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クリニック開業 医師 事務長 2023.06.22 公開

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医師国保に入るべき?国保や健康保険との違いとメリット・デメリットをご紹介

医師国保とは、自治体や大学の医師会に加入している医師と家族、従業員が利用することができる保険のことです。正式には医師国民健康保険組合と呼ばれ、一般的な国保や健康保険とは異なる仕組みや決まりがあります。そこで今回は、医師国保のメリットとデメリットについて国民健康保険(国保)や健康保険と比較しながら詳しく解説します。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業直後の悩み #開業検討 #労務管理 #マネジメント

目次

医師国保とは?

医師国保は各自治体や大学の医師会が運営する保険制度です。各医師会に所属する医師(従業員5人未満の個人開設開業医など)と家族、従業員が加入することが可能です。加入できる従業員は医療職に限らず医療事務やパートタイマーでも加入可能ですが、加入するには労働時間や労働日数などに一定の条件があります。

また、医師国保は原則的に世帯単位で加入する必要があります。同一世帯であれば、他の公的医療保険に加入している家族を除いて全員が加入しなければなりません。

医師国保と国保、健康保険との違いは?

医師国保は、上述したように医師会に所属する従業員5人未満の個人開設開業医とその家族、従業員が加入することができる保険制度です。一方、国保は一般的な自営業者が加入する保険であり、健康保険は会社員などの事業所に雇用されている労働者が加入する保険です。

なお、開業医であっても従業員が5人以上や医療法人の場合は、協会けんぽなどの健康保険に加入することが義務付けられています。また、従業員が5人未満の開業医であっても必ずしも医師国保に加入しなければならないわけではなく、通常の国保などに加入することも可能です。

医師国保への加入を検討している方は、医師国保には国保や健康保険とどのような違いがあるのか詳しく見てみましょう。

加入条件の違い

医師国保は国保や協会けんぽなどの健康保険と加入の条件が異なります。まず、医師国保は自治体や大学の医師会に所属している医師やその家族、その医師に雇用されている従業員であることが第一の条件となっています。

また、医師会に所属している医師であれば誰でも加入できるわけではなく、従業員が5人以上の開業医や医療法人の開業医と家族、従業員は協会けんぽなどの健康保険に加入しなければなりません。健康保険は会社員などの被雇用者が加入する保険制度であり、5人以上の従業員が所属する事業所は医療機関も例外ではなく健康保険への加入が義務付けられているのです。さらに、従業員が5人未満であっても医療法人や一般社団法人などを設立後には医師国保に切り替えできないこともあるため注意が必要です。

一方、国保は自治体が運営する保険制度であり健康保険やその他の保険に加入していない自営業者などが加入することができます。

保険料の違い

一般的な国保や健康保険は、収入に応じて加入者が負担する保険料が決まります。収入が高くなると保険料も高くなるため負担が大きくなりますが、医師国保は収入に関係なく年齢区分や加入者の種別によって保険料が同一に定められるのが特徴です。

また、医師国保と国保は扶養家族にも保険料がかかるため同一世帯の加入者が多い場合はその分負担も増えます。一方、健康保険は扶養家族の収入などの条件によっては保険料が免除されるため、扶養家族が増えても保険料の世帯負担は変わりません。

自家診療分の保険請求の違い

医師や家族が勤務先の医療機関で診察や治療を受けることを「自家診療」と呼びます。国保や健康保険であれば自家診療も保険請求できますが、医師国保は自家診療での保険請求が認められていないのが特徴です。

ただし、自家診療による薬剤の請求は可能な医師国保もあります。それぞれの医師会によって自家診療に関するルールは異なりますので、自家診療を受ける予定がある場合は医師会に問い合わせておくと安心です。

▽参考記事
近畿厚生局『保険診療の理解のために(医科)』(PDF)

医師国保に入るべき?加入のメリット・デメリット

医師国保は国保や健康保険と異なる点がいくつかあります。では、加入する場合にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

加入のメリット

医師国保の大きな特徴の一つが収入によらず保険料が一定であることです。東京都医師国民健康保険組合を例に挙げると、加入する医師(第1種組合員)は32,500円、従業員や家族(第2種組合員)は18,500円が月々の医療保険料として定められています。国保や健康保険は収入によって保険料が高くなるため、高収入な医師にとって医師国保の保険料は割安となります。

また、健康保険のように従業員の保険料を折半する必要がないためクリニック側の負担が少なくなることもメリットの一つです。さらに、医師国保には一般的な医療保険と同じく医療費の一部負担制度や各種検診を助成する制度、高額療養費の一部払い戻しや出産一時金の支給もあります。

▽参考記事
東京都医師国民健康保険組合『保険料について』

加入のデメリット

医師国保は収入に関係なく保険料が一定であることが高収入な医師にはメリットとなる一方、クリニックの経営難などによって収入が減ったときは保険料が割高になる可能性があります。さらに、医師国保は他の健康保険に加入している家族を除いて同一世帯の扶養家族全員が加入する必要があります。そのため、扶養家族の保険料がかからない健康保険と比べると扶養家族が増えるほど保険料の負担が大きくなるなどもデメリットといえます。
さらに、医師国保は従業員の保険料を折半しなくてよいため見かけ上は負担が少なくなるように思えますが、加入できる保険の種類を就職の条件の一つとするスタッフも少なくありません。保険料の自己負担が増える医師国保を避けるスタッフもいるため、優秀な人材を採用できる機会を失う可能性があります。

また、医師国保は自家診療分の保険請求ができません。ご自身が勤務する医療機関での診療は自費になってしまうため、他の医療機関を受診する必要があります。

医師国保の制度を理解して総合的に判断を

医師国保は自治体や大学の医師会が運営する保険制度です。医師会に所属することが加入の条件であり、従業員5人以下の個人開設開業医とその家族、その医師に雇用されている従業員が加入することができます。

医師国保は保険料が収入に関係なく一定に覚められているため、収入が高い医師ほど保険料の負担が割安になります。また、医療費の一部負担や高額医療の一部払い戻し、出産一時金などの制度も利用できるため医療の必要性がある扶養家族がいる場合にもおすすめです。
一般的な健康保険と異なり、従業員の保険料を折半しなくてよいため保険料の負担が減るのもメリットと言えます。

一方で、医師国保は減収した場合に保険料が割高になる可能性があるだけでなく、扶養家族が増えるほど保険料の負担も大きくなります。自家診療の保険請求ができないのもデメリットの一つです。扶養家族が多く、当面の間は収入の安定が保障できない場合は一般的な国保や健康保険に加入した方がよい場合もあります。また、従業員と保険料を折半する必要がないため保険料の負担は減りますが、優秀な人材の採用機会を逃す可能性も低くありません。従業員の給与体系も加味して医師国保に加入するか否か決定する必要があります。

医師国保にはメリットもデメリットもありますので、家族構成や収入などを総合的に考慮して加入するか否かを決めましょう。

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