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クリニック経営 医師 事務長 2024.07.29 公開

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診療所経営で悩まなくなる「戦略」とは?

立地選び、集患、マーケティングなど、数々の悩みが尽きない診療経営。経営について悩む時間をなるべく減らし、本当に重要であるはずの医業に集中したいと感じる先生は多いはずです。経営に悩む時間を減らし、より医業に集中するためにこそ活用いただきたいのが、「フレームワーク」。本連載では、公認会計士の大野氏と、経営フレームワークを使った診療所経営のコツを考えていきます。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業直後の悩み #マネジメント #診療所経営で悩まなくなる戦略

目次

昨今の診療所経営は様々な外部環境変化により、多くの課題に直面しています。
これらの課題に対処するためには、やみくもに悩んだり試行錯誤するのではなく、有限の経営資源を効率的に配分しなければ事業の継続性を担保できません。
そこで使えるのは先人が研究した経営論であり、経営のためのフレームワークです。すでに整理された思考フォーマットを活用することで、課題が発生するたびにゼロから悩むことなく、先生の医院を効率的または効果的に経営していくことができます。
本連載ではこれらを紹介し、皆様の診療所経営をより効率的に行っていただく助けになればと思っております。

●この記事でわかること
・よりよい診療所経営に必要な考え方
・3つの基本的な戦略

昨今の診療所経営に必要なモノは?

昨今の診療所経営に必要なモノは?

近年の診療所経営は、少子高齢化による人口構造の変化、それに伴う外来患者数の頭打ちや看護師などの働き手の不足と賃金上昇、医療技術の進歩へのキャッチアップやそれによる入院患者数の減少など、複数の課題に直面しています。これらの課題により、単に資格を持ち、診療所を開業すれば経済的に成り立つという時代から、経営戦略をもって対応しなければならない時代へと移行していると言えます。現に、民間の医療機関の2~3割程度が赤字経営と言われています。

経営戦略には様々な定義がありますが、本連載では、経営戦略を「持続的な競争優位を確立し、組織の目的を達成するための大局的な指針」と定義します。

この定義から、経営戦略は単に短期的な利益を追求するだけでなく、長期的に(持続的に)組織(診療所)が市場の競争の中で優位性を保持するための指針となるものであるということがわかると思います。

マイケル・ポーターの「3つの基本戦略」(診療所の戦い方を決める)

※マイケル・ポーターの提唱理論を執筆者にて作図。(引用元:マイケル・ポーターの著書『競争の戦略』)
※マイケル・ポーターの提唱理論を執筆者にて作図。(引用元:マイケル・ポーターの著書『競争の戦略』)

経営戦略の大家であるマイケル・ポーターは、持続的な競争優位を確立するための基本戦略には3つのパターンがあると論じています。

まずポーターは対象とする市場を、業界全体とするのか、特定の領域とするのかに分けました。
さらに業界全体で戦うときのポジショニングとして、コストを競争優位(つまり、競合他社に対して持続可能な利益を生み出すのに優れている点)とするのか、それとも独自性を競争優位とするのかに分けました(診療所経営においてどの様に当てはめれば良いかは、次のセクションで詳しく解説しています)。

そうして図のように3つの事象に分けられた基本戦略を、差別化戦略、コストリーダーシップ戦略、集中戦略と名付けました。

つまり、どんな組織も究極的には、この中のどの戦略を採るのかを決めなければならないと迫る戦略論であり、逆に言えばこの中のどの戦略を採るか決められれば、経営方針はぐっと明確になります。
診療所の経営においても、この3つの基本戦略を意識して経営をすることは非常に有効ですので、それぞれの戦略に診療所経営に当てはめてどのような打ち手を取るべきかを考えていきましょう。

コストリーダーシップ戦略(価格で戦う)

コストリーダーシップ戦略は、業界内で最低水準の生産コストを実現することにより、競争優位を確立します。低コストを実現することで、より低い価格でサービスを提供できるため、価格感度の高い顧客(つまり価格が下がれば他社から乗り換えてサービスを受けてくれる顧客)を引き付けることができます。

低コストの達成は、大量供給(生産)による固定費の分散や大量購入による割引、専門家と分業など、いわゆる規模の経済によることが多く、診療所というよりは、大規模な病院などで取られることが多い戦略です。

しかしながら、例えば診療所運営の効率化を通じてコストを抑えたり、自由診療であれば同様のサービスをより低価格で提供することで競争優位を確保したり、これまで人間が行っていた業務を機械やシステムで代替したりすることなどで達成できることもあります。

差別化戦略(他院にない魅力で戦う)

差別化戦略は、独自の商品やサービスを提供することで競合他社に対しての競争優位を確立します。この目的は、顧客に独特の価値を認識させることにあり、それが顧客のロイヤルティ向上や価格に対する感度の低下を達成します(つまり、高くてもそこでサービスを受けたいと思ってもらうことができるということです)。

差別化は、品質、デザイン、ブランドイメージ、顧客サービスなど、多様な要素によって達成されます。

診療所について考えると、提供するサービスや治療法において、他の診療所とは異なる独自の価値を提供することで、患者に選ばれるようにする戦略と言えるでしょう。

例えば、特別な治療法や患者体験に重点を置いた診療所などのほか、アクセスの良さ、診療時間や曜日の拡大などもこの戦略に該当します。

集中戦略(自院の強みで戦う)

集中戦略は、特定の市場セグメントやニッチ市場に焦点を当てるものです。このアプローチでは、特定の顧客群、地理的領域、または特定のサービスセグメントにおいて、コストリーダーシップまたは差別化を達成することを目指します。

集中化戦略を採用する企業は、ターゲットとする市場のニーズを深く理解し、そのニーズを満たすための特化したサービスを提供することで競争優位を確立します。

診療所経営においては、特定のニッチな診療科や患者層に特化し、その分野において高い専門性やサービスを提供することで差別化を図る戦略です。

まとめ

ポーターの3つの基本戦略について、理解が深まったでしょうか?
実際に、これらの戦略を診療所の経営に適用する際には、自診療所の強みと市場のニーズが一致する点を探り、戦略を選択するのが良いと思います。
また、その際には選択した戦略が実現可能なものかどうか、経営資源や経営能力と照らし合わせて検討することが必要です。
そうすることにより、経営をしていくうえでぶつかる様々な課題やお悩みに対し、効果的かつ効率的に対策を考えていくことができます。

次回以降、さらに具体的な経営戦略や経営フレームワークについて説明していきますが、ポーターの3つの基本戦略はその土台ともいえる、基本的な指針となります。
各診療所が直面する環境や自身の強みを踏まえ、適切な戦略を選択することが成功の鍵となります。

この連載のバックナンバー

筆者情報

大野 修平 様

大野 修平 様

公認会計士・税理士 セブンセンス税理士法人 ディレクター

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツへ入所。金融インダストリーグループにて、主に銀行、証券、保険会社の監査に従事。トーマツ退所後は、資金調達支援、資本政策策定支援、補助金申請支援などで多数の支援を実施。医師向けメディアやセミナーにも多数登壇。

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