2010年11月9日
独立行政法人 国立長寿医療研究センター
国立大学法人 東京医科歯科大学
パナソニック ヘルスケア株式会社
高度な歯科疾患診断によりQOLを向上 歯科用光干渉断層計システムの臨床評価研究を開始
独立行政法人 国立長寿医療研究センター(総長:大島 伸一)、国立大学法人 東京医科歯科大学(学長:大山 喬史)ならびにパナソニック ヘルスケア株式会社(代表取締役社長:山根 健司)は、歯科疾患診断の改善を目的とした歯科用光干渉断層計(以下OCT:Optical Coherence Tomography)システム[1]の臨床評価研究を行うことで合意しました。
中心波長1.3μmの近赤外光[2]を利用し、光の反射から疾患を診断するOCTシステム[1]は、現在、眼科用や循環器(血管)用で実用化されており、歯科用での実用化も期待されています。歯科用のOCTシステム[1]が実用化されると、従来のX線撮影装置では困難であった初期のう蝕[3]などの歯科疾患が確認できるなど、早期診断による早期治療につなげることが可能になります。また、被曝の心配がなく、小児、妊産婦、高齢者も安心して利用できるようになります。さらに、インフォームドコンセント[4]への活用により、早期治療の動機付けにもつながることが期待されます。
これまで、国立長寿医療研究センター病院 角医長と東京医科歯科大学 田上教授らのグループが歯科用OCTシステム[1]の基礎研究を進め、高分解能撮影[5]という特長を生かし、エナメル質のクラック[6]観察、隣接面のう蝕[7]観察やレジン充填[8]時の接着部位の観察について有効性を検討してきました※。
今後は、国立長寿医療研究センターと東京医科歯科大学が、パナソニック ヘルスケア株式会社が2012度の実用化をめざし開発中のOCTシステムを用いて、有用性の評価を行っていきます。
予測されるさらなる長寿社会に向けて、共同して質の高い歯科診療の実現を目指し、人々のQOL(Quality Of Life)の向上・維持に貢献してまいります。
※ 2010年7月開催の、第88回国際歯科研究学会:International Association for Dental Research(於:バルセロナ)にて発表されました。国際歯科研究学会とは、歯科医学および関連分野の研究促進を図り、口腔保健の向上に寄与することを目的とする歯科学術大会。会員数は、全世界で約12,000人規模であり、大会期間中は、口演発表数:約1,000件、ポスター発表数:約4,000件が発表される大規模な歯科学術大会。
報道関係者様 お問い合わせ先
国立長寿医療研究センター 先端診療部 歯科口腔外科 医長 角(すみ) 電話:0562-46-2311(内線7120)
URL:国立長寿医療研究センター
パナソニック ヘルスケア株式会社 経営企画グループ 藤本 電話:089-966-1508
用語の説明
[1]光干渉断層計システム:測定物に光を照射し、反射した光を干渉・解析し、測定物の断層を表示するシステム。
[2]近赤外光:波長0.8μm~2.5μmの眼に見えない光のこと。一般的には、人体にほとんど悪影響はないとされており、身近な製品としては、テレビや自動車のリモコン、ハロゲンヒータ、ワイヤレスデジタル通信などに利用されている。
[3]う蝕:むし歯のこと。
[4] インフォームドコンセント:患者が自分の病気と医療行為について医療機関側から治療に関する正しい情報提供や説明を十分に受け、お互いが同意納得した上で治療を進めること。
[5]高分解能撮影:画像の画素間隔が約十~数十umという、極めて小さいところまで精密な画像を撮影できるということ。
[6]エナメル質のクラック:歯の表面を覆う硬い部分(エナメル質)のひびや破折のこと。
[7]隣接面のう蝕:隣接する歯と歯の間に発生したむし歯のこと。
[8]レジン充填:むし歯の部分を削った後などにレジン(合成樹脂)を詰めること。
以上
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