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お薬手帳 薬剤師 薬局経営者 2022.12.20 公開

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電子お薬手帳を導入する薬局側のメリットとは?

患者さまが、いつ・どこで・どんなお薬を服用しているかを経時的に確認できる「お薬手帳」。従来はその名の通り、手帳型をした紙タイプのものが主流でしたが、近年スマートフォンで扱える「電子お薬手帳」を利用する患者さまが増えてきています。
今回の記事では、電子お薬手帳の必要性や導入状況、メリット・デメリットについて解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#機器選定ポイント #業務効率化 #医療政策

目次

電子お薬手帳とは?

電子お薬手帳は、紙のお薬手帳の代わりに、スマートフォンのアプリで患者さまの服薬情報を管理できるものです。医師や薬剤師が電子お薬手帳を使用して患者さまのお薬の重複や飲み合わせ、アレルギー歴や副作用歴などを事前に確認することで、より安全にお薬を服用してもらえるようになります。

電子お薬手帳の基本的な活用方法

患者さまが電子お薬手帳のアプリに初回登録する際、下記のような基本情報を入力します。

・氏名
・連絡先
・現病歴や既往歴
・アレルギー
・副作用の既往歴
イメージ

服薬情報の記録については、薬局が導入しているシステムと患者さまのアプリが連携している場合、自動で行われます。薬局のシステムとアプリが連携していないもしくは薬局がシステムを導入していない場合は、領収書などにQRコードを印刷し、アプリで患者さまに読み取ってもらうことで情報が追加されます。
また、QRコードが出せない場合には、患者さまに手入力で記録してもらうことも可能です。

服薬情報をアプリに保存しておけば、次回以降、医師や薬剤師は患者さまの許可を得たうえで、それらを確認できるようになります。

患者さまが使用するメリット

患者さまが紙のお薬手帳ではなく、電子お薬手帳を使うメリットとしては以下のような点があげられます。

・スマートフォンは貴重品として外出先へ携帯する場合が多く、緊急時でも医療機関に提示することができる
・情報はデータ化されてクラウド上に保存されるため、紛失する心配がない
・家族全員分の服薬情報を一括管理できるため、何冊もお薬手帳を持ち歩く必要がない
・処方箋をあらかじめ薬局に送信したり、服薬時間を通知するアラーム機能がついていたりなど、副次的なサービスも利用できる

とくにお子さまの情報をご両親の電子お薬手帳にまとめて保存できるのは便利でしょう。

開発された経緯

電子お薬手帳の開発が進められるきっかけとなったのは、2011年に起きた東日本大震災です。
当時薬を必要としていた避難者のうち、お薬手帳を持っていた方へは、処方をスムーズに実行することができました。こうした経緯があり、万が一に備えてスマートフォンなどに入れて利用できる電子お薬手帳の普及が進められることになったのです。

この出来事から、避難時でも多くの方が携帯するスマートフォンに記録しておける電子お薬手帳の普及が拡大したわけです。

電子お薬手帳システム導入のメリット・デメリット

電子お薬手帳の普及に伴い、患者さまのアプリと連携できる専用システムを導入する薬局が増えています。薬局側には、以下のような導入におけるメリット・デメリットがあります。

メリット

(1)薬局内の専用システムで服薬情報が閲覧できる
システム非導入の場合、服薬情報を確認するには患者さま自身のスマートフォンで閲覧するしかなく、薬剤師の閲覧は投薬時の短時間に限られてしまうケースが多くなります。

電子お薬手帳のシステムを導入していれば、アプリに登録されている患者さまの情報を、薬局側で取得できます。システムとアプリが連携していない場合でも、来局した患者さまにQRコードを提示してもらい読み取ることで確認できます。

システム上で患者さまが服用中のお薬の添付文書を確認できるほか、調剤前に重複投与・副作用の既往がないかなどを確認でき、調剤業務の効率化・時間短縮につながります。

(2)処方箋の事前送信機能の活用がサービス向上につながる
電子お薬手帳システムには、「処方箋事前送信機能」がついたものもあります。これは来局前に患者さまから処方箋データを送信してもらい、事前に内容を把握できるというものです。

これにより薬局側は余裕をもって調剤業務に取り組めるうえ、患者さまの待ち時間も短縮できます。

処方箋事前送信機能は、患者さまからのニーズが高いサービスの一つです。同じ薬局で調剤を受ける「導線」として、かかりつけ機能の強化にもつながるでしょう。

(3)患者さまのアフターフォローができる

電子お薬手帳のアプリによっては、メッセージ機能や服用を知らせるアラーム機能がついているものをあります。これにより、遠隔で服薬状況を確認することやお客さまからの相談を受けることも可能です。

来局後のフォローアップにより、関係性を構築することで、再来訪が期待できるでしょう。

デメリット

(1)患者さまが電子お薬手帳を希望しない場合がある
電子お薬手帳への基本情報の入力やQRコードの読み取り・提示は、患者さま自身でスマートフォンを操作して行う必要があります。高齢の方やスマートフォン操作を苦手とする患者さまの場合に、システムを活用してもらえない可能性も懸念されるでしょう。

(2)システムの導入から活用までには時間やコストを要する
薬局が電子お薬手帳システムを導入するには、必要な設備を購入する費用やその後のランニングコストがかかります。また、患者さまにシステムを利用してもらうための周知活動に加え、紙の手帳から電子お薬手帳に移行してもらうための啓蒙活動が必要です。

なお、以前は下記のようなデメリットがありました。

・仕様やフォーマットの異なるお薬手帳が乱立し、データが閲覧できず一括管理できない
・患者さまの個人情報に関するセキュリティ対策に不安がある

しかし現在では、保健医療福祉情報システム工業(JAHIS)により標準データフォーマットが作成され、日本薬剤師会が提供する「e薬Link」を使ってデータ閲覧が相互にできる仕組みができて改善されています。

また、異なるサーバー間でも、情報の一括管理ができるようになりました。
入力した情報は個人情報を分離したうえで、クラウドサーバーに記録するなどの対策が取れるようになったのです。

薬局における電子お薬手帳の現状

システム導入のメリット・デメリットをふまえて、電子お薬手帳システムの普及率などを含む現状について解説していきます。

薬局・医療機関への導入状況

厚生労働省『電子版お薬手帳適切な推進に向けた調査検討会報告書』では、日本薬剤師会の電⼦お薬手帳相互閲覧サービス(e薬Link)に対応している運営事業者31団体を対象にした調査において、導入している薬局・医療機関の総数が報告されています。

・薬局導入数 19,242 件
・医療機関導入数 163件

一方、2022年3月に発表された厚生労働省『電子版お薬手帳に関する検討状況について』での報告によると、薬局の電子お薬手帳導⼊率は約半数にとどまっています。

必要なコストとその回収方法

薬局が電子お薬手帳を導入する際に必要な設備としては、次の4つがあげられます。

・インターネット回線
・レセコン
・パソコン
・QRコードリーダ

前述の調査結果によると、導入にかかる費用は平均0.2万円(最小値:0円、最大値:0.5万円)、運用にかかる費用(ランニングコスト)は平均5.1万円/年 (最小値:0円、最大値:14.6万円)となっていました。

さらに、「投資・運用コストが回収できる」または「できる見込みがある」と回答している薬局・医療機関は、導入済みの機関全体の過半数を占めていることもわかっています。

▽参考サイトはコチラ
厚生労働省『電子版お薬手帳適切な推進に向けた調査検討会報告書』
厚生労働省『電子版お薬手帳に関する検討状況について』

電子お薬手帳の今後の展望は?

電子お薬手帳は、次にご紹介する制度やシステムとの連携によって、今後さらに活用の場が広がっていくと予想されます。

電子処方箋との連携

2023年1月から、オンライン上でやり取りが可能な「電子処方箋」の運用が開始されます。薬局はオンライン資格確認等システムを利用することで、患者さまの同意のもと、全国の医療機関・薬局における直近~過去3年間の処方歴・薬剤情報を確認できるようになるのです。

電子お薬手帳を電子処方箋と連携すれば、服薬サポートのさらなる強化が期待できるでしょう。患者さまにとっても、処方箋の受け取り・閲覧から薬局へ持参するまでをすべてオンライン上で完結できるため、利便性が高まります。

下記のサイトでは、電子処方箋に関する利用の流れや導入メリット・デメリットなどを詳しく解説しています。ぜひチェックしてみてください。

▼関連サイトはコチラ
『電子処方箋サイト』

マイナポータルとの連携

2024年秋で健康保険証を原則廃止し、医療情報を「マイナンバーカード」に集約する方針が政府より発表されました。薬局側は、マイナンバーカードを利用することで、マイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)上にある患者さまの(2021年9月以降の)薬剤情報とともに特定健診などの情報も取得できるようになります。

患者さまは電子お薬手帳とマイナポータルを連携させれば、自動的にお薬手帳に情報を登録できるようになります。

▼関連サイトはコチラ
オンライン資格確認の義務化と保険証廃止による医療現場への影響

オンライン服薬指導での利用

2020年から薬局によるオンライン服薬指導が可能になり、利用者数が増えています。
患者さまとの関わりがオンライン上で完結する場合、紙のお薬手帳だと情報を取得することが困難です。オンラインの需要拡大に伴い、電子お薬手帳の活用が推進されると予想されます。

一方で、普及にはまだ課題も

電子お薬手帳のシステムを導入している医療機関の数は伸び悩んでおり、メリットとなる機能を周知するなどのさらなる普及活動が必要です。たとえば「患者さまの持参薬の確認」など今まで目視確認・手入力で行われていた作業負荷は、システム導入によって軽減されるでしょう。

また、医療機関と薬局間で薬剤情報が共有できれば、重複投薬・ポリファーマシー対策にもつながります。

また、現在の電子お薬手帳利用者の過半数は40歳代未満で、高齢者の割合は低い傾向にあります。今後は、高齢の患者さまが利用しやすいように働きかける必要があるでしょう。

電子お薬手帳システムには多くのメリットがある

電子お薬手帳の活用が推進されることで、薬局・医療機関・患者さまには多くのメリットがもたらされます。今後は薬局の役割がすべてオンラインで完結することが主流になると考えられるため、電子お薬手帳のシステム導入やセキュリティの強化などの必要性が高まっていくでしょう。

導入にあたっては、電子薬歴との「システム連携」が大きなカギになります。電子お薬手帳と合わせて薬歴を見直し、患者満足度の向上と業務効率化につなげましょう。

メディコムの電子お薬手帳「ヘルスケア手帳」には、処方箋の事前送信やフォローアップ・メッセージ機能、服用アラーム機能も搭載。患者さまへの手厚いアフターフォローが可能になり、再来訪率の向上が期待できます。電子薬歴「Pharnesシリーズ」では、QRコードの読み取りと自動記録によって、業務効率化が実現できるのであわせてご使用いただくと良いでしょう。

ぜひ一度、メディコムにご相談ください。

▼関連記事はコチラ
ヘルスケア手帳

監修者情報

上村 直樹(かみむら なおき)

薬剤師、薬学博士

上村 直樹(かみむら なおき)

株式会社ファーミック 富士見台調剤薬局 代表取締役
東京理科大学薬学部 嘱託教授
(公社)東京都薬剤師会 相談役 (元副会長)
(公社)神奈川県薬剤師会 倫理審査会 会長
(公社)日本薬剤師会 (元理事)

主な著書は、「医薬品情報学」(化学同人)、「患者に説明できる調剤報酬」(南江堂)、「謎解きで学ぶ 処方解析入門」(薬ゼミファーマブック)、新ビジュアル薬剤師実務シリーズ「薬剤師業務の基本」「薬局業務の基本」 (羊土社)、「OTC 薬入門」(薬ゼミファーマブック)など、その他多数。

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