PHCbi

CASE STUDIES 導入事例

ザンビア大学獣医学部/北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所 国際展開推進部門ザンビア拠点(ザンビア)

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(中央)高田礼人教授、(左端)梶原将大助教

アフリカで人獣共通感染症に挑む
~調査研究と人材育成の長い道のり~

日本から遠く離れたアフリカ南部の国、ザンビア。
多様な野生生物が生息する自然豊かなこの地に、同国の感染症研究をリードする教育施設がある。
1983年、日本のODAによって設立されたザンビア大学獣医学部だ。

今回紹介する北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所(旧人獣共通感染症リサーチセンター)は、長年にわたりザンビア大学獣医学部への支援を行ってきた。 2005年からは日本の文部科学省の「J-GRID(感染症研究国際展開研究プログラム)」にて、北大とザンビア大による国際共同研究が開始され、大きな成果を生んでいる。
また、2012年には「SATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)」として「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の調査研究」が採択されており、現在は2期目のプロジェクトが進行中だ。

ODA案件の納入実績を多数もつPHCbi製品は、ザンビアとのプロジェクトでも導入されている。
日本から遠く離れた場所で、PHCbi製品は研究成果にどう寄与しているのだろうか。
プロジェクト代表の高田礼人教授と共同研究者の梶原将大助教にお話を伺った。

ウイルスを運ぶ野生動物を突き止める

ザンビアでは、どのような研究をされているのでしょうか。

高田ザンビア大学獣医学部と共同で、例えばエボラウイルスの研究を行っています。エボラ出血熱はアフリカで局地的に発生し、何度か国境を越えた流行も起こしています。幸いなことにザンビアではまだ確認されていませんが、先回りして対策する必要があります。

エボラ出血熱は、野生動物がもつウイルスがヒトに感染して発生する人獣共通感染症です。人獣共通感染症は、ヒトの行動を制御するだけでは防げません。ウイルスを保持している自然宿主を突き止めることが不可欠です。ウイルスがどこからやってくるのかがわかれば、効果的な予防策を講じることができます。

現在、エボラウイルスを保持している自然宿主の有力候補はコウモリです。僕たちはザンビアに出かけていって、野生のコウモリを捕獲し、血液や臓器などの生体サンプルを採取します。そして、遺伝子や抗体を調べ、ウイルスの有無やコウモリの種類を特定します。ザンビアでは、これまでに1000頭以上のコウモリを調査しました。

このような調査のほかにも、エボラウイルスの診断法の開発に関する基礎研究も行っています。今回のSATREPSは第2期目となりますが、第1期目ではエボラウイルス診断キットを企業との共同研究で開発しました。この診断キットは第2期目で実用化されており、現在もコンゴ民主共和国でアウトブレイクが起きたときに使用されています。

SATREPSの研究を陰で支えるPHCbi製品

一筋縄ではいかなかったという、ザンビア大学獣医学部の研究室の立ち上げ。熱をもつ機器が故障しないようエアコンを備え付けたり、砂が入ってこないよう気密性の高い窓に変えたり。文字通り、一からのスタートだった。ザンビアでは思うように必要な製品が手に入らないため、日本の研究機器が送られた。そのなかには、超低温フリーザーなどのPHCbi製品も含まれる。


ザンビア大学獣医学部研究室の様子

PHCbi製品は本プロジェクトでどのように使われていますか?

梶原薬用保冷庫は、試薬や細胞を培養するための培地などの保管に使っています。また、DNAやRNAの塩基配列を読むためのPCR産物の一時保管などにも利用されています。CO2インキュベーターは、細胞培養用です。ウイルスは細胞の中でしか増えないため、ウイルスを増やすための細胞を「飼って」います。また、抗体をつくる「ハイブリドーマ」という細胞の培養にも使っています。メディカルフリーザーは、PCRを行うための試薬や超低温まで冷やさなくてもいいサンプルなどを保管しています。高価な試薬も入っているので、これも故障したらかなり困りますね。

そして、超低温フリーザーは、フィールドで採取した動物組織のサンプルを収納したり、培養細胞の保存にも使用します。-80℃なら、生体サンプルの遺伝子を損なわずに、ウイルスや細胞の活性を維持したまま半永久的に保存できるのです。

高田ただし、半永久的というのは、-80℃に保存し続けられた場合です。一度でも解けてしまい、そのままだと組織や細胞は死んでしまいます。ザンビアは停電が多いため、非常用電源などをつないで備えていますが、フリーザーが壊れてしまうとどうすることもできません。日本にいるときのようにサービス会社が修理に来てくれるわけでもなく、代わりのフリーザーがすぐに手に入るわけでもないので、非常に困った事態になります。

だからこそ、ODA案件で導入する機器は「壊れにくい」ことが最も重要です。その意味では、僕はPHCに代表される日本製品を信頼しています。14年前に購入した超低温フリーザーもザンビア大学に送っていますが、今も現役で動いています。丈夫ですね。

梶原私が赴任したとき、獣医学部が設立された1980年代に送られた日本の機材がまだ使われていたので驚きました(笑)
はるばるザンビアまでやってきて、全身防護服で野生のコウモリを捕まえてサンプルを採取するのは大変な作業です。そもそも、サンプルを採取できるようになるまでに長い年月がかかっていることを忘れてはいけません。40年前にザンビア大学に獣医学部が作られて、研究室が立ち上がって、実験機器が導入されて......。サンプル1つを手に入れるまでに、たくさんの汗が流れています。フリーザーが故障すると、そうやって積み上げてきた価値が一気に消滅してしまうわけですから、機器の選定やバックアップ体制の構築には気を配ります。

実際に、PHCbi製品を使ってみていかがでしょうか?

梶原ザンビアのスタッフは、自己流にアレンジして使いこなしたりしています。英語表記もしっかりとあって助かっているようです。個人的に、CO2インキュベーターの乾熱滅菌機能は便利だと感じています。ボタンで操作できて簡単なので、現地の人も使いやすそうです。メディカルフリーザーは上下別で除霜機能操作ができる点がいいですね。

高田僕は学生時代から使っていますが、使い心地はいいです。薬用保冷庫の扉を開けなくても中が見えるので、スムーズに取り出したいものにたどりつく点が気に入っています。庫内のサイズ感もちょうどいいですね。

新型コロナウイルス感染症対策で活躍した獣医学部

地球規模課題の解決を目標に掲げ、国際共同研究を推進しているSATREPS。開発途上国の能力とポテンシャルを引き出し、同時に日本の技術力も高める相乗効果を目的として運用されている。高田教授らの取り組みは、まさにこの理念に沿ったものだ。

プロジェクトの手応えを教えてください。

高田調査・研究や、臨床応用を考えた診断法、治療法の開発は着々と進んでいます。また、それだけでなく、この活動を通して人材が確実に育ってきています。長年にわたって共同研究や交換留学を行っていたおかげで、ザンビア大学には、北大に留学して学んだ研究者や、日本のチームと共同研究していくなかで技術力を身に着けていった研究者が多数いるのです。人材の育成には何年もかかるので、これは大きな成果だと考えています。

2014年に西アフリカでエボラ出血熱のアウトブレイクが起きたときは、ザンビア大学獣医学部がエボラウイルスの感染が疑われる患者が出た場合の診断拠点となりました。エボラウイルスに関する知見をもつ人材がそろっており、国内で唯一、技術的・設備的に遺伝子診断が可能な機関だったからです。

また、今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックでも、獣医学部が活躍しています。コロナの発生時に政府から指名された機関は2か所で、1つはヒトのウイルス感染症研究の代表的な研究所、もう1つがザンビア大学獣医学部でした。獣医学部は基本的には動物の病気を担当しますので、ヒトの病気の検査を担当するのはかなり異例なことです。それだけ、2014年の活躍が目覚ましかったのだと思います。

梶原人材に関しては良い循環ができていますね。ウイルスや感染症の研究をやりたいという人が、国内外からザンビア大学に集まってきています。研究をやりたい人は昔からいたと思いますが、これまでは夢をかなえるには海外に出る必要がありました。でも、研究拠点や人材が育ち、ザンビア人研究者たちがさらに下の世代を教えるようになったのを見て嬉しく感じています。

高田30年以上かかりましたが、やっとここまで来たなと感慨深いです。


ザンビア、コウモリのいる洞窟での調査

今後の展望を教えてください。

梶原いま、動物の生態学の研究者と組んで、コウモリに発信機をつけて研究する計画が進んでいます。
コウモリがどういう生活をしているのか。何を求めて飛んでいるのか。それらがわかれば、コウモリに感染しているウイルスの動きも見えてきます。早く研究を進めたいと考えているのですが、コロナの影響でザンビアに行けなくなってしまったので、非常にもどかしいです。

高田現在進行中のSATREPSプロジェクト「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の疫学に関する研究」は、ザンビア大学だけでなく、コンゴ民主共和国の国立生物医学研究所等との共同研究です。コンゴのラボは立ち上がったばかりで、関係性も研究の地盤もまだまだ整っていません。これから頑張っていかなくてはと思っています。

SATREPSは5年間のプロジェクトなので、2023年に終了します。ただ、このようなプロジェクトがあってもなくても、ザンビアとはずっとつながりを保っていくつもりです。自分たちで研究費をとって、同じように研究を続けていきたいです。

SATREPSが掲げている目標は「地球規模課題の解決」ですが、僕はそのコンセプトを気に入っています。今回のコロナでわかるように、自国や先進国だけを守っても課題は解決できません。これを機に、地球規模で考える人がたくさん現れてくれるといいなと思います。


コンゴ民主共和国国立生物医学研究所
PHCbi機器の設置作業風景


コンゴ民主共和国中央獣医学研究所
PCR検査風景

日本からはるか離れたザンビアやコンゴ民主共和国でも活用されるPHCbi製品。インフラを含めた環境は国によって大きく異なり、だからこそ、研究機器には使い勝手だけでなく、トラブルが生じにくい頑丈さが求められる。人獣共通感染症という地球規模の課題の解決のために進められる本プロジェクトは、優れた技術力をもつ研究者らの地道な努力によって、確かな歩みを重ねている。日本とアフリカをつなぐ研究の、さらなる展開に期待したい。

納入先

ザンビア大学獣医学部/北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所
国際展開推進部門ザンビア拠点
URL https://www.unza.zm/schools/veterinary-medicine/about
http://www.czc.hokudai.ac.jp/zambia/

納入機器

・薬用保冷庫
・CO2インキュベーター
・超低温フリーザー
・バイオメディカルフリーザー
・冷凍庫付インキュベーター
・ヒーター式インキュベーター
・バイオハザード対策用キャビネット(SANYO)*
・バイオクリーンベンチ(SANYO)*
* 印の製品は、現在日本以外の地域でのお取り扱いはございません。

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