患者さんが服用する薬剤の履歴が記録されたお薬手帳は、適切な医療サービスを受けるうえで非常に重要なツールです。これをスマートフォン等の電子端末のアプリとして利用できる電子版お薬手帳についても、近年利用が拡大しています。では、電子処方箋の観点から見た場合、電子版お薬手帳の対応状況はどうなっているのでしょうか。
電子処方箋と電子版お薬手帳の連携
2023年3月に厚生労働省が公開した「電子版お薬手帳ガイドライン」では、電子版お薬手帳について、「実装すべき機能」、「実装が望ましい機能」、「将来的に実装が望ましい機能」がそれぞれ示されています。
電子処方箋は「実装が望ましい機能」とされており、具体的には以下のような内容が挙げられています。
・電子処方箋の引換番号を画像やテキストデータ等の手法により、利用者が薬局へ送信する機能を実装することが望ましい
・厚生労働省から提供されるデータを基に、電子処方箋に対応している薬局・医療機関を表示・検索する機能を実装することが望ましい
・マイナポータルから、レセプトの薬剤情報と併せて、API 連携により電子処方箋の処方・調剤情報を取り込む機能を実装すること
また、電子版お薬手帳はPHR(Personal Health Record)の1つに位置付けられますが、将来的には他のPHRサービスとの連携も見込まれています。
マイナポータルと電子版お薬手帳
患者さんの薬剤情報を閲覧する手段としては、電子版お薬手帳のほかにマイナポータルも挙げられます。ただし、マイナポータルで閲覧・取得が可能な薬剤情報は過去3年分に限られ、それを超える期間の情報や、要指導医薬品・一般用医薬品は含まれません。そのため、電子版お薬手帳には、マイナポータル上の情報を補完する役割が期待されています。
なお、マイナポータルから診療・薬剤情報を確認するには、マイナポータルトップページの「診療・薬剤・医療費・検診情報の確認」、または「わたしの情報」から「診療・薬剤情報を確認する」をクリックします。
今回は、電子版お薬手帳と電子処方箋の対応状況についてご紹介しました。電子版お薬手帳のなかには、電子処方箋の引換番号を薬局に送信する機能を実装したものもすでに登場しています。今後も連携は進むと見込まれており、患者さんの利便性は向上していくことでしょう。