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2024年度診療報酬改定の医療DX項目
2024年度診療報酬改定では、多くの医療DX項目が評価されました。まず、医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、オンライン資格確認の導入が2023年4月に原則義務化されたことを踏まえ、従来の体制整備に係る評価から、情報取得・活用に係る評価へ変更され、名称も「医療情報取得加算」に見直されています。
次に、オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算」が新設されます。なお、電子処方箋(2025年3月)並びに電子カルテ情報サービス(2025年9月)については経過措置が設けられています。
また、今改定の目玉であった「生活習慣病管理料」における療養計画書について、簡素化・デジタル化を進めるとされており、電子カルテ情報共有サービスを活用する場合は、血液検査項目についての記載を不要とし、あわせて患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに療養計画書の記載事項を入力した場合は、「療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす」としています。
このように、今後は医療DXへの対応として、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスの準備を進める必要があるのです。
医療DX令和ビジョン2030
これら医療DX政策のベースとなっているのが、政権与党である自民党が2022年5月にまとめた「医療DX令和ビジョン2030」です。同資料は、これから2030年までの我が国の医療DXの推進についての将来ビジョンをまとめたものになります。
その中で、電子カルテ情報の標準化については、「電子カルテ情報の標準化と標準型電子カルテの提供により、必要とされるすべての医療情報が共有される」「中小規模を含むすべての医療機関への導入及び普及を目指し、国が責任をもって取り組む」としています。
政府が医療DXを急速に進めようとする背景は、「少子高齢化」の問題があります。我が国は急速に高齢化が進み、団塊の世代が75歳以上を迎える2025年から2040年にかけて超高齢社会を迎えます。その影響から医療費・介護費の増大が予測され、少子化の影響も顕著になっており、様々な業種で人手不足が深刻化しています。また、2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、医療界は様々な場面で「デジタル化の遅れ」が露呈しました。新型コロナ患者の把握など、FAXや郵送などアナログな作業がほとんどで、多くの非効率が生まれています。政府は医療DXを進めることで、医療の質を維持しながら健康寿命の延伸を図り、医療費の増大を防ぐこと。様々な場面で業務効率化を図り、生産性が向上できると考えているのです。そのためには、医療機関間での情報共有をスムーズにし、情報の利活用ができる環境整備が必要と考えているのです。
▽参考記事
5分でわかる「医療DX令和ビジョン2030」
医療DXの推進に関する工程表
2023年6月2日には、医療DX推進本部において「医療DX推進に関する工程表」がまとめられ、各施策の具体的な実施時期が示されています。
工程表では、「全国医療情報プラットフォーム※1」を構築するため、新たに「電子カルテ情報共有サービス」を2025年に創設し、まずは「3文書6情報※2」を、医療機関間や医療機関と薬局との間で情報共有・交換する仕組みを構築するとしています。
この電子カルテ情報については、まずは3文書6情報の共有を進め、順次、対象となる情報の範囲を拡大していく流れが示されています。具体的には、2023年度に透析情報及びアレルギーの原因となる物質のコード情報、2024年度に蘇生処置等の関連情報や歯科・看護等の領域における関連情報の標準規格を整備するとしています。また、2024年度中に、救急時に有用な情報等の拡充を進めるとともに、救急時に医療機関において患者の必要な医療情報が速やかに閲覧できる仕組みを整備するとしています。
さらに、医療情報を薬局側に共有できるよう、薬局におけるレセコン・薬歴システムにおける標準規格(HL7 FHIR※3)への対応を検討することに加えて、薬局側から医療機関側に提供される、服薬状況等のフィードバック情報に関し、その内容や共有方法、必要性等についても今後検討するとしています。
出典:厚生労働省|医療DXの推進に関する工程表(概要)(PDF)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001140172.pdf)
電子カルテ情報共有サービスとは?
さて、電子カルテ情報共有サービスとはどんなものでしょうか。
同サービスは、オンライン資格確認、電子処方箋の次に位置づけられる医療DX政策で、紹介状送付サービス、健診文書閲覧サービス、6情報閲覧サービスの3つのサービスで構成されています。
運用開始までのスケジュールとしては、2023年より設計及び開発、テストを行い、2024年に医療機関等での運用テストを実施した後、2025年4月から運用を開始する予定としています。現時点ですでに、システムベンダ向けには技術解説書並びに外部インターフェイス仕様書が示され、システムベンダ向け説明会も開催されており、準備が着々と進められています。
①紹介状送付サービス
診療情報提供書等文書を電子的に供するサービスで、紹介元の医療機関が登録した診療情報提供書や退院時サマリーを紹介先の医療機関等がネットワーク経由で取得できるようになります。また、これら文書を閲覧するためには、提供時に患者に同意を得たことを登録することで、相手先医療機関にて閲覧可能となる仕組み。メリットとしては、①電子化によるコスト削減・効率化、②確実な文書の共有による安全な文書管理、③標準化による情報共有のしやすさ、が挙げられています。
これまで診療情報提供書はテキストデータとして診療情報を記載されてきましたが、同サービスでは診療情報を医療機関間で活用する観点から、構造化(コード化)されたデータとして記述する仕組みが想定されており、情報共有、情報活用がスムーズに進むとされています。
②健診文書閲覧サービス
従来の事業者・保険者経由の健診結果登録とは別に、医療機関から直接、各種健診文書をオンライン資格確認システムに登録でき、各健診種別(特定健診、後期高齢者健診、事業者健診、人間ドック等)ごとの直近の結果を全国の医療機関及び医療保険者、患者本人が取得・閲覧できるサービス。メリットとしては、①健診結果の活用頻度向上による質の高い診察・処方、②患者本人の健康維持に貢献、が挙げられています。
③6情報閲覧サービス
6情報を全国の医療機関や本人が取得・閲覧できるサービス。医療機関が情報を閲覧するには、原則患者の閲覧同意が必要であり、一般外来で閲覧できる時間は、患者同意後24時間以内とする予定。メリットとしては、①患者の医療情報を踏まえた質の高い診察、②患者本人の健康維持に貢献、③今後のさらなる医療情報共有に貢献、が挙げられています。
サービス開始当初は3文書6情報に限って情報共有が行われる仕組みが考えられていますが、今後は適宜カルテ情報の構造化(コード化)を進めていくことで、電子カルテ情報の標準化・情報共有が進められることになります。
まとめ
2024年度診療報酬改定では、医療DXに関する評価が重点的に盛り込まれ、今回新設される「医療DX推進体制整備加算」の施設基準として、2025年9月までに「電子カルテ情報共有サービス」への参加が求められています。また、生活習慣病管理料における「療養計画書」についても、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスの患者サマリーに登録することで、文書の発行を省略することが可能となります。
そもそも「医療DX令和ビジョン2030」及び「医療DXの工程表」では、オンライン資格確認、電子処方箋の次に開始されるサービスとして「電子カルテ情報共有サービス」が位置付けられています。
電子カルテ情報共有サービスは、2025年4月より開始予定で、現在準備が進められています。電子カルテ情報共有サービスは、「文書送付サービス」「健診文書閲覧サービス」「6情報閲覧サービス」から構成され、今後、具体的な導入方法や補助金の情報が出てくる予定です。将来の全国医療情報プラットフォームにつながる仕組みであり、クリニックにとっては重要なインフラとなる仕組みとなります。