千葉愛友会記念病院薬剤科における多忙な業務の現状
同科調剤室を訪問すると、一見和やかな雰囲気ではあったが、業務に取り組んでいるスタッフ一人ひとりの表情は真剣であり緊張感も感じられた。
現在22名(常勤21名、非常勤1名)の体制で薬剤科業務を行っているという。
吉田氏は「多い時には1日約400枚を超える外来処方箋に対応しています。
さらには注射調剤を含む入院調剤、高カロリー輸液や抗がん剤の混合などの基本業務も担い、
6つの病棟に薬剤師を1人ずつ常駐配置して病棟薬剤業務を行っています」と話す。
加えて、感染対策、栄養サポート、褥瘡対策などのチーム医療にも参加しているほか、透析や妊産婦のカンファレンスにも参加している、とのことだ。
「このように広範かつ多忙な業務は、薬剤師として充実した業務を行うことができている反面、
薬剤師一人ひとりの負担が大きいことは確かです。
現状の体制で安全な薬剤科業務を全うするためには、業務の効率化を追求する必要もあると考えています」
患者様のニーズに応えるためグループ全体でスキルアップに取り組む
そんな多忙な業務の合間にも、同科では自主的な勉強会や症例検討会を実施しているとのこと。
「一人ひとりが幅広い知識を持つことで、服薬指導の際に個別の患者様に適した提案ができるよう心がけています」と吉田氏は同科のポリシーを語った。
薬剤師一人ひとりのスキルアップを図るため、法人グループ全体での薬剤師の勉強会も開催しているという。
「がんや感染、栄養の認定薬剤師を育成することが方針として掲げられているため、分野別の勉強会が年4回開催されています。
グループ病院の仲間と交流を深めながら、切磋琢磨する貴重な機会となっていますと吉田氏。
横型と縦型の自動錠剤包装機それぞれの特長を生かす
こうした現状において、調剤業務の効率化と質・安全性の向上を支えているのが数々の調剤機器である。
まずは業務の大きなウェイトを占める自動錠剤包装機について。同科では、横型のATC-200Rを入院調剤、縦型のATC-128GR1(192仕様*)を外来調剤と、それぞれの業務特性に応じて使い分けているようだ。
使い分ける理由は「包装速度の違い」とのこと。横型の包装速度は最大45包/分と、縦型の最大60包/分と比較して劣る。
*錠剤種類数の増加に対する拡張性:ATC-128GR1は、最大192種に拡張可能です。
なお、拡張には標準TC棚、またはスマートTC棚が必要です。
しかしながら吉田氏によると「入院患者様の調剤は原則として全て一包化にて行っていますが、
入院調剤においては、外来調剤ほどスピードを求められていないため、必要十分なスピードで分包できています」とのこと。
業務内容に合った型を活用することで、そのデメリットは問題とならないようだ。
▲横型錠剤分包機導入のメリットを動画で見る
続けて横型のメリットを伺った。「PHCbi特有の形状ですが、横型ならではのメリットをいくつも感じています」と吉田氏。
調剤室のスペースを広く使えるということが魅力だそうだ。
「自動錠剤包装機の高さが1mほどで台上が平たい構造なため、ハサミなど調剤に必要な道具を置きながら、作業台として利用することができます」
横型の高さは視界を遮ることがないため、調剤室の状態に応じて壁沿いに配置することもできれば、中央に配置することもでき、自在なレイアウトが可能だ。
同科では横型の自動錠剤包装機を調剤室の中央に配置しているが、その理由を伺うと「病棟から帰ってきた薬剤師のちょうど動線上にあり、持ち帰った中止薬を台上にストックしておくのに便利です。
一包化された中止薬はバラして再利用します」と吉田氏は話す。
また、薬剤の補充においても使いやすさを感じているという。
「縦型の場合は薬剤のカセットを探すのに手間取ることも少なくありませんが、横型では上部のふたをスライドさせるだけで、
左右半分のカセットを一度に視認することができます。
現在、128あるカセットのうち、約100のカセットを使用していますが、補充が必要なカセットを一覧的に確認でき、補充業務を省力化できていると感じます」
一方で、縦型の自動錠剤包装機であるATC-128GR1のメリットも伺った。
「外来では患者様を待たせないための調剤スピードが求められるため、一包化において十分な包装速度を有する本機器を活用しています」
ATC-128GR1では調剤を行う薬剤師と、服薬する患者様の双方に優しい機能が備わっている。
薬剤師が行う手まき作業では、トレー上のLED表示がガイド的に機能することで、まき違いを起こしにくい安心感があり、心理的負担も軽減されていると感じています」と吉田氏。
複数色のLEDがあり、服用時間帯(朝食後等)ごとにそれぞれ別の色が表示されるなど、薬剤師がエラーを起こしにくい工夫がされている。
また、服薬ミスを防ぐための機能として、薬包への印字は服薬時間帯ごとにカラーラインを入れることができる。透析・隔日処方などの特殊処方にも対応できるのが本機器のメリットだ。
計数調剤監査システム(ハンディターミナル)の活用により調剤エラーが減少
同科では、外来調剤を担当する5人の薬剤師がそれぞれ1台ずつ計数調剤監査システムのハンディターミナルを活用している。
「ハンディターミナルでピッキング時の薬剤バーコードを読み込むことで、処方データと違った薬剤をピッキングした場合は画面表示と音でエラーと分かるため、
調剤エラー防止につながります」と吉田氏はメリットを語った。ハンディターミナルの導入後、外来において患者様に間違った薬剤を渡してしまうことはなくなった、とのことだ。
同科では1人体制の当直業務の際に救急外来の調剤を行うこともあり、そうした状況ではハンディターミナルの活用がより薬剤師の不安と負担の軽減に寄与するという。
「調剤完了後に調剤内容がジャーナルとして印刷される機能もありますので、調剤監査時に処方箋の裏に貼り付けて記録として残すことで、あとで確認することができます」
調剤支援システムRINkSを活用することでより薬歴へのアクセスもスピーディに
調剤の現場では、薬歴情報を確認しながらも同時に速さを求められる場面は珍しくはない。
RINkSは薬剤科業務に必要なあらゆる情報に迅速にアクセスできるシステムである。
なかでも薬歴へのアクセスにおいて、そのメリットを感じているとのこと。
「電子カルテは総合的な情報があるため薬歴へのアクセスに時間がかかりますが、RINkSはダイレクトに薬歴にアクセスできるためスピーディに感じます」
今後も薬剤師の専門性を生かす場面を広げていきたい
吉田氏に今後の薬剤科の方針を伺ったところ、「病院薬剤師の業務は着実にその幅を広げています。
当院でも、入院や外来の個別業務だけでなく、チーム医療への参加など果たすべき役割は広がっています。
今後ますます忙しくなることも想定されますので、効果的に調剤機器を活用して業務効率化を図りたいと思います。
病院薬剤師ではありますが、在宅医療への参加を進めることで地域医療により貢献していきたいですね」と意気込みを語った。
納入先
医療法人社団愛友会 千葉愛友会記念病院
〒270-0161 千葉県流山市鰭ケ崎1-1