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目次
返戻とは?
保険医療機関から提出されたレセプトは、「審査支払機関」および「保険者」において、審査や確認が行われます。レセプトの記載内容に「不備」や「誤り」等があった場合は、提出した保険医療機関にレセプトが差し戻されます。これを「返戻」と言います。
ちなみに、審査支払機関は我が国に2つあり、主に社保を審査する「社会保険診療報酬支払基金(支払基金)」と主に国保を審査する「国民健康保険団体連合会(国保連)」に分かれています。審査支払機関の業務は、保険医療機関から提出されたレセプトの内容をチェックする「審査業務」と、保険医療機関に医療費を入金する「支払業務」の2つの業務を実施するために、国から委託された第三者機関です。
審査支払機関の改革
「審査支払機関」の設立当時(1948年)は、レセプトは紙で提出されており、限られた期間の中で、審査や医療機関への支払いを効率的に実施するため、法制的にも実務運用においても支部が決定権を有する「支部完結型」の組織体制となっていました。
2008年からレセプトのオンライン請求が始まり、電子レセプトが広く普及した現在では、ほぼ全ての医療機関のレセプトについて、コンピュータを活用した審査事務が可能となり、審査の平準化に向けた基盤整備が行われています。そのような状況を踏まえ、審査の統一的なルールの整備、ICTを活用した審査事務の効率化・高度化を進めるため、支部完結型の業務実施体制から本部を中心とした全国統一的な業務実施体制へ転換が行われようとしているのです。
これまで「審査支払機関」は、各都道府県に47の支部が設置されていました。2019年5月に成立した支払基金法の改正により、審査結果の不合理な差異の要因と指摘されていた支部完結型での業務実施から、全国共通のチェックルールとすべく、本部が中心となった全国統一的な業務を実施するための体制を構築し、2022年10月から始動しています。47の支部を6つの中核審査事務センター(東北、関東、中部、近畿、中四国、九州)に統合し、地域間の格差を減少させ、本部主導でレセプトチェックルールを統一しようとしています。
レセプト事務点検を集約することで、職員が複数の都道府県のレセプトを審査事務することにより、広域にわたる状況を速やかに把握する体制を構築するとしています。また、審査結果の差異を調整する仕組みとして、中核審査事務センターにブロック内の各都道府県の審査委員をメンバーとする診療科別WGが設置されます。
審査支払新システムの構築
「審査支払機関」の審査システムについては、2021年9月にクラウドによるセンターサーバの一元化を完了させ、都道府県を超えて審査が可能になり、審査委員と職員間で同時にレセプトを閲覧できる機能が整備されました。また、審査事務集約や業務変化に柔軟な対応が可能なシステムの構築(モジュール化)、AI(人工知能)による振分け機能が実装され、新システム稼働後2年以内(2024年)には、レセプト全体の9割程度(現在は5割程度)をコンピュータチェックで完結することを目指しています。AIなどの最新技術を活用することで、審査事務の効率化・高度化、審査結果の不合理な差異解消が目的としています。
医療機関にとっては、地域間の審査結果の違いが解消されることで、ローカルルールに悩まされなくなる一方で、コンピュータチェックが9割に引き上げられることで、より厳格なチェックが行われるようになるという懸念もあります。
審査支払機関の審査とは?
毎月クリニックが提出するレセプトは、審査支払機関によって審査が行われます。審査は、「レセプト」に記載されている「診療内容」について、「保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)」「診療報酬点数表」「関連通知」等の国が定めた保険診療ルールに基づき適正に算定されているかを確認します。また、「医薬品」については、「薬価基準」や「添付文書」、医薬品の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律上の承認内容に基づき算定、使用されているかを確認します。結果として、レセプトの記載内容に「不備」や「誤り」等があった場合は、提出した保険医療機関にレセプトが差し戻されます。これがいわゆる「レセプト返戻」です。
レセプト返戻が生じる理由やその対策についてはこちらの記事で解説しています。