新規開業と承継開業どちらがいい?メリットデメリット比較
新規開業と承継開業とは
まず、開業には基本的にゼロから立ち上げる「新規開業」と、既存のクリニックを承継して開業する「承継開業」があります。
新規開業では、マーケットリサーチ、物件を探し、建物の建築や内外装の施工、医療機器やシステム類の導入、備品・什器購入、スタッフ採用、各種開業申請書等の資料提出、地域連携の構築、集患に向けた活動など、多くの準備をゼロから行い立ち上げる開業です。
一方、承継開業は既存のクリニックを承継して、立地や施設設備、働いている従業員や通院患者を引き継いで、新たに経営を行うものです。
それぞれの特徴としては、新規開業は全て院長の意向でゼロからクリニックコンセプトや事業計画を作り、建物をデザインを考え、診療方針から受け入れる患者層など全て自由に決めることができます。ただしその分、建物や備品の購入、人の採用、PR・集患活動など多額の費用が掛かる点と、安定した診療報酬を得られるまでの一定の時間が掛かるなどハードルが高い要素があります。
承継開業は既存のクリニックを承継するため、良くも悪くも全て既にある物を引き継ぐ形となります。ただし、新規開業に掛かるような準備の時間と労力を削減し、初期投資を抑えることができる点や、基本的に患者を引き継ぐ形となるため承継した月から安定した収入がある点などが大きなメリットと言えます。
その他にも、前院長・理事長が築いてきた地域住民との信頼関係や医療機関との関係を引き継ぐなどメリットが多くあります。
懸念事項としては、承継後にスタッフや患者と合わず結局新規開業より費用がかさんでしまうなどのリスクがある点や、建物の老朽化により立て直しなどが必要な場合などがあります。
それぞれのメリット・デメリット
新規開業と承継開業のメリット・デメリットは以下のようなものがあります。
【新規開業】
メリット | デメリット |
---|---|
診療圏を自由に選択することができる | 初期費用が多く掛かる(在宅利用の場合は抑えることが可能) |
多くの開業物件/用地の中から、土地やテナント等の物件を選べる | 開業後の収支の予測が立てづらい |
外装や内装(間取り含む)を自身の理想通りに設計できる | 最初の診療報酬が入るまで、収入が無い期間がある(最低2か月) |
人材や卸など付き合う業者などの選定を一から行うことができる | 医院を黒字化するまでに数年の時間が掛かる |
医療機器やシステム等(特に電子カルテ)を自身の意向に沿って導入できる | 開業に向けた検討事項や、人や業者、物など選定するものが多く開業準備に時間と労力が掛かる |
【承継開業】
メリット | デメリット |
---|---|
開業準備の時間と労力を節約できる | 患者層や年齢層が偏っている場合(後期高齢者など)、新規開業と同等に集患に注力する必要がある |
開業に伴う初期費用を抑えることができる(新規開業と比べ) | 人件費が高く設定されている場合がある |
基本的に既存の患者を引き継げるため、早期の黒字化や安定経営が見込める。または安定している状態から始められる。 | スタッフに気を使い業務オペレーションを変えることが難しい場合がある(特に電子カルテ等新しいシステムの導入など) |
収支の見通しが立てやすい | 院長交代後もスタッフや患者に安心(定着)してもらうために、数ヶ月の時間軸で前院長と連携して引き継ぎ計画を実行する必要がある。 |
業務に慣れているスタッフがいるため、クリニック運営に関する問題発生が少ない | 建物の老朽化問題がある場合、多額の修繕費用(または移転費)が掛かる |
地域での認知度が既にあるため、PR活動や広告等が最小限で済む | |
内外装の設計や業者選定等を省略できるため、検討事項を減らすことができる | |
前任者と共に地域の関係者(病院や連携多職種)や医師会への挨拶回りができるなど、地域内の関係が築きやすい |
自分に合った選択を
新規開業と承継開業にはそれぞれの特徴と良さがあります。
承継は引き継ぎにより得られる様々な恩恵や、新規開業より費用を抑えれらるなどメリットが大きいですが、全ての承継がそのとおりになるという物でもない為、承継を検討する際は承継する価値があるのか、逆に近隣で新規開業した方がメリットがあるのかなど、状況や環境などをよく理解して進む方向を判断する必要があります。
どちらの選択肢が良いか様々な観点で分析し、また将来的なビジョンまで検討してプラスになる方を選択しましょう。
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