【レポート】調剤の外部委託、私はこう考える 〜周辺の薬局への影響を含めて〜
メディコムでは薬剤師の方や薬局関係者の方を対象に、2022年10月25日に「調剤の外部委託、私はこう考える〜周辺の薬局への影響を含めて〜」をテーマとしたセミナーを開催いたしました。
講師には、株式会社サンキュードラッグ 代表取締役兼CEOの平野健二様を迎え、講演後には視聴者の方からのご質問もいただき非常に盛り上がった1時間半となりました。セミナーで司会進行を務めていただいた、ドラビズon-line編集長の菅原さんに振り返っていただきました。
【講師】株式会社サンキュードラッグ 代表取締役兼CEO 平野 健二 様
【タイトル】調剤の外部委託、私はこう考える 〜周辺の薬局への影響を含めて〜
アメリカの“調剤工場”、対象は慢性疾患であり、「リードタイム」は問題にならない
「“外部委託”といった時に、それぞれがイメージするものが違っているのではないか」――。
そんな投げかけから始まった平野氏のセミナー。平野氏のこのセミナーのゴールが、各人における外部委託のイメージを1つにして、その上でその是非を議論することにあることをうかがわせました。
セミナーの冒頭で、平野氏はアメリカの“調剤工場”の様子のVTRを流してくれました。慢性疾患の処方に関して、次回服用の1週間ほど前に患者の自宅に届く形式になっているといいます。ここで「慢性疾患が対象」というのは1つのポイントになります。アメリカでは処方のうち、30%以上がリフィル処方となっているということで、そのことも調剤工場の活用がしやすくなっている背景になっているといえます。
ちなみに、この“調剤工場”では、500㎞まで離れた店舗のエリアまで配送対象となっているとのことでした。ここで1ついえることは、日本の議論で提起されている都道府県単位といった配送距離や「リードタイム」についてはアメリカでは問題視されていないということです。
加えて、“調剤工場”は運営主体はリアル店舗を持っているドラッグストアチェーンであることもありますが、PBMといった医療用医薬品について保険会社と協議する団体であることもあるといいます。そして、その場合、工場自体の持ち主は、もともと医薬品の在庫を持っている卸企業であることが少なくないといいます。
工場では、薬剤師は処方された薬剤の写真と、実際に包装された薬剤の写真によって監査業務を行うほか、電話による患者応対をしているといいます。
注目すべきは調剤工場活用によるコストは、通常の調剤運用フローにかかるコストに対して4分の1で済むということです。
日本でも処方において慢性疾患の比率は高い
平野氏は、日本の状況はどうなのか、ということについても言及しました。自社で応需している処方箋を分析したところ、50%程度が慢性疾患だったということです。
日本の実現性へのイメージについては、「多くの薬局が協力して委託する形になるのではないか」と指摘しました。これはより多くのボリュームによって、コストダウンのメリットが発生するからです。
一方、こうした調剤工場のようなものが日本に登場することを避けられるのか、については、平野氏は難しいのではないかとの見方を示しました。医療財政がひっ迫することがその背景です。皆保険の持続性を考慮しても、それに貢献できるのであれば、新たな取り組みを受け入れることも選択肢ではないかとの考えを示しました。
また、委託元となる薬局において急性疾患の処方箋にかかわる調剤は残るものの、さらなる処方箋枚数を応需する体制にシフトしていなければ経営上の困難さも起こる可能性があると指摘しました。
日本での今後の課題
今後の課題について、平野氏は、アメリカのテクニシャン制度を取り上げます。テクニシャンと薬剤師の違いは“判断”があるかどうかだといいます。つまり、日本の外部委託の議論においても、受託薬局は判断のない正しい調剤だけを行い、委託薬局はその処方が患者に最適化を判断するという役割分担になるのではないかと話します。