電子処方箋の運用が開始されると医師・薬剤師・患者さんそれぞれの利便性が増し、患者さんが医療機関で受診してから、薬局でお薬を受け取るまでの流れが変化します。特に患者さんが利用する薬局を決めるきっかけは、これまでと異なるものになり、求められる薬局、薬剤師像も大きく変化するでしょう。今回のコラムでは、電子処方箋により何ができるようになるのか、これから求められる薬剤師像がどう変化するのかについてご説明します。
電子処方箋で何ができるようになるんだろう?
電子処方箋には、紙の処方箋を電子化するだけではなく、2つの大きな機能があります。
1つ目は、データバンクという機能です。
オンライン資格確認等システムの導入で得られる「レセプト情報を基にした過去3年分の薬剤情報」や、電子処方箋の導入で得られる「直近の処方情報や調剤情報」をレセプトコンピューターや電子カルテ等で一元的に閲覧できます。つまり、電子処方箋を導入することにより、複数のクリニックや薬局間で、登録された患者さんの処方情報や調剤情報を、患者さんの同意のもと、共有できるようになります。その情報に基づいて新たに適切な処方・調剤が実施され、一貫性のあるデータが積み上がります。
また、現在オンライン資格確認等システムでは特定健診情報の閲覧が可能です。さらに、令和4年9月以降には透析、移植、手術、医療機関名等、確認できる診療情報が追加される予定です。
2つ目は、コミュニケーションツールという機能です。
電子処方箋のデータを介して、医師から薬剤師、あるいは薬剤師から医師に伝達事項の連絡が可能です。医師から薬剤師には「重複投薬等チェック結果に関するコメント」や「検査値データ」等が、薬剤師から医師には「疑義照会結果」や、その他特筆すべき「伝達事項」を連絡できます。すなわち電子処方箋は、正確な情報のやり取りを効率的に実現できるコミュニケーションツールの機能を備えていることがわかります。
これから求められる薬剤師像とは?
電子処方箋のシステムは、オンライン資格確認等システムの基盤を利用して構築されます。
上記のとおり、オンライン資格確認等システムと電子処方箋の導入によって、患者さんのさまざまな情報を「データ」で入手できるようになります。
また、令和4年度10月の診療報酬改定では、医療情報・システム基盤整備体制充実加算が新設され、下記の通りとなりました。
①マイナンバーカード健康保険証(マイナ保険証)を利用する場合は1点加算(6月に1回)
②マイナンバーカード健康保険証(マイナ保険証)を利用しない場合は3点加算(6月に1回)
これは今後の医療政策の重要課題として、国がマイナンバーカードや医療ICTの利用を促進していることを示唆しています。
これからの薬局経営において、オンライン資格確認等システムや電子処方箋等の医療ICTの導入は大きな意味を持ちます。これからの薬剤師には、これらの医療ICTを介して得られるデータを利活用して患者さんをより深く知ろうとすることが求められるようになるでしょう。その上で患者さんへの向き合い方、寄り添い方、服薬指導のあり方も見直していく姿勢が必要となるのではないでしょうか。
さらに、オンライン診療・オンライン服薬指導やリフィル処方箋が普及していけば、患者さんは薬局の「立地」にこだわらなくなると予想されます。これまでは立地条件のためにアプローチできていなかった患者さんに、自局を利用していただくチャンスが拡がるのです。
オンライン資格確認等システムや電子処方箋の導入を、患者サービスあるいは患者さんへのアプローチを見直すひとつの「きっかけ」にしていただけたらと思います。