2020年問題
2020年にHCFCなど「オゾン層を破壊する特定の冷媒」の新規生産・輸入の制限がはじまりました。古い機種にはそれらの旧冷媒が使われていることがあります。
旧冷媒の高騰
全廃を機に、既に冷媒価格の高騰が始まっています。HCFCを使用している古い冷蔵庫が今すぐ使えなくなるわけで
はありませんが、修理等が高額になる可能性があります。
機材の計画を
将来的な修繕費用や、急な故障などへの対応を考えると、新機種への買い替えも視野に入れるなど、世界情勢を踏まえた計画を立てておくことをお勧めします。
歴史のご紹介
1990年以降使用されてきた冷媒の変化
CFC(クロロフルオロカーボン)は優れた化学的特性と冷却性能を持ち、低価格でもあることから幅広い利用可能性を見出された冷媒でした。カーエアコン、エアコンなどの冷却アプリケーションの普及時に非常によく使用されたのです。しかし、CFCはオゾン層破壊を引き起こすことが判明しました。
1985年、オゾン層保護のためのウィーン条約の採択後、1987年にはモントリオール議定書が採択されました。
CFCやHCFCはオゾンホールを引き起こすとして、国連加盟諸国は段階的に使用を禁止しました。そこで代替として使われるようになった冷媒がHFC、HFO、HCだったのです。
しかし、2016年のキガリ改正案の条項において、HFCも地球温暖化を引き起こすとして、同様の措置を行うことが合意されました。国や地域によって、対応の時期は異なりますが、2019年以降、HFCのほとんどの生産と使用が段階的に削減されています。
冷媒種類 |
ODP |
GWP |
規制 |
特定フロン |
CFC |
クロロフルオロカーボン |
高い |
非常に高い |
全廃 (一部予定) |
HCFC |
ハイドロクロロフルオロカーボン |
非常に低い |
非常に高い |
代替フロン |
HFC |
ハイドロフルオロカーボン |
0 |
高い |
段階的に切替 |
低 GWP |
HFO |
ハイドロフルオロオレフィン |
0 |
低い |
なし |
自然冷媒 ノンフロン |
HC |
炭化水素 |
0 |
極小 |
CO2 |
二酸化炭素 |
0 |
極小 |
ODP (Ozone Depleting Potential):オゾン破壊係数
GWP (Global Warming Potential):地球温暖化係数
フロン規制と転換
* The year when PHCbi’s use of HFC began
オゾンホールとは
地球を覆う大気の中でも成層圏にあり紫外線などから地表を保護す
る機能も持つオゾン層。「フロンガス」の名前で知られる旧冷媒が上空(成層圏)まで達すると、太陽からの強い紫外線によって塩素原子を放出します。塩素原子はオゾン中の酸素原子と結びつき、オゾンを分解します。ここで発
生する一酸化塩素は不安定な物質で、塩素原子を放出してはオゾンの分解を繰り返すという連鎖反応が起きます。この分解が進むことでオゾンが極端に薄くなり、穴のように見える「オゾンホール」と呼ばれる状態が問題となりました。
冷却の仕組み
ものが液体から気体へと状態変化をする時には、その状態を変えるためにエネルギーを必要とします。その際に「吸熱反応」と呼ばれる周囲のものから熱を奪う作用が働きます。冷蔵庫や冷凍庫はその仕組みを活用しており、液体で入っている「冷媒」が気体に変わることで庫内の温度を奪い、気体を圧縮し放熱することで液体に戻すというサイクルを繰り返しています。
冷媒に求められること
「冷媒」は液体と気体の状態を繰り返すため、「一定の条件で状態変化が安定して起きる」物質であることが必須要件です。また、機械の中に取り入れるため可燃性が低いことや、故障などで漏れ出した際に、人体にとって有害性が低いことなども必要です。そこで開発されたCFC(通称フロン)は、安価でもあったことから、かつて多く使われました。
現在では、より環境への負荷が少ない素材が発見され、各国で随時導入されています。PHCbiの製品もそれら新冷媒を利用しています。
フロン排出抑制法の改正(2020年4月)により業務用の冷凍冷蔵庫を廃棄する際の規制が強化されました。詳細については専門業者へご確認ください。
一般的に使用されている冷媒
|
HFC |
HFO |
HC |
GWP |
1430~10000 (かなり高い) |
< 5 (温室効果:小) |
< 3 (無視できるレベル) |
可燃性 |
不燃性 |
わずかな可燃性 |
高い可燃性 |
毒性* |
低い |
低い |
低い |
オゾン層 |
0 |
0 |
0 |
*低い = ASHRAE Class Aに準ずる。
毒性(Class B)を有すものもあります。
まとめ
冷媒の環境への影響については、今なお諸国で議論が交わされています。冷蔵庫・冷凍庫の故障対策や増設といった管理にあたっては、規制のタイミングや社会動向を把握しておくことも重要です。将来的には、故障の際に冷媒の入れ替えが高額になることも考えられ、トレンドに合わせた定期的な買い替えなどを計画に入れておく必要があります。
PHCbiについて
私たちの新しい事業ブランド「PHCbi」における「bi」は、「Biomedical(生物医療)」を表すとともに、弊社の強み・哲学である「Biomedical Innovation(生物医療における革新)」を表すものです。私たちは、1966年の薬用保冷庫1号機の発売以来、「Sanyo」「Panasonic」両ブランドにおいて、その技術力を駆使し、高品質で信頼性の高い製品・サービスを創造し、ライフサイエンス分野や医療業界のお客様の期待に応えるべく努力してきた長い歴史を持っています。より詳細な情報は "PHCbiについて"をご参照ください。