経験者優先採用の落とし穴
初めての開業では経験者を採用したくなる
クリニック開業を目指している先生ならば、「どんなスタッフと一緒に働こうかな」とワクワクした思いを巡らせたことが一度はあるのではないでしょうか。しかし実際に採用面接を始めてみると、何を基準に合否判断していいか分からなくなってしまうことも珍しくありません。そうなると「初めての開業だし、経験豊富なスタッフがたくさんいた方が頼りになりそう…」という考えが頭をもたげ、医療機関での職務経験を持つ人を優先採用してしまいがち。たしかに新規開業するクリニックにおいては仕事の流れもルールもゼロから作り上げていかなければならないため、看護師にしても事務職にしても現場経験のないスタッフだけでは最初からスムーズな運営は困難です。ただ、だからといってオープニングスタッフを転職組やベテランオンリーで固めてしまうような採用のあり方に、何も問題はないのでしょうか?
クリニックに悪影響を及ぼす独善的な経験者も
「経験者」と呼ばれる人の中には、ごくまれに周囲のスタッフに悪い影響を与えるような問題行動をとる人物もいます。例えば、自分勝手な流儀で仕事を進める者。「私は数々の医療現場を渡り歩いてきたベテランだ」という自負や経験則から、クリニックのルールを無視し独善的な判断で行動してしまうのです。さらには、自分の意にそぐわないと院長に食ってかかる人さえも。このようなスタッフが一人でもいると業務の連携が取りづらく非効率的なばかりか、院内の秩序は早々に乱れていきムードもすさんでいってしまいます。
また、そもそもひと言に経験者といっても、それがクリニックにマッチする経験なのかどうか、という問題もあります。たとえば大病院に長期間勤めていたという経歴だけを見て、「何を任せても安心だ」と考えるのは早計でしょう。一人で幅広い業務をこなさねばならないクリニックと違い、大きな病院では看護師も事務職も分業化が進み、「割り当てられた一部の業務しか行なっていなかった」ということも多いにあり得るからです。さらに、経験豊かといっても転職歴が豊富すぎるのも考えもの。短い期間で転職を繰り返しているような人は、いわゆる“トラブルメーカー”かもしれません。転職の理由が納得のいくものかどうか、きちんと面談して確かめましょう。
経験者と未経験者の配置バランスを意識
当然ですが、経験者のすべてに今まで述べたようなリスクがあるわけではありません。ベテランスタッフに完全に寄りかかるような採用方針にこそ、問題の本質があると言えるのです。開業したばかりの先生には難しいことかもしれませんが、「若いスタッフと共に成長しよう」という姿勢も新しいクリニックには必要です。謙虚かつ包容力のある一人のベテランのもとで若手スタッフ達が学びながら仕事を覚えていく、といった理想的チーム編成を目指して、まずは経験者と未経験者の「配置バランス」を意識してみましょう。
なお、頼れる経験者を手っ取り早く見つけたい場合は、人材派遣会社の利用も視野に入れてみると良いでしょう。ただし契約が長期間になるほど、直接雇用の人件費より派遣料金が割高になっていく傾向にあります。開業直後や繁忙期など期間を区切ってお手伝いしてもらう、というような上手な派遣の利用法もあることを覚えておきましょう。
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