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クリニック開業 医師 事務長 2023.04.20 公開

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オンライン資格確認における医療機関のメリット・デメリット

2023年4月に義務化となる「オンライン資格確認」。義務化に伴い、急速に準備が進む中、患者側、医療機関側での課題が浮き彫りになりつつあります。そこで、オンライン資格確認に関する医療機関の本音を探るため、後編では、医療機関目線で導入のメリット・デメリットを比較して考えます。

※本内容は公開日時点の情報です

#業務効率化

目次

受付業務のメリット・デメリット

オンライン資格確認を導入することで、資格確認がリアルタイムで行えるようになり、保険情報の不備による返戻が減少することがメリットと挙げられます。また、保険情報の登録作業も電子カルテ(レセコン)と連携することで自動化され、業務の効率化が図られます。

一方で、医療機関はマイナンバーカードを持ってくる患者が少ないうちは、保険証かマイナ保険証かを確認する作業が追加で発生します。また、患者が顔認証カードリーダーでの認証作業に時間がかかり、その作業に戸惑えば当然サポートが必要となるでしょう。これは受付時間の超過につながります。さらには、現時点では公費には対応していないため、公費の確認・入力は手作業で行わざるを得ません。
つまり、マイナンバーカードを持ってくる患者が少ないうちは、デメリットの方が大きいと感じるのではないかと考えます。

薬剤等情報のメリット・デメリット

薬剤情報および特定健診の情報を確認できることも医療機関のメリットです。しかしながら、薬剤情報についてはレセプトの情報をもとにしているため、直近の内容は確認できず、結局はお薬手帳で確認する必要があります。直近のデータを知るためには、電子処方箋の普及を待つ必要があるのです。

また、特定健診の情報についても、令和2年度の厚労省のデータによると、受診者は2879万人にとどまっており、人口当たりのカバー率が低く、企業健診や人間ドックの情報も得られれば良いと考えるでしょう。

医療機関にとっては情報が不十分なままでは、安心して情報を活用することは難しく、結局は従来のお薬手帳等のアナログな情報に頼るという選択を取らざるを得ないのです。

診療報酬の評価のメリット・デメリット

オンライン資格確認に関する診療報酬上の評価については、2022年4月の改定で「電子的保健医療情報活用加算」が新設され、オンライン資格確認で患者に係る診療情報等を取得した上で診療を行った場合に初・再診料の加算が設けられました。

その後、2022年10月には同点数が廃止され、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設されました。点数の評価もマイナ保険証の場合と通常の保険証の場合の評価が逆転する形となりました。

さらにオンライン資格確認を進めたい政府は、2023年4月から12月の期間は特例として、マイナ保険証と通常の保険証の差を広げる見直しが行われています。

表 オンライン資格確認に関する評価

2022年4月 2022年10月 2023年4月~12月
マイナ保険証 (初)7点(再)4点 (初)2点 (初)2点(再)―
通常の保険証 (初)3点(再)― (初)4点 (初)6点(再)2点

このように診療報酬の評価が頻繁に変更になることは異例のことであり、医療機関はその対応に戸惑うことは当然のことでしょう。頻繁に点数が変わることに対して、「変更を患者さんに説明するのが大変だ」という声も聞かれます。

表 医療機関のメリット・デメリット

メリット デメリット
受付業務
  • ・資格確認がリアルタイムに行える。
  • ・資格過誤に伴う返戻が減少する。
  • ・保険情報の登録作業が自動化できる。
  • ・マイナンバーカードを持ってくる患者が少ない。
  • ・保険証かマイナ保険証かを確認する作業が追加される。
  • ・患者の確認・認証作業に時間がかかる。サポートが必要な場合もある。
  • ・公費が対応していないため、情報登録や資格証の確認作業は残る。
薬剤等情報
  • ・患者の薬剤情報が確認できる。
  • ・患者の特定健診の情報が確認できる。
  • ・直近の薬剤情報が確認できない。(お薬手帳が結局必要となる)
  • ・企業健診の情報は確認できない。
診療報酬
  • ・診療報酬の評価がある。
  • ・マイナ保険証の方が通常の保険証より加算は少ない。
  • ・診療報酬点数が頻繁に変わり、その対応に追われる。

まとめ

オンライン資格確認は、医療機関にとって様々な変更を余儀なくされ、普及のプロセスにおいては混乱を招いているように感じます。医療機関の立場で考えれば、国民に対してマイナンバーカードと健康保険証が一体化する意味を政府が適切に伝える必要があると考えます。患者が進んでマイナンバーカードを医療機関の受診の際に持っていく状況を作り出すためには、現在の方法は不十分であるように感じます。

確かに、オンライン資格確認は、わが国のデジタル基盤を整備するためには大切な政策です。その後の「電子処方箋」や将来的な電子カルテの情報共有を実現するためには、まずは情報をネットワーク上でやり取りするインフラが必要であり、それがオンライン資格確認ネットワークです。そのことにより、医療の質向上につながることをもっと国民にPRすることが大切なのではないでしょうか。

関連情報

著作情報

大西 大輔

MICTコンサルティング(株) 代表取締役
大西 大輔 氏

2001年 一橋大学大学院(MBAコース)卒業
2001年 病院経営コンサルティングファーム「日本経営グループ」入社
2002年 医療IT機器の展示場「メディプラザ」設立
      東京、大阪、福岡の3拠点を管理する統括マネージャーに就任
2016年 独立して「MICTコンサルティング(株)」を設立

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