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クリニック開業 医師 事務長 2025.03.26 公開

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平均離職率14%の医療業界の人材戦略は?

診療所経営のための最新の統計データに基いた「数字」と「経営戦略」を掲載。昨今、診療所を取り巻く環境は大きく変化しています。実例も多数掲載しています。今のような激動の時代に健全な経営を考えるための一助にぜひ、ご覧ください。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討 #診療所経営の教科書

診療所経営の教科書 第3版

目次

毎年14%のスタッフが辞めていく

院長にとって悩ましいことの1つは、スタッフの退職ではないかと思います。若いスタッフの結婚・出産、ご主人の転勤といった致し方ない理由ならともかく、スタッフ間のトラブルや、ドクターと相性が合わずにスタッフが辞めていくのは、まるで運営方針そのものを否定されたようで胸が痛くなることも少なくないと思います。

医療業界の離職率はきわめて高い

産業別にみた入職率・離職率
医療業界の求人倍率

まず、知っておきたいことは、全医療機関を平均すると毎年14.2%のスタッフが退職しているという事実です。つまり、スタッフが7人いれば、毎年1人は辞める計算になります。この「離職率」を業種別に見ると、医療業界は飲食業やサービス業などに次いで全業種中6番目であり、運輸業や製造業、情報通信業よりも高くなっています。医療業界の人材の流動化はそれだけ進んでしまっていると言えます。

この原因として、医療関係の専門職は職場に困っていないということがあげられます。表に示した有効求人倍率をご覧いただくとわかりますが、新型コロナが流行する直前の2019年12月時点で、医師・薬剤師は4.9倍、保健師・助産師は2.9倍、それ以外の医療技術者で3.4倍、社会福祉の専門職で3.9倍と、いずれも求職数よりも求人数のほうが多く、職を探せば必ず見つかるという状況にあります。コロナ禍で急激に求人倍率が落ちてはいますが、それでも依然2倍前後の水準にあり、より条件の良い職場を求めて転職する人が絶えない状況は仕方ないとも言えます。

人手不足の時こそ選考はきちんと行う

では、求人倍率が高く、離職率も高い医療業界で、人材不足は致し方ないことと諦めるしかないのでしょうか。筆者の意見は、NOです。

事実、一部の医療機関では、試験や面接で選考を行えるほどの人材集めに成功しているところもあります。また、ベテランのスタッフが長年勤務を続け、欠員補充以外ではスタッフを募集しないところもあります。

こうした差は、なぜ生まれるのでしょうか。筆者は、スタッフ採用時にはあえて選考を行い、一定の人材レベルを維持することと、既存スタッフを大切にして離職を防ぐ仕組みづくりが重要であると考えています。

スタッフの募集と選考は、人手不足の医療機関ではどうしても形骸化する傾向があります。応募があって面接に来ただけで、十分に人材を見極めずにその場で採用を決めてしまうことすらあります。これは、施設基準を確保したり、当面の業務をこなすためにやむを得ないことのように思えます。しかし、こうして問題のあるスタッフを採用してしまうことが、結果として人材の流出をあおり、さらなる人手不足を招いているのです。

人手不足のときほど、ぐっと堪えて、短期間の派遣や紹介で乗り切ることにして、採用する人材の選考はきちんと行うべきです。あまり働かない人材を数多く集めるよりも、優秀な人材を少数でチームにしてしまった方が、業務の効率も品質も上がります。

既存のスタッフを大切にする

そもそもの退職を防ぐために、既存のスタッフを大切にすることも重要です。“大切にする”とは、ただ給料や賞与を引き上げることを指しているのではありません。確かに、給料や賞与を上げると、一時的にスタッフの気持ちは盛り上がります。しかし、お金で引き上げたやる気やモチベーションは、すぐに慣れてしまい、次の引き上げを要求するようになります。

むしろ大事なのは、スタッフ同士のチーム作り、上司(院長や主任)と率直に物事を話し合える雰囲気作り、クリニックの現状や将来向かうべき方向性について常に情報を共有できる仕組み作りです。

スタッフ同士の“チーム”ができれば、お互いを認め、支え合う構造になり、働くことのモチベーションが大きく上がります。また、辞めることを言い出しにくくなるという効果もあります。

スタッフと情報を共有する

上司とスタッフが率直に話し合える場を設けることは、業務効率の向上に寄与し、日頃の小さな不満のガス抜きにもなります。

院内会議においても、スタッフ一人一人の意見を採り上げる機会を作るべきです。一部の中堅スタッフが院長に報告し、院長がそれに対して持論を述べるだけの会議は、「駄目な会議」です。こういう会議を続けていると、スタッフは表だって物を言わなくなり、裏で愚痴や不満を言い、退職を考え始めます。

クリニックの現状や向かうべき方向性は、スタッフにとっては自分達の職場がどうなるかという重要なテーマであり、定期的に情報を欲しています。院長が高齢で後継者を決めない、明らかに経営が傾き始めているのに現状の振り返りも対策も無い、といった状況では、スタッフが逃げ出すのも当然です。

むしろ、経営が厳しいときこそ、素直に現状をスタッフと共有し、ともにクリニックを支えていく姿勢を見せるべきです。このような情報共有ができれば、スタッフもチームの一員となり、退職を考えなくなるでしょう。

このような人材戦略を考える上で、平均離職率14%という数値は、医療機関の運営の状況を判断する重要な指標の1つとなります。14%よりも高い離職率ならば、それは組織の運営や経営上の問題を抱えていることを意味します。14%よりも低い離職率ならば、運営は安定していると考えてよいでしょう。

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診療所経営の教科書 第3版

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