【レポート】令和5年度薬価改定総括 〜今後への影響は〜
メディコムでは薬剤師の方や薬局関係者の方を対象に、2023年1月20日に「令和5年度薬価改定総括 〜今後への影響は〜」をテーマとしたセミナーを開催いたしました。
講師には、製薬業界のメディアで著名な株式会社ミクスのデスクを務めている望月英梨様にご講演いただき、講演後には薬局団体の方々からのご質問もたくさんいただき非常に盛り上がった1時間半となりました。セミナーで司会進行を務めていただいた、ドラビズon-line編集長の菅原さんに振り返っていただきました。
【講師】株式会社ミクス デスク 望月 英梨 様
【タイトル】令和5年度薬価改定総括 〜今後への影響は〜
令和5年度薬価改定が大きく動いた1週間
「与党の会合を立ちっぱなしで耳を澄まして聞いていた」――。
2022年12月12日(月)から16日(金)まで、大きく薬価改定が動いた1週間について、セミナーの冒頭、望月記者はそう語りました。いかに望月記者が薬価改定の決着までを密着取材していたかがわかる言葉です。
今回、講師においでいただいたのは、いわゆる業界紙記者である株式会社ミクスでデスクをお務めになっている望月英梨さんです。望月さんは、最も早く今回の薬価改定の対象範囲の決着を報道した記者です。
その望月さんからみて、今回の薬価改定はどのように映っていたのか、臨場感ある解説をいただきました。
業界自らがエビデンスを示していくことの重要性
そんな望月さんが強調したのは、単に「平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目を対象」といった改定結果だけに注目するのではなく、そこから発せられているメッセージを感じることだと指摘します。
例えば今回の薬価改定議論においては、比較的早い段階から日本ジェネリック製薬協会があるデータを提示していたことを紹介。ジェネリック医薬品において、赤字である品目がいかに急速に増えているかのデータです。これは望月さんが2022年6月末に沢井製薬株式会社社長の澤井光郎氏にインタビューした時に提示があったものといいます。
その後、厚労省の有識者検討会」(「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」)などでも資料として提示され、「下支えして欲しい」という要望が業界全体の共有意識となっていったと指摘します。中医協の支払側委員から「短期的な財政措置を検討する必要があるのではないか」とのコメントを引き出すまでになりました。
望月さんは、「業界が自らエビデンスを示していくことが重要」と指摘します。このような経緯が薬価改定の動きを左右していたわけです。
今後に残したメッセージとは
望月さんは、最も重要なことは当然のことではありますが、「国民に安定的に薬が届くこと」であり、そのための不採算品目への補填は理解が得られやすかったと分析します。
一方で、基本的には企業のGMP違反に端を達した供給問題が、ついに国民に負担をお願いする事態になったことだと指摘しました。
今回、不採算品の再算定においては「安定供給を製薬企業に求めるとともに、そのフォローアップを実施する」との文言が付加されていることを挙げ、「安定供給という製薬企業の責任をはっきりと問うたもの」とし、「重い十字架が課せられたのではないか」と述べました。
そのほかの講演内容
上記は特に「不採算再算定の特例的対応」に関する望月さんの解説をご紹介しました。
そのほかにも下記のような盛り沢山の内容が話されました。
・薬価はあくまで社会保障制度の一部。コロナ対応を含めた社会保障の昨今の状況を紹介
・薬剤費の昨今の伸びは。伸びていないのか。
・高齢者増加だけにとどまらず、これまでにない“変数”の増加がある。「物価高騰」「エネルギー価格高騰」など。
・薬価改定の柱となったイノベーションの評価はどのように決着したのか。その背景。
・今後の製薬企業のビジネスモデル変化は。
・「医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の対応」については、どのような位置付けか。
※講演後には薬局関連団体の薬剤師の方々から望月さんへの質疑応答もありました。