目 次
1. メリット
(1)医師の確保ができる
「医師を採用するのには300万円~400万円は当たり前」
メリットの一つ目は「医師の確保ができる」ことです。ご存じの方は多いと思いますが、医師数は増えてきているものの、いまだ全国に30万人程度しかいない職種です。
大病院ですら良い医師の確保には苦労している現状であり、専門の紹介会社から採用をする場合は、その年収の20%~30%の紹介料が必要になります。医師の年収を考えると紹介料が300万円~400万円を超えることも珍しくありません。
「クリニックの戦略にあった設計をしやすくなる」
知り合いの医師を連れてくるメリットには、紹介料の節約だけでなく“どんな医師なのかがわかる”ということがあります。
具体的には、「どのような診療スキルを持っているか」「スタッフとはどのようなコミュニケーションをとるか」「1時間で何人くらいの患者を診ることができるか」「医薬品の考え方はどうか」「患者からの評判はどうか」「どういったライフプランを考えているか」などです。
こういった“人物”について知ったうえで事業の計画を考えることができるのは、とても重要なメリットです。
「事業のパートナーとなり得る」
これはメリットにもデメリットにもなり得ますが、病院や大きい医療法人と異なり、クリニックでは「医師は院長一人」というケースが多いのが現状です。そのような場合、診療の相談(専門が異なる医師なら特に)、経営やスタッフの相談などを行えるパートナーがいることはメリットになります。
また、本当に事業パートナーとして共同創業した場合は、一緒に開業費を負担したり、連帯保証人になってもらったりすることにより、最初から大きく事業を始めることができます。
(2)金銭面
続いては、金銭面のメリットです。ここでは上記した、「医師採用費」「投資予算の折半」といった初期費用ではなく、PL(損益計算書)に焦点を当てて記載をします。
【売上の上昇】
まずは、売上の上昇です。売上の上昇が起きるポイントは以下です。
・回転率の上昇
2名の医師が同時で診療を行うことにより、当然、診療時間内で診られる患者数が増加します。とても好立地であったり、マーケティングをしっかり行っている計画の場合に適しています。
・診療時間の拡大
診療時間を長くするという方法もあります。例えば、朝8時~夜21時までの診療を行ったり、月~日曜日を終日診療したりなどです。とてもハードに見えますが、2名で分担することにより、稼働時間は半分になります。休診日がなかったり夜も診療していたりすることにより、患者が離脱しにくくなり競争力に繋がります。
・診療範囲の拡大
診療の範囲です。例えば「内科」と「心療内科」、「内科」と「整形外科」のような1名の医師でなかなかカバーしきれない診療科目を2名の医師でカバーします。2名で複数の診療科をカバーすることにより、患者がその対象疾患になった際に“行き慣れたクリニック”に来てくれる可能性は高くなり、相乗効果が生まれます。ほかにも、「眼科」と「糖尿病内科」、「糖尿病内科」と「腎臓内科」などのように、紹介による転院が起きやすい組み合わせで開業をすると、より相乗効果を生みます。
【固定費の有効活用】
次に費用面です。もちろん医師が増えることで人件費は増えますが、例えば賃料のような固定費は、1診察体制の場合も2診察体制の場合も変わらず、365日診療を行っても変わりません。固定費の有効活用によって、2診察目の損益分岐点は1診察目よりも低くなります。
2. デメリット(課題)
一方で、開業当初から友人や同僚と一緒に診療を行うことのデメリットもあります。
(1)高額な人件費
まずは医師の高額な人件費があります。さらに、「開業時」から複数の医師で診療を行うことで以下のような問題が発生します。
院長のみの場合 | 院長+医師1名 | ||
---|---|---|---|
売上 | 3,000,000 | 3,000,000 | |
原価 | 150,000 | 150,000 | |
人件費 | 医師 | 0 | 1,500,000 |
看護師 | 350,000 | 350,000 | |
事務 | 250,000 | 250,000 | |
経費 | 資料 | 500,000 | 500,000 |
その他 | 800,000 | 800,000 | |
営業利益 | 950,000 | -550,000 |
・患者の来院数が読めない
上記のメリットの多くは「医師1名では診られないほどの患者が来院する」ということが前提となっています。しかし、どんなクリニックも開業時においては患者数が少ないですし、その後どれくらいまで増えていくかは読むことはできません。
・雇用となると報酬は一定
院長は経営者のため事業の収益に応じて報酬が調整されますが、共同で始めた医師はあくまでも「雇用」となり報酬は一定となります。これが開業時の売上が低い時には命取りとなります。例えば、以下の事例の場合、院長のみであれば売上の低い期間、院長の生活を切り詰めることによって乗り切れますが、医師を雇用すると、報酬を収益に合わせて切り詰めることになるため、簡単ではありません。
(2)スキーム問題
上記の金銭的問題は、「ベースの報酬は安くして、クリニックの実績に応じてインセンティブを出す」という契約に合意をもらえれば解決できますが、医療機関の開業する方法(スキーム)から考えると、解決しなくてはならない点はまだあります。例えば、開業時はほとんどのクリニックが「個人事業主」となるということです。
個人 | 医療法人 | |
---|---|---|
決定権 | 事業主 | 社員総会・理事会 |
契約主体 | 事業主 | 医療法人 |
報酬 | 事業所得 | 役員報酬 |
・医療法人との違い
詳細は割愛しますが、個人事業主の場合は、各種契約の締結・事業所得の確定申告も、全て事業主“個人”となります。そのため、社員総会や理事会で物事決めていき、お互い決められた役員報酬を得て、各契約の主体は法人となる医療法人と異なり、どうしてもどちらかの医師に圧倒的な責任がかかってしまうという点があります。
・医療法人は簡単に設立できるものではない
医療法人を設立するためには、各都道府県(政令指定都市は各自治体)で年2回開かれる医療審議会で認められる必要があります。申請に必要な提出書類には個人クリニックでの実績も見られるため、開業した時点から医療法人で開設をするのは不可能ではありませんが、ハードルは高いです。
つまり、ただの勤務医の場合は(1)の人件費問題をクリアする必要があり、共同の創業者として投資予算を出し合う際には(2)スキーム問題をクリアしていく必要がある、ということです。
3. まとめ
仲の良い医師と一緒に開業することは、メリットもあり、一方でデメリットや課題もあります。本記事の内容を参考に、入念な市場調査や綿密な事業計画の作成を行い、必要性を見極めてください。大切な友人であるからこそ、本人同士と齟齬のないように何度も打ち合わせを重ねてから実行してください。
筆者プロフィール
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