《ここがポイント!》
- 厚労省とこども家庭庁の検討会で、正常分娩への公的医療保険適用について関係学会・団体へのヒアリングが行われた。
- 関係学会・団体から、保険適用による医療機関の減収や産科医療機関数の減少などといった産科医療の崩壊につながりかねないとの慎重意見が述べられた。
- 賛成・反対ありきではなく議論すべきとの意見も出るなど、引き続き検討を重ねる。
~妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会(第2回 8/1)《厚生労働省》~
出産に伴う経済的な負担を軽減するための支援策などを議論する厚生労働省とこども家庭庁の検討会は1日、関係学会や団体へのヒアリングを行い、学会からは正常分娩(出産)に公的医療保険を適用することへの慎重な意見が出た。
「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」では、関係者へのヒアリングを夏ごろに3回程度行うことになっており、今回の1回目のヒアリングでは、日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会、日本看護協会、日本助産師会の構成員から意見を聴いた。
日本産婦人科医会副会長の前田津紀夫構成員は、その中で、正常分娩に公的保険が適用された場合、出産育児一時金の支給額が現在の50万円に維持されることは考えにくく、出産に伴う経済的な負担は、これまでとそれほど変わらないという見方を示した(資料4P参照)。
一方、多くの医療機関にとっては、診療報酬だけで出産の費用をカバーしきれず減収になるとして、正常分娩に保険が適用されることで産科の医療機関が減少し、アクセスの悪化、サービスや医療安全に必要なコストの削減が進むなどの恐れがあると指摘した(資料1参照)。
前田構成員は、分娩のプロセスや所要時間が多様な上に、保険が適用されない数多くの医療行為を伴うため、正常分娩は公的保険になじまないという考えも示した(資料1参照)。その上で、「少子化対策」という美名の下に制度変更を拙速に行うことには「反対する」と述べた(資料6P参照)。
これに対し、佐野雅宏構成員(健康保険組合連合会会長代理)は意見交換で「(正常分娩の保険適用には)数多くの課題があることはわれわれも重々認識しているが、だからこそ、最初から賛成ありき、反対ありきで議論をスタートするべきではない」と言及した。
亀井良政構成員(日本産科婦人科学会常務理事)は、正常分娩に保険が適用されて医療機関による産科からの撤退が進めば、周産期医療センターに低リスクの出産まで集中して業務が増え、センターでは、病床の確保や医師の増員に対応できなくなり周産期医療の安全が崩壊しかねないという懸念を表明した(資料62P参照)(資料78P参照)。
亀井構成員はその上で「緩やかな集約化に関しては受容できるが、分娩取り扱い施設の急速な減少や医療崩壊につながりかねないような拙速な保険適用になるなら、到底受け入れることはできない」と述べた。さらに「出産費用の保険適用は、出産数のV字回復につながる特効薬ではなく、むしろ産科医療施設を廃業に追いやる毒薬にしかならないのではないか」と強い危機感を示した。
日看協の常任理事の井本寛子構成員は、出産前後の女性や新生児に緊急で対応できるようにケアの提供体制を充実・強化する必要性を訴えた(資料133P参照)。
(資料公表日 2024-08-01/MC plus Daily)
資料1:「正常分娩」の保険化に対する日本産婦人科医会の考え方
資料2:正常分娩の保険適用化がもたらす影響を考える~日本産科婦人科学会の立場から~
資料3:妊娠・出産・産後における助産師によるケア
(提供 / 日本経営)
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