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クリニック経営 医師 事務長 2024.11.01 公開

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後で発覚は悲惨…「開業に向く医師・向かない医師」

医師人生上の大きな決断となる「医院開業」。本当に満足のいく開業のためには、開業後の長い人生のリアリティについて予め知っておくことが大切ではないでしょうか。これまで100人以上の先生の開業をサポートしてきた医院経営コンサルタントの大西大輔さんが、医院開業の本当のところをそっと耳打ち。第1回目のテーマは「開業に向く先生、向かない先生」です。

※本内容は公開日時点の情報です

#開業検討 #コンサルタントが語る「開業のリアル」

目次

「自分は向いていなかった」と気づくのは…

後で発覚は悲惨…「開業に向く医師・向かない医師」

――本日はよろしくお願いします。早速ですが、開業は先生方にとっても大きな人生の転機ですよね。ご自身が向いているのか、向いていないか、事前に考えることはかなり大事ではないかと思います。大西さんのご意見は如何でしょうか?

そうですね、向いている先生と向いていない先生というのは確かに、明確にあると思いますから整理してみましょうか。
向く人は、一つ目に経営志向が強い先生。経営者になりたい先生です。
経営思考って何かっていうと、他人の理念・計画に則っとって動きたくない人、自分で理念・計画を生み出したい人。これが、経営思考が強い先生の特徴ですね。

――ご実家が開業医の先生のほうが、そうした意識は芽生えやすいんでしょうか。

開業医家庭の先生の場合、家や地盤が既にありますよね。だからお父様の医院が順調なら跡継ぎを期待され、順調でない場合も、逆に立て直さなきゃいけなくなったりします。これは向き不向きとは関係ない家庭の事情ですよね。むしろ非医師家系の先生のほうが、開業したらうまくいくケースもありますから、出身よりはご当人の考え方が重要ですね。

――向かない先生はどんな方でしょうか?

向かない先生は、経営者になりたくない方です。サラリーマン志向が強い先生には開業はお勧めできません。それから、一匹狼的な人は苦労されますね。例えば手術だけうまければいい、というブラックペアンみたいな先生は向かない。

――なるほど、ひたすら自分の世界を極めたい方は苦労されることもあると…。

そうですね、他人と距離を取りたいタイプの先生は難しいです。 スタッフと常に一緒にいるのが苦痛、多職種コミュニケーションが苦手といった先生も、病院と違って医院では避けることができませんから。実際は、人嫌いなのに開業してしまって、苦労されている先生は正直沢山おられて、そういう方に限って経営も苦労されています。どうして、自分のスタッフのことで頭悩ませなきゃいけないんだろうって。苦痛なんですよね。逆に人が好きな先生は悩むこと、考えることが楽しいとおっしゃいます。

――開業してから、それに気づくのはなかなかつらいですよね。

そうですね。勤務医のころは関わるスタッフも多いし、なかなか気づけないことも多いと思うんです。「おかしいな俺、人当たりいいんだけどな」って皆さんおっしゃいます。でも、いざ開業して、スタッフが辞めていったときに気づいたりするんですよ。医師だから丁重に接されていただけなんだ。一人間としては好かれていなかったのかもしれない、と。後から苦手が分かっても医院はやめられないですから、こうなると悲惨です。

――本当は向いていなかったことが後から分かることは結構あるんでしょうか。

本来向かない先生が、急に開業を決意してしまうケースは結構あります。たとえば、お勤めの病院で教授選に敗れたりして、ポストがなくなった。病院でもこれ以上出世できないから、いつか追い出されるかもしれない。ならば開業しよう、と。開業するとオーナー社長ですから、悲しみも和らぎますよね。ただ、冷静に見て全体の1/3くらいは、あまり開業向きのマインドでない方です。だから、お話ししてみても、ご自身で事業プランを立てられないし、せっかく雇ったスタッフが辞めていってしまうんですよね。
向く先生は、結局のところ人間好きなんですよ。 自分の下に人が集まって、それをマネジメントすることが好きな先生は、スタッフからも信頼されますから。

――人好きという要素は重要ですね。いっぽうで、医師としての本業である診療内容や診療科でいうとどんな点に注意が必要でしょうか。

開業医はやはりプライマリ領域ですから、専門性の高い最新の医療をやりたい先生にもお勧めできません。それとご専門でいうと一般内科・総合診療科や救急の先生は、一見、開業と相性が良さそうですが、実際は武器がなくて困ることがありますから注意が必要です。
たとえば英国なら、日本でいう「かかりつけ医」を意味するGPが定着しているので、たとえば皮膚がかゆくても地元の内科に行くという総合診療の考え方が通じるでしょうが、日本で総合診療を標榜しても、皮膚がかゆい人は皮膚科に行ってしまいますから。患者から見て専門性が見えにくく、どんなときに受診すればいいかわかりにくくなってしまうんですよね。

開業の向き・不向き、知るにはどうすれば?

――お話を伺っていると、勤務医の頃から、向き・不向きを見極めておくのも大事に思えます。どうすればよいのでしょうか。

日頃からコメディカルや看護師さんと仲良くして、良い関係を築けるか試してみるのが良いかと思います。向いている先生だと、開業するとわかったときに「先生が開業するのであれば、私も一緒に行きます」って看護師さんや事務員さんがついて来ちゃいますから。病院勤務の方は経験もしっかりしているし、先生の仕事の仕方もわかっているだろうから、一緒に来てもらえるなら百人力です。こんなこと言うと、病院さんから怒られちゃうんですけど…(苦笑)。

――それはすごいですね。

本当に、すごい先生いらっしゃいますよ。開業前に、看護師一人事務スタッフ一人がすでに確保できている。聞くと「勤務医時代からの仲間」ですと。こういう医院はだいたい開業しても安定します。あともっとすごいのは病院側から「開業してもいいけど、週一回は手伝いに来てね」って継続的な関係を期待される先生ですね。これもやっぱり成功するパターンです。地域の病院や、そのキーマンと良い関係ができあがっていて悪いことは一つもありませんからね。

――こう考えると、開業前の立ち居振る舞いは本当に重要なんですね。

そうですね。開業を見据えるからこそ、今お勤めの職場で他人を積極的に巻き込めているか、いざ開業となったとき、ついて来ないまでも自分を応援してくれそうか、振り返ってみて頂くとよいと思います。

いかがでしょうか。
開業というととかく立地や物件に目が行きがちですが、周りのスタッフを巻き込みながらイキイキと仕事ができるか?という点に気を配っておくと、開業の満足度がさらに高められるかもしれません。
次回のテーマは「開業を見据え、勤務医時代にできること」です。

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お話を伺った人

大西 大輔 氏

MICTコンサルティング(株) 代表取締役
大西 大輔 氏

2001年一橋大学大学院MBAコース卒業。同年、日本経営入社。2002年に医療IT製品の常設総合展示場「メディプラザ」を立上げ、IT導入コンサルティング、システム選定アドバイス、研修事業等を担当。2016年にMICTコンサルティング(株)を設立。多くの医療機関の導入サポートや取材経験より団体などでの講演や執筆多数。

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