目次
プレゼンティーズムとは
プレゼンティーズムとは、WHO(世界保健機関)によって提唱された健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標です。
この状態の従業員は出勤しているものの、体調不良やメンタルヘルス不調などにより生産性が低下している状態を指します。そのため、企業への影響は大きい一方で、問題が見えにくいのが特徴です。
一方、アブセンティーズムとは、健康問題による仕事の欠勤(病欠)を指します。

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健康経営指標としてのプレゼンティーズム
プレゼンティーズムは、健康経営の指標でもよく利用され、近年では多くの企業が生産性への影響を可視化する指標として導入を進めています。こうした背景から、まず、自社におけるプレゼンティーズムによる損失額を把握することが重要です。さらに、健康経営に体系的に取り組むことで、プレゼンティーズムを改善し、企業の損失を抑えることができます。
健康関連総コストの大半がプレゼンティーズム
厚生労働省保険局の「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」では、健康関連総コストの全体構造が示されています。この資料によると、健康関連総コストのうち相対的プレゼンティーズムが占める割合は77.9%と最も高く、次いで医療費が15.7%、アブセンティーズムが4.4%となっています。
プレゼンティーズムと他のコストの間には大きな差があり、こうしたデータからも健康経営を推進するうえでプレゼンティーズム対策が極めて重要であることが分かります。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf)
プレゼンティーズムの原因
プレゼンティーズムの主な原因は、大きく3つに分けられます。経済産業省の「健康経営オフィスレポート」では、これらの予防・改善に取り組むことでプレゼンティーズムの解消につながるとしています。
運動器・感覚器障害
腰痛や眼精疲労、肩こり、頭痛などの運動器・感覚器障害が、プレゼンティーズムを引き起こすことがあります。出勤はできていても、これらの症状により集中力や思考力が低下し、業務効率が悪化します。
メンタルヘルスの不調
強いストレスや過度なプレッシャーが続くと、メンタルヘルス不調を招くおそれがあります。その結果、ワークエンゲージメントが低下し、本来のパフォーマンスを発揮できなくなるほか、重症化すると、うつ病などの精神疾患を発症する場合もあります。
心身症(ストレス性内科疾患)
慢性的なストレスが続くと、動悸や息切れ、食欲不振、下痢などの心身症(ストレス性内科疾患)として身体的な不調が現れることがあります。こうした状態では仕事に集中しづらく、従業員が持つ能力を十分に発揮できない状況が続いてしまいます。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieioffice_report.pdf)
プレゼンティーズムの放置によるリスクと悪影響
プレゼンティーズムに企業が対策を講じないままでは、問題が放置されてしまいます。ここでは、プレゼンティーズムを放置した場合に生じる主なリスクや悪影響を見ていきましょう。
業務パフォーマンスの低下
プレゼンティーズムを放置すると、従業員が本来の業務パフォーマンスを発揮できない状態が続きます。その結果、企業全体の生産性が低下し、経済的損失が拡大します。長期化すれば、その分損失も積み重なっていきます。
さらに、健康リスクの増大にも注意が必要です。従業員の健康状態が悪化し、企業にとっての健康コストが増加する可能性があります。
他の従業員の負担増加
プレゼンティーズムによって生産性が下がると、その分の業務を上司や同僚がカバーすることになります。結果として、周囲の従業員の負担が増え、ストレスが高まりやすくなります。
こうした状況が続くと、上司や同僚にもプレゼンティーズムが波及するおそれがあり、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。
離職率の上昇
プレゼンティーズムの状態が続く従業員は、次第に仕事へのモチベーションを失いやすくなります。その結果、離職につながるケースも少なくありません。
また、業務負担の増えた周囲の社員も、より働きやすい環境を求めて退職する可能性があります。こうした悪循環が、離職率の上昇を引き起こす一因となります。
プレゼンティーズム改善のための4つのケア
プレゼンティーズムを改善するには、メンタルヘルス対策として「4つのケア」を実践することが重要です。それぞれの内容を見ていきましょう。
セルフケア
セルフケアは、従業員が自ら行うメンタルヘルス対策です。ストレスの解消法を見つけたり、趣味を楽しんだりするほか、オフィスでは軽く体を動かしたり腹式呼吸でリラックスしたりするのも効果的です。
関連記事:セルフケアとは?メンタルヘルスケアの重要性と推進のポイント
ラインケア
ラインケアは、管理監督者が部下に対して行うケアです。日頃から声かけを行い、様子の変化に気づいた際は早めに対応します。たとえば、ミスの増加や表情の暗さなど、小さな変化を見逃さないことが大切です。
また、働きやすい環境を整えたり、相談に応じたりすることもラインケアの一部です。
関連記事:ラインケアでは何を行うべき?実施するメリットや注意点も解説
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
このケアは、産業医や保健師などの専門職が従業員を支援するものです。ストレスチェックの結果を活用し、セルフケアやラインケアを支援・助言します。専門的な知識に基づく対応が行える点が特徴です。
関連記事:ストレスチェックで離職を防ぐ!リスクを早期発見する方法と予防策
事業場外資源によるケア
事業場外資源とは、外部の専門家や機関を指します。企業が外部と連携し、相談窓口やカウンセリングを実施するなどの支援を行います。社内だけでは対応が難しいケースにも適切に対処できるのが利点です。
また、外部講師を招いた社内研修も、事業場外資源によるケアの一つです。
関連記事:EAP(従業員支援プログラム)導入で変わる職場のメンタルヘルス対策とサービス選定のコツ
プレゼンティーズム改善のための企業の取り組み

プレゼンティーズムを改善するためには、企業が主体的に取り組むことが欠かせません。ここでは、効果的な取り組みの一例を紹介します。
指標を測る
まず、自社でプレゼンティーズムがどの程度発生しているかを把握することが重要です。そのためには、客観的に測定できる指標を活用します。主な指標は以下の通りです。
WHO-HPQ
WHO-HPQは、世界保健機関(WHO)が開発した代表的なプレゼンティーズム指標です。絶対的プレゼンティーズムと相対的プレゼンティーズムの2つの方法で評価される点が特徴です。
ただし、自己評価が控えめな人ほどスコアが低く出る傾向があるため、結果の解釈には注意が必要です。
東大1項目版
東大1項目版は、平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「東京大学ワーキング」で開発された指標です。1つの質問に回答するだけでプレゼンティーズムを測定でき、無料で利用できる手軽さが特徴です。
WLQ
WLQは、タフツ大学で開発された指標で、「時間管理」「身体活動」「集中力・対人関係」「仕事の結果」の4分野から構成されています。25問の設問に5段階で回答し、0~100のスコアを算出します。
Wfun
Wfunは、産業医科大学が開発した指標です。7項目の質問に回答し、7~35点で評価します。得点が高いほどリスクが高く、13点以下は問題なし、14~20点が軽度、21~27点が中等度、28~35点が高度の労働機能障害とされています。
Qqmethod
Qqmethodは、健康問題の有無を確認したうえで、該当する場合に4つの質問を行う指標です。回答結果から生産性低下割合や損失額を算出できます。無料で利用できる点も利点です。
健康管理サポートの充実
プレゼンティーズムを改善するには、健康管理を従業員の自己責任に任せないことが大切です。企業として、従業員の健康維持を積極的に支援する必要があります。
たとえば、健康経営の一環として定期健診後のフォローや、福利厚生制度の活用を促すことが効果的です。また、ヘルスリテラシー向上に向けた教育や情報提供も重要です。従業員の健康意識が高まることで、行動変容につながります。
関連記事:ヘルスリテラシー向上で従業員の行動変容を促す方法を紹介
休暇を取得しやすい環境づくり
体調不良でも出勤してしまうと、プレゼンティーズムのリスクが高まります。無理をせず休める雰囲気をつくることが重要です。
あわせて、有給休暇推進日やリフレッシュ休暇といった休暇制度を導入し、取得を促しましょう。疲労やストレスの蓄積を防ぎ、プレゼンティーズムの改善につながります。
業務の属人化を防ぐ仕組み
業務が属人化していると、一部の従業員に負担が集中しやすく、プレゼンティーズムの原因となります。業務の標準化やマニュアル化を進め、チーム内で知識を共有しましょう。
引き継ぎがスムーズに行える体制を整えておくことで、誰かが体調不良になっても業務が滞らず、企業全体の生産性維持につながります。
心理的安全性と相談体制の整備
心理的安全性とは、自分の意見や考えを安心して話せる職場環境のことです。心理的安全性が確保されている職場では、従業員が悩みや体調面の不安を上司に気軽に相談できます。
そのためには、上司との1on1ミーティングの実施や、社内相談窓口の設置が効果的です。早期に問題を共有し、解決につなげることができます。
柔軟な勤務体制の導入
フレックスタイム制やテレワークなど、柔軟な勤務体制を導入することもプレゼンティーズム改善に有効です。従業員が体調やライフスタイルに合わせて働けるようにすることで、無理のない勤務が可能になります。
出退勤時間を自身で調整できれば、体調管理がしやすくなり、ワークライフバランスの向上にもつながります。
食事に関する福利厚生の導入
忙しい従業員ほど、簡単な食事で済ませてしまいがちで、栄養が偏る傾向があります。そのため、社員食堂で栄養バランスの取れたメニューを提供することは有効です。また、食事補助制度を活用し、お弁当のデリバリーサービスを割引価格で利用できるようにするなどの方法もあります。
健康経営度調査でも、食事改善に向けた具体的な支援が重要項目として挙げられています。
関連記事:健康経営銘柄とは?選定のメリットや要件・申請の流れを解説
プレゼンティーズムは組織の課題
プレゼンティーズムは、個々の従業員だけの問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題です。ここでは、組織としてプレゼンティーズムの改善や予防を進めるうえで効果的な方法を紹介します。
健康経営への取り組みが効果的
健康経営に取り組むことで、身体面・精神面の両方から不調の改善が期待できます。プレゼンティーズムの原因を取り除くことで、生産性の向上や将来の収益性の拡大にもつながります。
ただし、形だけの取り組みでは十分な効果は得られません。経営戦略の一環として、計画的かつ継続的に推進することが重要です。
すでにプレゼンティーズムによる影響が見られる場合には、組織として早急に改善施策を講じる必要があります。放置すれば経済的損失が拡大し、経営を圧迫する恐れがあります。
ストレスチェックによる集団分析
ストレスチェックは、個々の結果を把握するだけでなく、集団分析によって組織的な課題を明らかにするとより効果的です。分析結果から高ストレス者の割合が高い部署を特定することで、職場ごとの特徴やリスクを把握できます。
また、部署単位で良好な点や改善が必要な点を可視化し、状況に応じた対策を講じることができます。これにより、組織全体で健康的な職場環境づくりを進められます。
まとめ
プレゼンティーズムは目に見えにくい問題ですが、企業の健康関連総コストの大部分を占めています。放置すれば企業の損失が拡大するおそれがあるため、早期に改善へ向けた取り組みを進めることが重要です。
ウィーメックスでは、従業員の健康管理に関する業務をアウトソーシングできる健診代行やストレスチェックサービスを提供しています。組織の健康経営を推進する第一歩として、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

