目 次
1. 病院・クリニックへの不満で多いクレームは?
苦情・クレームは、相手に対して不満を感じたり不快な感情をいだいたりしたときに、それを訴えることを言います。様々なクレームの多くは、期待していたサービスを受けられなかったために発生します。
一番多いクレームが「待ち時間」な理由
病院・クリニックへのクレームで特に多いのが、診察や会計の順番が回ってくるまでの待ち時間に関するクレームです。自分の順番が来るまで「あとどのくらい待てばいいのか?」「何人待っているのか」が分からず、一方的に待たされていると感じるからです。
2. 待ち時間に対するクレームの対応方法
病院・クリニックでは、本人や家族などの体調不良や病気の不安を抱えています。それに加えて「いつまで待てばいいのか」「呼ばれない」など、待たされることで不安や不満が大きくなります。診察時間や窓口対応など、待ち時間が発生する理由は様々ですが「待って当然」ではなく、患者さんの「待たされている」という不安を一旦、受け止めて対応することが大事です。
クレームの多くは、期待していたサービスが受けられなかったと感じた場合に発生します。心のどこかに改善してほしい、改善できるはずという思いがあります。言っても無駄と思えばクレームは言いません。
クレーム対応の良し悪しは、言いにくいことを伝えようとする患者さんの心理を理解しているかどうかで決まります。
良い例は「嫌な思いをさせてしまった」事実を詫びた上で、わざわざ言ってくれたことに感謝し、その後の対応をすること。悪い例は話を聞かない、もしくはその場しのぎで解決しようとすることです。
3. その他の病院・クリニックでよくあるクレーム事例
その他の病院でよくあるクレームは、大きく2つに分類することができます。1つは診療や診療プロセスなど診療の品質に関するもの、もう1つは医師やスタッフの態度・言葉遣いなど人に関するものです。
(1)病院・クリニックでよくあるクレーム事例
①診療に関するクレーム
診療後、処方された通りに薬を使っているのに治らない・もっと悪くなったという場合です。再来院し直接医師に相談されればいいのですが「一方的に治らない」「ヤブ医者だ」と口コミサイトに書かれることもあります。
②薬の処方に関するクレーム
慢性疾患の患者からの3カ月分薬を出してほしいのに1カ月分しか出してくれない、高齢の患者の家族から服薬コントロールが大変なので薬を減らしてほしいなど、薬の処方に関するクレームもよくあります。
(2)病院・クリニックでよくあるクレーム事例(人)
①医師が話を聞いてくれない
医師の診療時間が短く、相談したいことが言えなかったとか、パソコンばかり見ていて全然話をしてくれないというクレームは少なくありません。
②受付・看護師の態度が悪い
もう1つの人に関するクレームは、看護師や受付スタッフが感じ悪かったとか、対応の姿勢に関するものです。
4. 病院・クリニックでクレーム対応する際のポイント
病院やクリニックでクレーム対応する際のポイントは、最初の対応を間違えないこととその後の対応をあらかじめ決めておき、誰もが基本的には同じ対応ができることと、その結果を院内で共有することです。
ポイント①:例)最初の対応を間違えない
クレーム対応で大事なことは最初の対応です。今、困っていることを受け止め、その事実に対してお詫びします。「長時間お待たせして」「お手数をおかけして」申し訳ないと伝えることで、その後の話がスムーズになります。
ポイント②:例)事実関係の確認
次は事実関係の確認です。クレームを言う人は改善を期待しています。なぜ、不安・不快にさせてしまったのか、その原因を共有します。すぐに改善できなくても、事実を聞いてもらえただけで安心することもあります。
ポイント③:例)基本方針に沿って対応する
人によって対応が違うと信頼をなくします。その場しのぎではなく、クレーム対応の基本方針に沿って対応します。
ポイント④:例)別室・別時間に対応する
その場ですぐ対応できない場合は落ち着いてきちんと話できるように、別室・別時間を決めて対応します。
ポイント⑤:例)複数・別の人が対応する
一人で対応するのではなく、複数もしくは上司が一緒に対応します。
ポイント⑥:例)記録を残す
クレームは事実と感情が入り乱れてこじれることがよくあります。事実と感情を切り分け、発言と対応の記録を残します。
ポイント⑦:例)クレームの原因と対応を共有する
クレームを完全になくすことはできませんが、発生したクレームに対して院内全体で原因と対応法を共有することで、再発を防止し改善につなげることができます。
5. 病院・クリニックでのクレーム対応を今後強化していくためには?
病院でのクレーム対応を強化していくためには、組織のありかたやコミュニケーションの取り方、仕事の進め方から見直しを図る必要が出てくる場合がよくあります。クレームは氷山の一角であり、その下に解決すべき課題があると認識した上で、強化を考えるとよいでしょう。
(1)クレームそのものを発生させない対策を立てる
クレーム対応を考える時は、最初にクレームそのものを発生させないことはできないかを考えます。一度クレームが発生してしまうと院内で様々な特別対応が必要となり、業務が滞り新たなクレームの原因にもなりかねません。
まずは、過去のクレームを分析し院内全体で最初を防ぐ方法を考えるために、組織横断的なクレーム検討委員会を設けます。
ここで大事なことは、理事長・院長直下の取り組みとすることです。なかなか改善されないクレームの中には、医師へのクレームが多く含まれます。受付や医療スタッフが真剣にクレーム対応を進めていても、医師や経営トップの関わりが少ないといつまで経っても根本的なクレームはなくなりません。
クレームを発生させない対策を立てる上では、過去のクレームの分析だけでなく、現状把握として、患者とスタッフに対するアンケートも有効です。5段階評価だけでなく、課題を明確にするため、よりよい医療機関とするためのアドバイスや希望を求める項目を作ると良いでしょう。
(2)クレーム対応マニュアル作成
次に、クレーム対応マニュアルを作ります。こちらも(1)の組織横断的な委員会をベースに、院内全体をカバーする基本方針を作ります。特に医師の対応に問題がある場合は、スタッフから指摘しにくいものです。アンケート結果の客観的な評価や厚労省や他院でのクレーム対応事例やマニュアルを参考に、医師や医療職を含めて各部署で納得できる実行可能なマニュアルを整備します。
マニュアルは作って終わりではありません。作成後半年もしくは1年間は、マニュアル作成委員会が中心となり、各部署の実態を把握しフィードバックすると効果的です。マニュアル通りにできない場合の対応を検討し、マニュアルを精査していくとよいでしょう。
クレーム対応は、患者さんからのマイナス評価をゼロにする取り組みです。きちんと問題を把握し改善し続けると、評価ゼロからプラスに変わり信頼性を獲得することにつながります。
6. まとめ
いくら患者本意の診療を提供していても「患者対応」が悪いと医師の趣旨が伝わらなかったり、医療機関そのものの信頼をなくしてしまったりすることもあります。「クレームは宝の山」と考え、改善につなげていきましょう。
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