「かかりつけ医」は、「健康に関することをなんでも相談できるうえに、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義されています。一方で大病院への患者集中の抑制といった側面も見のがせません。その両面から、かかりつけ医の機能強化が診療報酬改定で謳われています。
診療報酬改定の基本的視点で再確認された「かかりつけ医」
外来の機能分化の推進
外来医療では「かかりつけ医である診療所や中小病院を受診し、そこから高機能病院の専門外来を紹介してもらう」という流れを強化する「外来医療の機能分化、連携の強化」が大きく謳われています。
大病院とかかりつけ医である診療所の役割分担を一層進め、大病院に症状の軽い外来患者が集中しないようにしていく一方で、かかりつけ医機能を持つ診療所などの医療機関は、地域包括診療料・加算や、機能強化加算などの診療報酬で評価していきます。
現在も紹介状なしでの大病院を受診した場合、初診・再診ともに定額負担の徴収を行ない、症状の軽い外来患者の来院抑制が行なわれています。定額負担を徴収しているのは、大学病院など高度な医療を提供する「特定機能病院」と、地域医療の拠点となる「地域医療支援病院」のうち200床以上の計666病院です。
今回の改定では、そこに200床以上の「紹介受診重点医療機関」という紹介患者への外来診療を基本とする病院が加わることになりました。
また、大病院に訪れる外来患者を抑制できれば、長時間勤務を強いられている勤務医の負担軽減と高度な医療への集中、そして2020年改定より診療報酬改定で強く謳われている「医師等の働き方改革等の推進」にもつながっていくものと考えられます。
紹介状なしで受診する場合等の定額負担引き上げ
先にお伝えした大病院などに紹介状なしで受診した場合の定額負担は、現在の初診5,000円、再診2,500円となっているところが、初診7,000円、再診3,000円に引き上げられることになりました。この定額負担の引き上げは2022年10月1日より実施されます。
この定額負担の引き上げは、外来の機能分化の推進を患者の目に見えるかたちで表したもので、患者の“大病院信仰”を定額負担で抑制して、まずはかかりつけ医、という流れを強化しようという意図のもとに改定されました。
紹介受診重点医療機関における入院診療の評価の新設
「紹介受診重点医療機関」は、2021年の医療法改定で紹介患者への外来を基本とする医療機関として新たに位置づけられました。今回の改定では、2022年度から施行される外来機能報告制度に沿って、地域における外来機能の分化と連携を促進し、定額負担の徴収義務がある医療機関の対象範囲を広げるだけでなく、該当医療機関の入院機能を評価するため、「紹介受診重点医療機関入院診療加算(800点/入院初日)」が新設されました。
具体的に変わるポイントはなにか
連携強化診療情報提供料の新設
かかりつけ医である診療所が、患者の病状を踏まえて専門性の高い病院へ紹介をした場合、患者の同意を得て診療情報を診療所から病院に提供すれば「診療情報提供料(I)」が算定できます。しかし、逆方向の情報提供、つまり「病院から診療所」への診療情報の提供・フィードバックを評価する診療報酬項目はありませんでした。診療所から病院へという一方通行ではなく、双方向の情報提供を評価するための新たな診療報酬項目として設けられたのが「連携強化診療情報提供料(150点)」です。
診療所などから患者紹介を受けて診療を行なう病院などが、紹介元の診療所の依頼で診療情報を提供した場合、現在は診療情報提供料(III)として算定上限回数を患者1人につき3ヵ月に1回だったものが連携強化診療情報提供料として月1回に変更され、医療機関同士の連携をより推進していく内容に変更されました。
地域包括診療料等、機能強化加算の見直し
かかりつけ医機能の強化と医療機関の機能分化・連携を促すなかで、かかりつけ医機能の強化については、「機能強化加算」と「地域包括診療料・地域包括診療加算」の要件が変更されました。
機能強化加算では、地域におけるかかりつけ医機能を明確化するため、算定要件と施設基準が見直されており、施設基準への対応については院内や診療所のWebサイトなどに掲示することが要件に加わりました。かかりつけ医機能を持つ診療所であることを患者へ適切に周知・説明をし、患者や住民にわかりやすく、地域に開かれた外来医療の充実を図っていきたい考えによるものです。
地域包括診療料・地域包括診療加算では、慢性疾患を抱える患者に対するかかりつけ医機能の評価を推進しており、対象疾患に慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行なっていない者に限る)が追加されました。また、患者への生活指導は医師の指示を受けた看護師や管理栄養士、薬剤師が行なうことが認められました。
生活習慣病管理料の見直し
生活習慣病患者に対する治療計画に基づいた治療管理および生活習慣病の管理における多職種連携を推進するために、生活習慣病管理料の要件、評価の見直しが行なわれました。具体的には、生活習慣病患者に対する生活習慣に関する総合的な治療管理について、看護師、薬剤師、管理栄養士などの多職種と連携して実施しても差し支えないことが、生活習慣病管理料算定の留意事項に明記されました。
また、生活習慣病患者は、患者ごとに薬剤料が大きく異なっているため、投薬費用が生活習慣病管理料の包括評価の対象範囲から除外されました。そのため、脂質異常症は570点、高血圧症は620点、糖尿病は720点となり、いずれの疾患も現行から80点引き下げられました。
かかりつけ医としての役割をより強化していく
診療報酬改定では、かかりつけ医としての機能、役割を強化していく方向での見直しが行なわれました。一方で患者からはかかりつけ医として役割が見えにくいという指摘があることも事実です。気軽に相談でき、安心感を与える医療体制であることが、患者にもきちんと見える診療所であることが必要になっていくようです。
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