目 次
1. クリニックのSNSは集患可能?
最近では、知人からのクチコミでクリニックを紹介されても、すぐに通院しないでネットで比較検討してから選択する人が増えてきました。
ネット検索を「ググる」と言うように、従来はパソコンでGoogle検索を使用することが多かったのですが、最近では「タグる」という言葉が使われるように、スマホを使いSNS上で検索する人も増えています。
その背景として、2010年初頭から2020年にかけて、10代から60代すべての世代でパソコンの利用率が下がる一方、スマホを利用する人が増えていることが挙げられます。
レストランを探すのと同様に、クリニックの検索でもまずはスマホで「タグる」人が増加しています。そんな変化に合わせて、情報発信ツールとしてSNSを始めるクリニックが増えてきました。
今回は、クリニックにおけるSNS活用のメリットとデメリットを解説し、効果的な活用方法を紹介します。
2. クリニックにおけるSNS活用のメリット
クリニックで活用できるSNSはいくつかありますが、まずはSNS全般の活用メリットについてご紹介します。
メリット①:手軽に始められ、簡単に更新できる
第一のメリットは、コストをかけずに開設でき手軽に始められることです。ホームページと違い、各SNSには定型フォームがあります。外部のSNS用無料画像デザインサービスなどを利用すると、開設や運用を外注しなくてもクリニックで簡単に始めることができます。
また、情報の更新が手軽にできるのもSNSの特徴です。診療時間の急な変更やお知らせなどを院内ですぐに作成し、投稿・更新できます。
メリット②:患者とのコミュニケーションツールになる
SNSは、ホームページと違い双方向のコミュニケーションができる特徴があります。登録された患者さん全体に急ぎのご案内をしたいときは、SNSで一斉配信できます。患者さんにSNS登録をご案内するときに、「当院では診察時間の変更や急ぎのお知らせは、〇〇(SNS名)を使うので、来院前に確認してくださいね」と周知しておけば、患者さんは通院前に確認することになるので、行き違いが少なくなります。
一斉配信の投稿でも、患者さんや地域の方が「いいね」や「コメント」をつけることができます。コロナ禍で、患者さんと直接話す時間が少なくなりましたが、しばらく通院していなくてもSNSを通じてお互いの存在を感じ合うことができ、クリニックと患者さんの接点が生まれ、共感を持ってもらいやすくなります。
メリット③:クリニックのブランディングができる
SNSではホームページでの公式な情報発信に加えて、季節の話題や院内イベントなど日常のクリニックの様子や、季節ごとの病気の予防方法など患者さん向けの情報を発信できます。ホームページで基本的な情報を伝えることはできても、先生やスタッフの思いや院内の雰囲気まではなかなか伝えられません。初めての患者さんやスタッフ採用に応募する人に対して、SNS上でクリニックの日々の活動や院長・スタッフの人柄や考え方を伝えることができるので、より理解を深めてもらうことができ、信頼獲得につながります。
もう1つの効果は、「インターナルブランディング」です。院内でSNSに取り組むことによって、院長とスタッフ間の理解を深めることにつながります。集患を目的にSNSを開設したのち、定期的にSNS発信を続けていくには、クリニックの医療方針や外部への広報の方針を院長以下スタッフで共有した上で、SNSの運用方針を決めることが必要です。院内の理念共有とスタッフ育成の手段と位置づけ、SNSに取り組むことで、コミュニケーション活性化に効果が現れます。その結果、院内だけでなく外部の患者さんに対しても正しい情報発信ができるようになり、質の高いブランディングにつながります。
3. クリニックにおけるSNS活用のデメリット
クリニックの集患やブランディングにSNSを活用することには前述のとおりメリットがありますが、注意点もあります。SNS活用のデメリットについて解説します。
デメリット①:運用に知識や時間が必要
SNSはホームページに比べれば手軽に始められる反面、効果的な運用を続けるには知識や時間、労力も必要です。また、あらかじめSNSを使う理由や目的を明確にして、SNSの運用方針を決めておかなければなりません。
よくありがちなのが、運用方針を決めずに、個人でSNSをやっているスタッフに任せきりにしてしまうことです。それでは、クリニックの考え方や患者さんへ伝えたいことが伝わらず、患者さんとのコミュニケーションやブランディングなど、SNS活用のメリットも得られません。
デメリット②:スタッフに負担がかかる
運用方針やコンテンツを決めてSNSを始めても、不適切な投稿をきっかけにクレームや問い合わせが増え、スタッフの負担が増えることがあります。
規模にもよりますが、クリニックでは「院長直轄の広報活動」と割り切り、SNS発信を通して院内の理念共有とスタッフ育成を行うための手段だと位置づけて運用を続けることが大切です。勤務時間の中で、必要な知識やインターネットリテラシーを学び、より効果的な運用ができるように努め、特定のスタッフに負担がかかることは避けなければなりません。
デメリット③:効果が出るまでに時間がかかる
新規患者の集患を目的にSNSを始めても、効果が出始めるまでには一定の投稿数が必要で、時間がかかります。最初は登録者(フォロワー)ゼロからスタートするので、一方的な発信だけでなく、共感できるフォロワーを増やしたり、どんな投稿を出すと好反応が多いのかをチェックしたりする地道な作業が必要です。
患者さんにSNSの登録(フォロー)をお願いするのはもちろん、お役に立てる有益なコンテンツや共感される情報を発信し続けることが大切です。中長期的な視点で、ていねいに発信し続けることでじわじわと効果が現れてきます。
4. クリニックで活用できるSNSの特徴
次は、クリニックが活用できる具体的なSNSの種類やその特徴について解説します。いくつものSNSを運用するのは負担も多くなるためおすすめしません。SNSのユーザー層とクリニックの方針や患者層の特性があっているかを考え、最適なSNSを選びます。
(1)Instagram
Instagramには「インスタ映え」などの言葉があるように、きれいな写真やインパクトのある動画をアップするSNSと思う方も多いのですが、決してそれだけではありません。2021年7月時点でインスタの利用者は4,800万人です。2016年1月にはInstagramのアカウントを持つ国内企業が1万社を超え、写真だけでなく、文字投稿でも企業のメッセージや世界観を伝えています。
院内の様子やスタッフの声、地域活動などを写真・動画と文章で発信できるので、情報が伝わりやすい、過去の投稿が閲覧できるなどの特徴があります。
比較的、若い女性層の比率が高いため、美容や産婦人科、小児科関係のクリニックの利用が増えています。
(2)LINE
LINEは国内で最大のユーザー数を誇るSNSです。個人のLINE利用者が多く、使い慣れていることと投稿の開封率が高いことが特徴です。新患者の獲得より既存患者の利便性に効果を発揮し、囲い込みの効果があります。
既存患者向けにハガキで出していた「健診の案内」や「次回予約日のご連絡」などの情報をLINEでの発信に変更すると、宛名書きや郵送費が不要となります。予防接種のご案内や保険外のスキンケア用品の紹介などの一斉配信もできます。トップ画面にWeb予約や問診、ホームページやインスタへアクセスできるボタンなどを配置できるので、ご案内から予約までLINEだけで完結でき、便利です。
(3)Facebook
Facebookは、SNSの中ではユーザー数は少ないのですが、医師や経営者などほかのSNSを利用していない40代~50代の中高年層のユーザーが多いのが特徴です。
Facebookは友人・知人間の交流が目的なので、不特定多数への拡散力は限られていますが、身近な人からの情報として信頼を広げやすいSNSです。
テキストだけではなくイベントや院内活動の様子を写真や動画、ライブで発信するのがおすすめです。新患者獲得より研修医やスタッフの募集に効果があります。
(4)YouTube
新型コロナの影響もありYouTubeの利用者が増えています。感染を避けるため受診控えが起きていますが、受診前に病気や予防について知りたいというニーズは増えています。専門の医療について患者さんにわかりやすく伝える院長のメッセージ配信に適しています。
5. まとめ
以上、クリニックのSNS活用について解説しましたが、SNSを始めただけですぐに集患・増患につながるわけではありません。ブランディングの項目で説明したように、クリニックの広報活動の一環として、院長以下スタッフと価値共有を行いながら、適切な情報を配信していくことが重要です。患者さんや地域にとって役に立つ魅力的な情報と自分たちの思いをていねいに配信続けることで地域からの信頼を得て、集患・増患そして採用・育成につなげていくことができます。
筆者プロフィール
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