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クリニック開業 医師 事務長 2020.09.11 公開(更新日:2025.3.25)

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医院継承(医院承継・継承開業)の基本から流れ、失敗しないポイントを解説

開業を考える先生にとって、「新規開業」か「医院継承」かの選択は大きな悩みではないでしょうか。選択を誤ると、予想外の費用負担や患者離れ、さらには医院経営の失敗にもつながりかねません。本記事では医院継承の基本から具体的な流れ、失敗しないためのポイントまで解説します。

※本内容は公開日・最終更新日時点の情報です

#マネジメント #事業計画 #開業検討

※タイトルと本文を一部変更しています

目 次

医院継承とは

医院継承とは、すでに開業しているクリニックを譲り受けて運営することです。全国的に開業医の高齢化が進み引退を考える院長先生が増えるなか、医院継承は開業リスク低減や地域医療の維持などにおいて重要な選択肢といえます。

近年では親族間での継承だけでなく、第三者への継承も増加傾向にあり、M&A市場の一つとして成熟してきています。

医院継承で得られるメリット

医院継承は、開業資金の削減やすでにある患者基盤の活用、開業準備の時間短縮など開業時の大きな壁を低くしてくれます。ここでは、これらの代表的な3つのメリットを紹介します。

開業費用をおさえられる

医院継承では、開業資金を相当額節約できます。とくに、土地・建物・内装は数千万円単位の資金が必要です。条件が合えば新規開業の半分程度におさえられるのは、大きなメリットといえるでしょう。

また、継承元のクリニックがレントゲン装置やエコー機器など高額な医療機器を導入していればそのまま引き継げるため、設備投資の負担も軽減されます。

開業費用をおさえられる分、開業後の経営資源や患者さんのための医療に集中できる環境を整えやすくなります。

患者さんを引き継げるため、事業の見通しが立てやすい

医院継承では患者さんを引き継げるため、開業初日から一定数の来院が期待できます。とくに地域に根付いたクリニックでは、継承後も多くの患者さんが通い続けてくれる可能性が高いため、事業の見通しが立てやすいでしょう。

また、これまでの経営データを参考にできるため、より現実的な事業計画が立てられるのも利点です。

こうした患者基盤の継承は、医院経営の安定だけでなく、地域医療の継続性という観点からも大きな意味を持ちます。

開業までの準備期間が短い

理想とする医療を早く実現したい先生にとって、準備期間の短さは大きな魅力でしょう。新規開業と継承開業では、以下のように工数が異なります。

開業方法 新規開業 継承開業
必要工数 1. 診療方針確立
2. 経営計画策定
3. 開業地選定
4. 診療圏分析
5. 事業計画策定
6. 融資先選定・交渉
7. 借入金保証(リスクヘッジ)
8. 設計
9. 医療機器・備品選定
10. 施工
11. 各規定策定
12. 職員募集・採用
13. 開設手続き
14. 開業
1. 診療方針確立
2. 経営計画策定
3. 開業地選定
4. 診療圏分析
5. 事業計画策定
6. 融資先選定・交渉
7. 借入金保証(リスクヘッジ)
8. 各規定策定
9. 開設手続き
10. 開業

新規開業では開業地選定から開設手続きまで、長い時間を要します。一方、継承では建物や設備、場合によってはスタッフもすでに揃っているため、主に交渉や手続きに集中できます。そのため、基本合意から開業までの期間が大幅に短縮されるのが一般的です。

医院継承の流れ

ここからは医院継承を検討している先生向けに、準備から開業までの流れを詳しく解説します。

(1)開業希望地・時期や診療コンセプト等を考えておく

医院継承の第一歩は、ご自身の希望を明確にすることです。まず、どの地域で、いつ頃までに、どのような診療を行いたいのかを具体的に考えましょう。

たとえば「2年以内に東京23区外で小児科クリニックを開業したい」など、具体的なイメージがあると条件に合った継承先を効率よく探せます。

また、ご自身のライフスタイルや家族の事情なども考慮し、理想の医院像を描いておくことが、その後の道のりをスムーズにします。

(2)医院継承について専門家へ相談する

医院継承の手続きを滞りなく進めるには、専門家のサポートが欠かせません。先生だけでは手が行き届かない部分もフォローしてくれます。正式に依頼する前にご自身の要望に対して実績が豊富かを比較検討しましょう。

コンサルタントやM&A仲介会社のほか、医療に詳しい税理士や弁護士との相談も、税務や法務面での最適なアドバイスを得るために重要です。

(3)秘密保持契約書および仲介契約書(業務委託契約書)を締結する

信頼できる専門家が見つかったら、秘密保持契約と仲介契約(業務委託契約)を締結します。これは先生が交渉過程で得た情報を外部に漏らさないという約束を交わすものです。また、専門家に継承のサポートを依頼する書類として仲介契約書を交わします。

なお、仲介業者の業務内容や手数料について明確にしておくことが大切です。とくに成功報酬型か固定報酬型かという手数料の仕組みや、契約期間中に他社の案件を見られるかなどの条件を確認しておきましょう。

正式な契約を締結することで先生と専門家の役割が明確になり、後々のトラブル防止にもつながります。

(4)継承

専門家から紹介された条件に合う候補先を検討する段階です。最初はクリニック名や住所などが伏せられた状態(ノンネーム)で提供されることが一般的です。詳しく知りたい場合は、ご自身の情報を先方に伝え承諾を得る必要があります(ネームクリア)。

手元に情報が届いたら立地条件・診療科目・患者数・収益状況・設備の状態など、さまざまな角度から検討しましょう。とくに重視したい条件(例:駅から徒歩10分以内、専門領域が同じなど)に優先順位をつけておくと、効率よく絞り込めます。

(5)継承クリニックの内見・院長先生との面談

候補のクリニックを訪問し、実際の雰囲気や設備を確認する重要なステップです。クリニックの内装状態や医療機器、患者さんの待合室の様子などから継承後の運営をイメージしましょう。

また、継承元である現院長先生との面談では、これまでの診療方針や地域での評判、スタッフや患者さんの特徴など数字だけではわからない貴重な情報を得られます。

事前に質問事項をまとめておくと、限られた時間で効率よく確認できます。面談の機会は単なる情報収集の場ではなく、患者さんやスタッフとの信頼関係を引き継ぐための第一歩です。良好な関係づくりを心がけましょう。

(6)継承クリニックを決定する

これまでの過程で集めた情報をもとに、実際に継承するクリニックを決定します。立地や設備などの客観的な要素だけでなく、現院長先生との相性や地域医療における役割などを総合的に考慮しましょう。

とくに重要なのは、経営面と自分の理想とする医療を実践できる環境かどうかのバランスです。迷ったときは専門家の意見も参考にしつつ、最終的にはご自身の直感も大切にしましょう。

(7)継承元と条件調整し、基本合意書を締結する

クリニックが決まったら、具体的な条件交渉に入ります。医療機器や内装の状態を考慮して譲渡価格を調整し、スタッフの継続雇用や引継ぎ期間など双方が納得できる条件で合意したら、基本合意書を締結します。

一般的に書面自体の法的拘束力はありませんが、譲渡価格の目安や今後のスケジュール、独占交渉期間などの基本的な合意事項を記録するものです。

なお、この段階での合意は、その後の買収監査(デューデリジェンス)の結果によって変更される可能性を含んでいます。専門家のアドバイスを受けながら、将来のトラブルを防ぐための条件設定を心がけましょう。

(8)買収監査を実施する

クリニックに隠れたリスクがないかを調査するステップです。財務状況が健全か、診療報酬請求に問題はないか、未払い債務はないかなどを詳しく調べます。

専門家(会計士、税理士、弁護士など)の力を借りて、将来の問題につながる可能性を洗い出しましょう。

なお、個人クリニックや小規模な医院では簡略化されることもあります。また、調査結果によっては、譲渡価格の再交渉や契約条件の見直しが必要になることもあります。

(9)最終条件を調整し、最終譲渡契約書を締結する

買収監査の結果を踏まえて最終的な条件を調整し、法的拘束力のある最終譲渡契約書を締結します。本契約書には以下のような事項が記載されます。

  • 譲渡対象となる資産のリスト
  • 最終的な譲渡価格と支払い方法
  • 引き渡し日
  • 売主による保証内容
  • 問題が発覚した場合の責任範囲
  • 税務上の取り扱い
  • 保険契約の引継ぎなど

契約書作成時には、医院継承の知見が豊富な弁護士のサポートを受け、将来起こりうるトラブルに備えた内容にすることが重要です。

(10)継承を実行し対価を支払う

契約時に決めた日に、譲渡代金の支払いとクリニックの引き渡しを行います。医療機器や備品のリストと実物を照合し、すべて揃っているか確認しましょう。

また、患者さんのカルテや診療データの引継ぎ、レセプトシステムのデータ移行なども今後の運営に当たり重要な作業です。

(11)行政手続きを進める

クリニックの継承が完了したら、以下必要な行政手続きを進めます。

届出先 書類
保健所 ・診療所開設届
・麻薬管理者
・診療用X線装置備付届など
厚生局 ・保険医療機関指定申請書
・診療科の施設基準等に係る届出書など
労働基準監督署 ・労災保険医療機関指定申請書
・適用事業報告書など

さらに個人医院の親子間継承では、親は廃業手続き、子は開業手続きをそれぞれ行います。また、医療法人の場合は法務局や都道府県、保健所での役員変更届など医院形態によって必要な手続きは異なるため、漏れのないよう注意が必要です。

各手続きには時間がかかるため、各届出先に確認しながら進めるとよいでしょう。

医院継承の費用目安

医院継承にかかる費用は、一般的に2,000~4,000万円程度が目安です。金額は診療科目やエリアというよりも、クリニックの収益力や資産価値によって大きく変わります。

具体的には、年間の利益額や、建物・医療機器の価値などが価格を左右する主な要因です。また、設備の新しさや内装の状態、土地・建物の所有形態(賃貸か所有か)も価格に影響します。

新規開業に比べると全体的に初期投資をおさえられますが、適正な価格かどうかの判断には専門家の評価が欠かせません。なお、専門家に仲介を依頼する場合、手数料が別途必要です。継承後の改装や機器の更新費用も考慮した資金計画を立てましょう。

第三者間で継承するときのポイント

親族ではない第三者からクリニックを継承する場合、とくに気をつけたいポイントがあります。ここでは3つの重要なチェックポイントについて解説します。

事前にクリニックの綿密な調査を行う

身内ではない第三者間の継承では、資産や負債の全容把握が最重要です。クリニックの実際の資産状況や負債を明確にし、何を引き継ぐのかを詳細に確認しましょう。

とくに法務面や財務面のリスクを事前に調査することが欠かせません。専門家による買収監査を実施し、過去の診療報酬請求の適切性や債務の有無、未解決の問題がないかなどをチェックします。

また、経営が順調かどうか、金銭的なトラブルを抱えていないかなども確認しましょう。もし問題が見つかった場合は、価格の再交渉や、場合によっては継承を見送ることも検討すべきです。

内装や医療機器等の老朽化の具合を確認する

費用削減のために継承を選んだのに、後から多額の設備投資が必要になっては本末転倒です。医療機器が古くて使いづらかったり、内装や設備の老朽化が進んでいたりすると、予想外の追加費用が発生します。

とくに高額な医療機器については導入時期や修理履歴、今後の買い替え見込みなどを詳しく確認しましょう。建物の場合は、耐震性や水回りの状態、電気設備の老朽化なども重要なチェックポイントです。

院内の状態を正しく把握し、必要な改修費用を見積もったうえで、継承価格に反映させることが大切です。

スタッフの引継ぎ

地域や患者さんのことを熟知したスタッフは、継承医院の大きな財産です。継承後も働き続けてくれれば、業務がスムーズに進むだけでなく、患者さんの離脱も防げます。

しかし、人間関係には相性もあり、新しい院長であるご自身とスタッフの関係が必ずしもうまくいくとは限りません。継続して雇用する場合は、後々のトラブルを防ぐため、診療方針や雇用条件をしっかり話し合いましょう。

場合によっては、新しいスタッフと一から始めた方が長期的にはうまくいくこともあります。経営者として重要な判断となるため、慎重に検討しましょう。

親子間で継承するときのポイント

親子間での医院継承は、スムーズに進みそうに思えるかもしれませんが、実は特有の課題があります。

親子間継承の最大の課題は相続問題です。院長先生が他界した場合、クリニックの財産は相続財産となり、配偶者を含めた相続人全員に分配される可能性があります。

スムーズな継承のためには、クリニックの土地・建物・医療機器などを早めに特定し、生前贈与や売却などの対策を講じておくことが効果的です。税理士などの専門家に相談し、税制面でも有利な方法を検討しましょう。

また、医師である子の専門と親の専門が異なる場合も問題になります。専門が違うと既存の診療継続が難しく、患者さんの不安にもつながります。そのような場合は、事前に他院へ紹介するなど患者さんへの配慮が必要です。

さらに、親子間では診療方針や経営方針の意見相違が生じやすく、とくに親が経営に口出し続けるケースも珍しくありません。感情的な対立を避けるため、継承前に十分な話し合いを行い、お互いの役割を明確にしておきましょう。

まとめ

医院継承は、新規開業と比べて初期費用をおさえられ、既存の患者基盤を活用できる効率的な開業方法です。成功させるためには、自分の希望条件を明確にし、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが大切です。

医院継承は単なる物件取得ではなく、患者さんの健康と地域医療を支える重要な役割の継承でもあることを忘れないでください。メディコムパークでは、医院継承に関する特集ページや物件情報など、開業に関する情報を豊富に取り揃えています。ぜひ以下よりご覧ください。

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筆者プロフィール

武田 直也 様

フリーランスWebライター。18年間、医療事務として合計3つの医療機関に従事。診療報酬をはじめ、診療情報管理士の資格を活かしたカルテ監査やDPCデータ分析、クリニカルパスなどの医療情報利活用に精通している。

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