【レポート】薬局政策を取り巻く環境変化とOTC医薬品の役割拡大
メディコムでは薬剤師の方や薬局関係者の方を対象に、2023年12月15日に「薬局政策を取り巻く環境変化とOTC医薬品の役割拡大」をテーマとしたセミナーを開催いたしました。
講師には、磯部 総一郎様を迎え、講演後には薬局団体や視聴者の方々からのご質問もいただき非常に議論が白熱した1時間半となりました。セミナーで司会進行を務めていただいた、ドラビズon-line編集長の菅原さんに振り返っていただきました。
【講師】日本OTC医薬品協会 理事長 磯部 総一郎 様
【タイトル】薬局政策を取り巻く環境変化とOTC医薬品の役割拡大
人口構造の変化がもたらすもの/保険外のことも含めて医療を議論する必要
少子高齢化、特に働き手の減少といった人口構造の変化は指摘されて久しいですが、これが医療政策にどのような影響をもたらすのか、磯部氏は改めて分かりやすく解説してくれました。例えば2023年に東北のある県では、8つあった2次医療圏を3つにする方針が決定されており、専門医療機関が維持できない地域が急速に増加していることを紹介しました。こうしたことが起こると、これまで2次救急でみていたような患者を一般病院でみなければいけない状況が起こり、外来についてもタスクシェア/タスクシフトが必要になってくると解説しました。一方、こうしたタスクシェアの議論に関して、磯部氏は「オンライン診療や医療DXなど、どうしても保険の中の話が中心になってしまう」と指摘し、OTC医薬品など保険外を含めて議論していかないと医療自体が回らなくなるのではないか、と危惧されました。
リフィル処方箋浸透の先にスイッチOTC活性化があるのでは
2024年の薬価・診療報酬改定の議論に関しては、長期収載品の自己負担の問題や後発医薬品の安定供給問題、リフィル処方箋などに触れ、これらにもOTC医薬品の問題が絡んでくるとの考えを示しました。
長期収載品の自己負担に関しては、医療上の必要性や供給問題に関連するものは除外する方針が示されたことで、運用の難しさがあるのではないかとの感触を示し、強制的な仕組みよりもOTC医薬品活用という選択肢を示す方策の推進を訴えました。「医療機関にかかる時間がなかなかとれない人などは、スイッチOTCを活用してもよいと思う人もいるのではないか」としました。また後発医薬品の供給問題では、鴨下
一郎氏(内閣官房参与)の「保険収載するルールがあるなら保険から出るルールも必要」とのコメントを紹介し、「多くの医薬品が保険にずっと残り続けるとメーカーはそれを造り続けなければならず、多品種少量生産の問題につながっている」との観点を指摘しました。
リフィル処方箋に関しては、生活習慣病の中で比較的状態が安定しているという観点においてスイッチOTCの候補に近い状況があると指摘し、「こうした成分がOTC化されれば、ある程度フレキシブルに医師と薬剤師がコラボでみていくことになり、リフィル処方箋の先にはそういった成分のスイッチ化があるのではないか」と話されました。
加えて、調剤報酬改定の議論の中で中医協では地域支援体制加算について、OTC医薬品の備蓄品目が1つの論点になっていることも紹介されました。「要指導医薬品などをきちんと備蓄し、またそれを取り扱って地域の方々に提供することが地域の薬局の役割だろうということがクローズアップされているように思います」と述べられました。
スイッチOTC促進のためには
スイッチOTCについては、「全体として医療をどう守るか」の視点が必要と指摘され、医師に「自分たちが処方している医薬品が処方なしでいいのではないか」と問えば、否定されたような気持ちになることも理解できるとした上で、どのように理解を得ていくかが重要と話されました。
そのほかの講演内容
そのほか、後半の薬局関連団体の方からの質疑応答では、日本薬剤師会の政策提言の一部である「医療用一般用共用医薬品(仮称)」の見通しについても私見を述べました。また、今後の薬局のあり方について質問が出ると、これまでの磯部氏の幅広い経歴の視点から示唆に富んだ回答をされました。
今後の薬局のあり方を考えるのに有用な指摘が満載です。ぜひセミナーをご視聴ください!