診療報酬改定とクリニック(3)~オンラインのかかりつけ医~
オンライン診療開始までの期間が短縮
外来・入院・在宅に続く医療提供の一形態として、2018年度診療報酬改定で保険導入された「オンライン診療」。オンライン診療に関する主な診療報酬は、「オンライン診療料」(71点)と「オンライン医学管理料」から移行した「特定疾患療養管理料(情報通信機器を用いた場合)」(100点)、「オンライン在宅管理料」(100点)、「精神科オンライン在宅管理料」(100点)となります。診療報酬の算定例をみると、外来の419点(再診料73点、明細書発行体制等加算1点、外来管理加算52点、特定疾患療養管理料225点、処方箋料68点)に比べて、オンライン診療の場合は239点(オンライン診療料71点、処方箋料68点、特定疾患療養管理料⦅情報通信機器を用いた場合⦆100点)となります。
このように通常の外来診療に比べ低い点数や厳格な算定要件がネックとなり、なかなか普及が進まない状況が続いていました。2020年度改定でもオンライン診療に関する主な診療報酬は残念ながら据置のままですが、対象疾患の拡大やオンライン診療を開始できるまでの期間短縮などの見直しが行われました。オンライン診療関連の主な見直しは3点あります。
慢性頭痛を対象疾患に追加
1つ目は、オンライン診療を開始するまでに必要な対面診療の期間が、3カ月に短縮されました。従来、保険診療でオンライン診療を開始するには、該患者にオンライン診療該当管理料を初めて算定した月から6カ月以上経過、オンライン診療を行う同一医師による直近6カ月間の対面診療の毎月実施、といった要件を満たす必要がありました。その要件が2020年度改定ではそれぞれ3カ月に短縮。オンライン診療を始めたくても、6カ月以上経過しないとスタートできなかったものが3カ月になることで、外来からオンラインへの切り換えもしやすくなったと言えるでしょう。
2つ目は、オンライン診療料の算定対象の見直しです。従来の地域包括診療料や、在宅時医学総合管理料等を算定する糖尿病や高血圧症などの患者に加え、通院が必要な慢性頭痛が対象疾患に追加されました。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛などの痛みにより日常生活に支障をきたす慢性頭痛も算定対象となったのです。
この追加により、慢性頭痛に苦しむ仕事を持つ現役世代にも、オンライン診療の利用が普及する可能性が出てきました。
このほか、「在宅自己注射指導管理料」を算定する糖尿病や慢性肝疾患、慢性ウイルス肝炎患者も対象に追加されました。
30分ルールが施設基準から撤廃
そして3つ目の見直しとして、緊急時の対応について「オンライン診療を実施する医療機関において、おおむね30分以内に対面診察可能な体制を有すること」という、いわゆる“30分ルール”が施設基準から撤廃されました。これにより、夜間や休日などやむを得ず対応できない場合については、受診可能な医療機関を事前に患者に説明しておけばよいことになり、日常的に通院や訪問を行っている患者であれば、通院や訪問に一定の時間を要する場合もオンライン診療の対象としてよいことになりました。
また、現在では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を防ぐために、厚生労働省はオンライン診療について臨時的・特例的取り扱いを行っています。医師が電話などでの診療が可能と判断した場合、受診歴にない患者に対しても初診料(214点)などを算定した上で診療できることが承認されました。
こうした流れからもオンライン診療は、今後さらに普及していくものと考えられます。現在議論が続けられている2022年の診療報酬改定でも、推進すべきという意見が出されています。さまざまな事情からオンライン診療に踏み切れないクリニックにおいても、将来を見すえて一度検討してみてはいかがでしょうか。
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