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クリニック経営 医師 事務長 2024.08.07 公開

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診療所の「立地選び」のポイントは?

立地選び、集患、マーケティングなど、数々の悩みが尽きない診療経営。経営について悩む時間をなるべく減らし、本当に重要であるはずの医業に集中したいと感じる先生は多いはずです。経営に悩む時間を減らし、より医業に集中するためにこそ活用いただきたいのが、「フレームワーク」。今回は一番最初に悩む「立地選び」について、数々の医院経営をご支援してきた公認会計士の大野氏に解説していただきます。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討 #開業地選定 #内装・設計 #診療所経営で悩まなくなる戦略

目次

診療所開業において重要な検討事項となる「立地」。今回はクリニック開業の立地選びにおいて、どのような点を考慮すべきかについてご説明したいと思います。

●この記事でわかること
・立地選びの大前提は、○○
・押さえておくべきポイント

立地選びは、デジタル・マーケティングと一緒に考える時代

昨今の診療所経営に必要なモノは?

立地というと、住宅やオフィス、駅などからどれくらい近いかなど、物理的な距離が重要な要素だと思われるかもしれません。
確かに距離というのは重要なポイントではありますが、現在においては距離と同じくらいに重要要素があります。
それがインターネットやSNSなどでの「デジタル・マーケティング」です。

体の不調を感じた人は、いきなり診療所を訪問するのではなく、まずは症状をネットで検索します。例えば「頭痛 原因」「せき 病名」などのように、なぜその症状が起こっているのかを調べるのです。
そうすることによって、現在の不調がどれくらい深刻なものなのか当たりをつけて、対応を判断します。
そして、医師に相談したほうが良いと判断した場合に、「病名 地域名」などで検索をして、検索結果やまとめサイトの口コミなどから、自分にあったクリニックを選び、診療所のサイトで予約をします。

こうした患者の行動様式を踏まえると、物理的な立地と同様、場合によってはそれ以上にデジタル・マーケティングが重要なことが分かると思います。

繁華街などに行くと、自費診療の美容外科などが同一のビルにひしめき合っているのを目にすることがあると思いますが、これなどは競合他院との物理的な距離よりもデジタル・マーケティングのほうが重要なことを示す例です。

保険診療の場合はそれほどまでにデジタル・マーケティングの優位性があるわけではありませんので、物理的な立地とデジタル・マーケティングを同時に考慮しながら開業の場所を決める必要があるということです。

具体的には「病名 地域名」で検索結果の上位に表示されたり、良い口コミが豊富に掲載されていたり、症例や疾患についてのオウンドメディアを構築していたりする競合他院が存在する地域は避けたほうが良いでしょう。

まずはこの大前提を理解したうえで、以下ではいくつかの視点で立地選びの際に考慮すべきポイントをお伝えします。

都市部か地方か

立地選びにある程度の融通がきく場合、都市部で開業するか地方で開業するかというのも考慮することになるでしょう。
都市部と地方では、以下のようなメリット・デメリットが存在します。

都市部 地方
メリット ・人口が多い
・定期検診のボリューム大
・診療圏が広い
・賃料が安い
デメリット ・競合他院が多い
・賃料が高い
・人口が少ない
・将来にわたって人口が減っていくリスク

これらのメリット・デメリットを総合的に勘案して、立地を選択します。
なお、診療圏の目安については都心部が半径1km程度、地方が半径3km程度と言われており、その中で十分な人口が確保されていることが大前提となります。
「十分な人口」というのは診療所の規模にもよりますが、だいたい2,000人ほどが下限になるのではないでしょうか。競合他院が存在する場合にはその数を乗じて考える必要があります。

オフィス街か住宅街か

また、開業地域が決まっている場合でも、オフィス街に開業するか住宅街に開業するかでは以下のようなメリット・デメリットがあります。

オフィス街 住宅街
メリット ・人流が多く、認知度が上がりやすい
・テナント物件が多いため初期費用を抑えられる
・採用がしやすい
・定期検診や早朝診療のニーズ
・診療圏が広い
・賃料が安い
・患者と長期的な関係を築きやすい
デメリット ・競合他院が多い
・賃料が高い
・認知に時間を要する
・採用が難しい

人流の多いオフィス街が有利なように思えるかもしれませんが、住宅街であれば一人の患者からその配偶者や親、さらには子供や孫と、末永く付き合える可能性があります。
しかしそれは、すでにそういう関係を作り上げている競合他院から患者を奪うことが難しいことの裏返しでもありますので、競合他院の存在や競合他院がどのような顧客との関係性を作っているかなども調査する必要があるでしょう。

その他の留意事項

その他の留意事項としては、

・そもそも診療所開業してよい物件かどうか
・機器の重要や高さに耐えられる物件かどうか
・電気、ガス、水道は医療機器の使用に耐えられるくらい十分に確保できるか
・袖看板などの設置が認められているかどうか
・同じ物件に入っている他のテナントの業種や客層は適切か

といった基本的な事項も確認したいところです。

特に他のテナントの客層については、患者さんがエレベーターやエントランスなどの共有部で出会います。それがクリニックの印象や来院経験につながったりもしますので、必ず確認しましょう。こればっかりは実際に現地に行かなければわかりませんので、平日・休日にわけて午前と午後どちらも視察に行くようにしましょう。
現地視察の際には物件前の人の流れだけでなく、街全体の人の流れ、駅から物件までの経路や所要時間、坂道・階段などのアップダウン、途中の景観なども確認します。
なお、賃料相場は売上の8%を上限目安にするとよいでしょう(地方ではもう少し下げられる余地があります)。内科クリニックの損益分岐売上高を年間6,000万円ほどと想定した場合、その8%であれば月40万円が賃料の上限ということになります。
税理士などの専門家の力も借りながら事業計画をしっかりたてて、それをもとに適正賃料の物件を選定しましょう。

開業の目的を忘れずに

最後にはなりましたが、立地選びにおいて最も重要なのは、そもそもご自身がなぜ開業したいと思ったのか、その目的です。
ワークライフバランスを重視したいと思っていたにもかかわらず、自宅から離れたオフィス街で早朝診療をするのでは開業した意味がありません。
逆に、せっかく開業するのだから稼ぎたいと思うのであれば、郊外でのんびり開業するのも目的と相反しています。
立地選びというと集患や費用のことばかり考えてしまいがちですが、開業の目的を達成できる立地を選ぶというのが、長い開業医人生の中では非常に重要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。
本記事では立地選びの際に考慮すべきポイントを網羅的に挙げてみました。
とはいえ条件を満たす物件が現れるかどうかは時の運のでもあります。
完璧な物件ではなくとも、ある程度の条件を満たすのであれば、足りない部分はマーケティングや接客品質、診療科目、自由診療を検討している場合であれば施術メニューなどその他の要素でカバーするというのも経営戦略です。
ぜひともめぐり合わせを大切に、開業の夢を叶えられる立地選びをしていただければと思います。

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筆者情報

大野 修平 様

大野 修平 様

公認会計士・税理士 セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援を実施。医師向けメディアやセミナーにも多数登壇。

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