタントの先生にも頭に入れておいてもらいたい数値です。
診療科目別にみた患者数

一方で、平均外来患者数は、診療科目によっても全く異なる数値となります。
表は、「医療施設調査」により計算した、診療科目別の1施設1日当たり患者数です(無床診療所)。これによれば、内科31人、小児科31人、整形外科92人となることがわかります。もちろん、科目により診療報酬体系が異なるので、採算分岐点も大きく異なります。
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