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クリニック経営 医師 事務長 2023.09.07 公開

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骨太の方針2023が閣議決定、医療DXに関する工程表などを解説

年末の予算編成に向けて政策課題の方向性を示す「骨太の方針」が2023年も閣議決定されました。2022年の骨太の方針では医療DX推進が重要課題として示されましたが、2023年にはさらに医療DX推進本部が策定した工程表によって、医療DXの推進の確実な実現を目指すことが明記されています。そこで今回は、骨太の方針2023の内容と医療業界への影響について詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#医療政策

目次

医療DXの方針

骨太の方針2023は「加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」が大きなコンセプトになっています。賃上げによる産業構造の改革が掲げられていますが、医療業界にも大きな変化をもたらす改革が示されました。

地域医療構想、医師の働き方改革、医師偏在対策の取り組みや診療報酬改定のみならず、骨太の方針2023では医療DXの推進に関する工程表が示され、2030年を目途に以下の5つの実現を目指すことが掲げられています。

・国民の更なる健康増進を目指す
・切れ目なくより質の高い医療等を効率よく提供する
・医療機関等の業務の効率化を目指す
・システム人材等を有効活用する
・医療情報の二次利用の環境を整備する

これらの課題を実現していくため、2023年4月には医療機関と薬局にオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化され、2024年秋には健康保険証が廃止されてマイナンバーカードと一体化されることが予定されています。また、2030年までには医療情報を全国で共有できるシステムの導入や電子カルテの標準化などを目指す予定となっています。

このように、骨太の方針2023では医療業界のDX化をさらに推進して課題を解決していくことが示されました。

医療DXの推進に関する工程表

骨太の方針2022で設置された医療DX推進本部の第2回が2023年6月に開催され、医療DXを具体的にどのように推進していくか工程表が示されました。

医療DXの推進に関する工程表
▽出典
厚生労働省 | 「医療DXの推進に関する工程表について(報告)」(PDF)

工程表では、マイナンバーカードと健康保険証の一体化、情報共有基盤の整備、共有が可能な医療情報の拡大、電子カルテの標準化などのほか、自治体と医療機関や介護事業所間の連携、診療報酬改定DXの推進が盛り込まれています。

いずれもすでに施行は開始されていますが、マイナンバーカードとの一体化による健康保険証の廃止は2024年秋に予定されています。また、情報共有基盤の整備として行われている電子処方箋は2025年春までにおおむね全国の医療機関と薬局で導入される見込みであり、電子カルテ情報共有サービスの整備も今後進められていく予定です。

自治体と医療機関や介護事業所間の連携に関しては、現在業務運用の見直しやマイナポイント申請サイトの改修などを行っており、2024年春から順次実施される見込みです。診療報酬改定DXに関しても、現在のところマスタ(マスターデータ)の開発・改善、電子点数表の改善を行っており、2025年春前には提供が開始されます。

それぞれ具体的にはどのようなことが行われるのか詳しく見てみましょう。

健康保険証の廃止

マイナンバーカードと健康保険証の一体化は医療DXの基盤とされており、骨太の方針2023の工程表の中で最も早く完遂することが目指されています。健康保険証の廃止は2024年秋に予定されており、先駆けて2023年春には医療機関と薬局にオンライン資格確認等のシステムの導入が義務化されました。

今後、マイナンバーカードと保険証を一体化することで健康や医療に関する全てのデータを閲覧できるようになり、個々に適した医療を受けることが可能になると考えられています。また、オンライン資格確認の導入に伴い、受付での患者情報入力の業務を省くことができるなど、コストの削減や情報の取り違えによるヒューマンエラーを防ぐことにもつながるのも大きなメリットの一つです。

なお、健康保険証の廃止までには医療機関や薬局だけではなく訪問診療や訪問介護、柔道整復師、あんまマッサージ師などの施術所などでもスマホからのオンライン資格確認の仕組みを取り入れる予定です。さらに2024年春までには生活保護受給者の医療補助もオンラインで資格確認できる仕組みの導入を予定しています。

全国医療情報プラットフォーム

全国医療情報プラットフォームとは、オンライン資格確認等のシステム導入を拡げていくことで保険・医療・介護の情報を全国で共有できるサービスのこと。2025年春には運用を開始して順次拡大されていく予定です。

全国の医療機関と薬局とつながって電子カルテ情報などを共有できる仕組みが構築されれば、個々の患者さんにより適した医療が可能であると考えられています。また、最終的には自治体や介護事業所とも連携を行って、介護、予防接種、母子保健、検診などの情報を共有できるシステムの構築が目標となっています。

これらの構築にあたっては、保険者、医療機関、薬局、自治体、介護事業所などが自身の持つ情報を提供することになりますが、共有された情報をどのように活用していくか検討する必要があります。また、極めてプライバシー性が高い情報を扱うため、共有可能な医療情報の範囲の選定や拡大の方法についても議論される予定です。

電子カルテの標準化

2023年秋ごろから医療情報化支援基金の活用による電子カルテ情報の標準化を普及する取り組みが開始されます。2025年初めには全国の標準型電子カルテの提供を開始されます。

これらの取り組みはまず初めに診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果などの文書と傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌情報、検査結果、処方内容などの情報の共有を進めながら情報の範囲を拡大していく予定です。これらと並行して標準型電子カルテの整備が行われますが、現在電子カルテを導入していない医療機関にも支援を行いながら2030年にはおおむね全国の医療機関での導入が目標として示されました。

医療機関ではデータの標準化や外部連携のための改修が必要となるため、大きなコストがかかる場合もあります。また、情報のセキュリティー対策も必要であり、電子化が進んでいない医療機関では導入のためさまざまな負担が生じます。本格稼働に間に合うよう、できるだけ早めに対策を講じることが大切です。

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電子カルテを導入するメリット・デメリットとは?
医療DXの実現に向けた電子カルテ情報の標準化

診療報酬改定DX

診療報酬の改定は2年に一度の頻度で行われます。従来であれば診療報酬の改定が行われるとレセプトコンピューターのシステム改修やメンテナンスなどを短期間で行わなければならず、多くのコストが必要でした。

骨太の方針2023では、限りある医療資源を有効活用するために全国で統一した電子計算プログラムとなる共通算定モジュールの開発を行い、2026年に本格的な提供開始が目指されています。それに伴い、2024年度からは診療報酬改定時期を4月1日から6月1日に後ろ倒しすることが閣議決定されました。また、さまざまなコスト削減のために共通算定モジュールを備えたレセプトコンピューターを開発して標準型電子カルテと一体化することも掲げられており、医療機関のシステムを抜本的に改革していくことになります。さらにそこから得られる情報を感染症の危機対策時などに二次利用することも期待されています。

医療機関に求められる対応

骨太の方針2023では、健康保険証の廃止から始まり、医療情報を保険者、医療機関、薬局、自治体、介護事業所などが共有できるシステム作りを目指すことが示されました。それに伴い電子カルテの標準化や診療報酬改定DXなども盛り込まれ、2030年を目途におおむね全国の医療機関に新たなシステムの導入をしていく予定です。

医療機関にはシステム導入にあたって人的・経済的なコストがかかることになりますが、電子カルテ未導入の医療機関などには必要な支援策もあります。支援をうまく使いながらスムーズにシステム導入ができるよう、どのような制度があるのか、どのようなコストやスペースが必要なのか、あらかじめシミュレーションしておくとよいでしょう。

特にこれまで情報の電子化をしてこなかった医療機関は紙媒体の情報を電子化する手間も生じます。カルテなどをPDF化するためのコストなども試算しておくことが大切です。紙カルテの電子化には厚生労働省が定めるルールもありますので、見直してみましょう。

また、多くの患者情報を電子化して扱うことになるため、医療機関にはシステムの厳重なセキュリティー対策が求められます。十分なシステムを構築するためには、信頼できる業者を選定して的確な助言を受けることも大切です。

これらの医療DXが進むことで、これまで必要だった受付業務や各機関への連絡業務などが簡素化されます。医療機関全体のコスト削減につながりますが、医療DXの推進によって新たに生じた医療資源をどのように活用していくか長期的な計画を立てていくことも大切です。

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早めの準備で、スムーズなシステム導入を

骨太の方針2023では医療DXの推進が課題の一つとして取り上げられ、目標とするスケジュールを明記した工程表が示されました。医療DXの基盤でもある健康保険証の廃止に向けた改革はすでに始まっており、2024年秋にはマイナンバーカードに一体化される予定です。また、全国の各機関で医療情報を共有できる医療情報プラットフォームの確立、電子カルテの標準化、診療報酬改定DXなども盛り込まれており、2030年ごろまでに順次全国に展開していく予定となっています。

これらのシステムを導入するには多くのコストや労力が必要です。早い段階から必要な支援を受けて目安とされる時期までにスムーズな導入ができるよう、今回ご紹介したさまざまな備えをしておきましょう。

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