クリニック経営における収支・事業計画について
5.経営指標について
経営においては、さまざまな指標のデータを取得し、組織の状態を見極めることが大切です。クリニック経営でも、「収益(患者数/単価)」、「費用」、「医療の質」のカテゴリー別に指標を定め、定期的なモニタリングを行います。
このような指標は、目標を管理するうえで非常に有効です。ここでは、「新患者数の増加」という目標を例に、管理のフレームワークを確認していきましょう。
設定した目標を達成するために、特に重要な要素を明らかにします。これを重要成功要因と呼びます。新患数を増やすには、ホームページ作成や診療内容の見直し、ブランド力向上などの成功要因が挙げられます。
次に、成功要因ごとに具体的な行動に落とし込みます。「ブランド力向上」であれば、「医療の質の向上」といった行動が考えられます。これを「成果行動」と言います。
それぞれの成果行動を管理するため、鍵となる成果指標を設定します(重要成果指標)。この例では、クレーム件数や高評価のレビューの件数を重要成果指標として設定し、目標の達成度を評価していきます。
6.患者が溢れるクリニックの特徴
多くの患者さんに選ばれるクリニックには、共通する特徴があります。
通いやすいロケーションにあり、診療している曜日・時間がライフスタイルにマッチしているという利便性。
医師やスタッフの応対がよく、設備も充実しているという快適性。
また、他の病院やクリニック、あるいは介護施設・企業などとの連携強化が実現されており、紹介のルートが確保されていることも、患者数の確保においては重要です。
セミナーや営業活動を通じてクリニックの認知度を高め、クチコミやインターネット上の評価を向上させていく取り組みも、今後のクリニックの展開には欠かせません。
このような特徴を自院が備えているか、改めて評価を行い、まだ着手できていない項目や取り組みが不足する項目を明らかにしましょう。自院の弱点を把握したら、ガバナンスの体系を活用してそれぞれ目標を設定し、パフォーマンスを管理します。
7.利益を出す
「クリニックは医療の品質こそが重要であり、利益を重視すべきではない」――このようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、利益は患者さんからクリニックへの評価の証です。利益を確保できなければ、医療の品質を向上させるための投資を行えず、診療内容の拡大もままなりません。
「利益は患者評価の証」という意識を、院長だけではなくスタッフ一人ひとりが持つよう促しましょう。
クリニックの収益は、患者数×単価が基礎となります。来院経路を拡大することを目指し、他のクリニックや施設などとの連携を強化して、収益基盤を広げるよう努めましょう。収益を確保する一方で、変動費を抑制できれば利益は確実に増加します。
経営にあたっては、医業に関わる収益・費用のほか、借入金などの利息に関わる収支にも注意する必要があります。こうした医業外の収益、費用も反映した利益が経常利益です。さらに、例外的に発生する特別収益/損失と税金の支払いを反映して、当期利益を求めます。
純資産が増えれば、銀行からの信頼も増し、新たな投資につなげられます。また、継承を行ううえでも有利でしょう。
最後に
ガバナンスを意識してマネジメントを行えば、成果は着実に上がります。利益を確保することで医療の品質やクリニックの診療内容が充実するばかりではなく、開業から継承に至るクリニックのライフサイクルの見通しを立てられます。
今回ご紹介したガバナンスの体系をしっかりと理解することが、その第一歩となります。マネジメントを強化し、確実に利益を出すよう意識して、クリニックとしてのレベルアップを目指しましょう。
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