目 次
1. 勤務医の平均年収は?
勤務医はどのくらいの収入を得ているのでしょうか?厚生労働省が毎年発表する職種・規模・年齢・男女別などの賃金統計によると、勤務医の収入は勤務先の医療機関の規模や年代によって大きく変わるようです。
「賃金構造基本統計調査(2019年)」の企業規模10人以上のデータから勤務医の年収を試算※しました。男性医師(41.6歳)の平均年収は約1,227万円、女性医師(38.2歳)は約1,016万円となります。統計上、医療法人の院長の役員報酬も含みます。
※年収試算=決まって支給する現金給与(月額)x 12カ月+年間賞与その他特別給与額
出典: e-stat「政府統計2019年賃金構造基本統計調査 第2表」
(1)【20代】勤務医の平均年収
同調査では5歳ごとに男女・年代別の平均年収が示されています。
医学部6年を卒業するのは早くて24歳ですが、その後2年間は研修医として勤務します。研修医期間の20代前半は男女ともに収入が少なく、男性医師は約475万円、女性医師は約436万円です。
研修期間が終わると学位取得を目的に医局に残る医師が大半ですが、2004年の新医師臨床研修制度以降は民間病院で研修する人も増えています。20代後半は学位や専門医の資格を取得する時期です。
20代後半の男性医師の平均年収は約752万円、女性医師は約639万円です。他の病院での当直や非常勤などのアルバイトをする医師も多いので実際の収入はもっと多いでしょう。
(2)【30代】勤務医の平均年収
30代は資格を生かして臨床経験を積み上げ、医師としてのキャリアプランを考え始める時期です。
独身のうちは勤務先での当直や残業などを引き受けることも多いので、時間外手当なども含め収入は20代に比べるとぐんと増えます。
男女ともに年収は1,000万円の大台を越します。男女差は少なく、男性医師は30代前半で約954万円、後半で約1,197万円、女性医師は30代前半で約1,008万円、後半で約1,011万円です。
勤務先では中堅医師として管理職業務や部下の指導も任され、臨床や医療の研究以外の時間が増加します。人間関係の悩みやマネジメント業務の負担が増えます。
クリニック開業を視野に入れ開業資金と総合的な臨床経験を取得するため当直や専門性を生かした非常勤勤務などのアルバイトに励む人もいれば、専門性をさらに極めるために転職する人、結婚して家族との時間を大事にする働き方を優先する人など医師としてのキャリアと働き方で収入も変わります。
(3)【40代】勤務医の平均年収
勤務医としての40代の医師は、医師として専門性に加えて、部長や副院長など管理職の能力も求められる時期です。若手医師の指導をしたり、院内外の役職についたり、人的ネットワークも広がります。
40代の医師は順調に収入アップの時期です。男性医師の平均年収は40代前半で約1,340万円、後半で約1,572万円、女性医師は40代前半で約1,184万円、後半で約1,310万円です。
40代で開業準備を始める医師も多いようです。開業前の準備として医療法人経営のクリニックで院長として勤務したり、開業支援を条件とし常勤・非常勤医師として勤務したりする医師もいます。
どちらの場合でも、大学病院や民間の大規模病院と小規模のクリニックでは医師の役割も大きく違います。開業を考えているのであればクリニックで経営陣としての医師の役割を経験することがおすすめです。
2. 勤務先や地域による年収の違い
勤務医の収入は年齢だけでなく勤務先の地域や規模でも大きく変わります。
前述の年代別の勤務医の収入は、企業規模10人以上の事業所の統計です。統計では、企業規模1,000人以上、100人〜999人、10人〜99人に分けて集計しています。医療機関の規模から大まかに経営母体を想定すると、1,000人以上は大学病院や地域の機関病院などの大病院、100人〜999人は民間の中小規模病院、10人〜99人はクリニックなどになります。
統計上は、大病院になるほど平均年収は下がるようです。
(1)都心と地方
一般的には、収入は人口や企業が集中して生活費の高い都市部が高く地方は低い傾向があります。しかし、医師の場合は、地域や診療科、二次医療圏によって人口あたりの医師数に大きな偏りが生じています。そのため、医師が多い地域では年収が低く、医師の少ない地方では年収が高い傾向があります。
人口あたりの医師数の多い都道府県は、東京都・福岡県・茨城県・愛知県ですが、逆に少ないのは岩手県・埼玉県などです。
都道府県別・男女別の医師の収入を見ると女性はあまり差がありませんが、東京都の男性医師は全国平均より低く隣の埼玉県とも大きく差がついています。さらに医師の不足する岩手県と比べると1.6倍の差があります。
医師不足の深刻な僻地や離島の公立病院では、医師の確保のため、2000万円以上の好条件を提示するところもあります。
(2)公的医療機関(国公立)と民間病院
前述の規模別・男女別の収入グラフでは、規模が大きい医療機関ほど収入が低くなっています。経営母体で言うと1,000人以上の大病院のなかでも、民間の大病院>私立の大学病院>国公立大学病院>国立病院の順で年収が下がる傾向があります。
少し古い資料ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の2012年9月の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、学校法人と国立病院が1,000万円以下、次いで公立病院が1,300万円台、民間の医療法人と個人立が1,400万円台となっています。
年収は低くても国公立病院では公務員として福利厚生の充実や社会的信用が高いことに加えて、地域の多様な症例に接することができること、また有名大学病院では著名な医師のもとで先進医療機器を使い最先端の診療技術を学べることなど、年収に変えられないメリットもあります。
出典: 独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査 2012年9月」
(3)アルバイトの給与相場について
前項の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、年収1,000万円以下の医師の約7割が複数の勤務先で働いています。常勤に加えて、単発のスポットで健康診断や予防接種、当直などのアルバイトが多いようです。
アルバイト賃金は日給もしくは時給で支払われます。経験や仕事内容で異なりますが1万円前後の時給が多く、医師不足の地域や難易度の高い診療科では2万円近くの時給が払われることもあります。
大学病院など年収が低い場合でも、当直や週1、2回の外来など定期的な非常勤で安定した勤務先を確保できると、週1回8時間のアルバイトで年間400万円ほどの副収入になります。
それに加えて、学会や夏休み、年末年始などは、単発のアルバイト医師の需要が多い時期です。計画的にアルバイト収入を確保することもできます。
3. 年収2,000万~3,000万を目指すなら開業医になろう
厚生労働省の2019年度「第22回医療経済実態調査」によると、常勤勤務医の年間給与は一般病院で約1,491万円、一般診療所で約1,071万円です。それに対して、一般診療所の医療法人院長の平均年収は約2,763万円です。院長には雇われ院長も含まれます。同調査の一般診療所(個人)の損益差額は約2,505万円です。これらの数字から、開業医の平均年収は勤務医の約2倍の2,500万円超と言ってもよいでしょう。
高収入を得ることができますが、開業時にはクリニックの取得や内装工事・医療機器などの設備投資のため、個人で多額の借入をします。病気・事故の場合も院長個人で対応しなければならず、リスクは小さくありません。また、経営者としてのマネジメント能力も求められます。
経験を生かし「理想の地域医療を実現したい」勤務医よりも「時間とお金の自由が欲しい」と思うならば、開業を視野に入れ、どこでどのようなクリニックを開業するのか、早めの計画を立てることをお勧めします。
開業医の年収に関するコラムはこちらもご参照ください。 開業医の年収・お金事情。気になる勤務医との違い
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