【津下先生解説】行動変容を促すために必要な、特定保健指導のテクニックとは vol.4
第4期特定健診・特定保健指導制度が2024年4月から開始されます。ウィーメックスはまもなく開始される第4期に向けて指導品質の向上のためのセミナーを開催し、第1期より厚生労働省等の検討会委員を務めている女子栄養大学特任教授の津下一代先生に解説いただきました。本コラムでは、講演内容のポイントをさらに詳しく解説いただき、連載でお届けいたします。今回は12月15日開催のセミナーから、保健指導と行動変容の関係性について教えていただきました。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
Q1.保健指導の効果が出やすい人と出にくい人の違いはどのような特徴がありますか。
A.保健指導の対象者に対して先入観を持つことは望ましくないのですが、対象者の行動変容への準備度を考慮して、保健指導の戦略を練ることは大切ですね。
指導前から行動変容に向けての準備度が高まっている場合、例えば『自分もそろそろメタボ対策を始めようかな』と思っている人(準備期)や『健診後に〇〇(健康行動)を始めた』人(実行期)は、具体的かつ適切な目標を設定することにより、効果を出すことが期待できます。
職場ぐるみで健康づくりに取り組んでいる、周りに成功者が出ている場合など周りの人々の影響や、同僚や家族の病気の経験などが準備度に影響を与えているかもしれません。
「生活を変えることは難しい」、「保健指導を受けたくない」と思っている人では行動変容の準備度が低く、難易度が高まります。このような場合でも、面接を受けることで急にやる気が高まる場合があります。
「健診結果の説明により体の変化を理解でき、生活改善の必要性を感じた」、「これまで自分なりにやってきたが、専門家のサポートで実現できそうな目標をたてられた。三日坊主にならずにすみそうだ」など、本人が納得できる保健指導を受けられた場合があります。
Q2.行動変容テクニックにおいて、複数回参加している方に対して特に有効なテクニックや活用事例などをぜひお伺いしたいです。
A.複数回参加している人は、前回成功しなかったという負の経験や、すでに知っていることを繰り返されることへの失望、生活を変えなくてもなにも状況は変わらない(危機感の低下)などにより、保健指導に前向きになれないことがあります。
結果説明や生活習慣の話をする前に、本人の思いをまず確認する必要があります。健康のために何か実行していることはないかなど、本人の状況に焦点をあてた会話から面接を始めてみてはいかがでしょうか。
これまでの保健指導で「効果が出なかった」と感じている場合には、行動目標が本人の生活実態と合っていたか、やり方に無理はなかったかを確認するなど、今回の行動目標を考えるヒントを得たいところです。
行動目標を設定する際には、今日・明日からできそうなことを考えてもらうなど、具体的なイメージをつかんでもらうとよいでしょう。前回とは異なったアプローチとして、行動目標に合わせたアプリの活用法を説明するなどして成果をあげられた事例があります。
Q3.継続支援のメールや手紙で、行動変容やモチベーションを上げるアドバイスをするために意識するポイントなどがありましたらお伺いしたいです。
A. 面接の状況について簡単な記録を残し、メッセージを書く際、参考にするとよいでしょう。
自分の頑張りを応援してくれるメッセージが届くと、モチベーションが上がりますよね。一人ひとりにあったメッセージを送りたいと思っても、保健指導者がすべての対象者の詳細を記憶できるわけではありません。
行動目標だけでなく、なぜその目標を立てたのか、どんな検査値を改善したいのか、課題と思っていることは何か、生活背景や健康への思いなどを記録し、メッセージ作成の際に参考にするとよいでしょう。
体重や歩数の記録についてコメントする際には、がんばっているところに着目すること。「できなったこと探し」にならないよう気を付けてください。
▽前回のコラムをご覧になりたい方はこちら
https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/healthmanage-point-03
▽関連資料
『対象者を正しく理解するスキルの習得』
https://go.medicom.phchd.com/wellsportstep_seminar_material_20231215(PDF)