電子処方箋の準備を進めるなかで、ICカード(HPKIカード含む)での電子署名について耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。現時点では電子署名のためのカードを用意していない方や、ICカード(HPKIカード含む)での電子署名についてあまり知識がない方もいらっしゃるかもしれません。今回のコラムでは、電子処方箋のしくみで必要となるICカード(HPKIカード含む)について解説します。
電子処方箋にはICカード(HPKIカード含む)による医師、薬剤師の署名が必要です
まずは処方箋の署名について、医師法施行規則や薬剤師法・薬剤師法施行規則でどのように定められているかを確認しましょう。
医師法施行規則第21条では、患者に交付する処方箋には記名押印または署名が必要となる旨が記載されています。また、薬剤師法第26条および薬剤師法施行規則第15条では、医師の処方箋にもとづき調剤した際には、その処方箋に調剤済みの旨を記載し、記名押印または署名が必要との記載があります。
電子処方箋の場合、医師が電子処方箋管理サービスに処方箋を登録することが、従来の紙処方箋の交付にあたると考えられます。また薬剤師は、医師によって電子処方箋管理サービスに登録された電子処方箋にもとづき調剤を行ったあと、処方箋を調剤済みとして登録します。ここで医師および薬剤師は「記名押印または署名」を行う必要があります。電子処方箋の場合、ICカード(HPKIカード含む)を使って資格認証と電子署名を行うことで、この要件に対応する必要があるのです。
電子処方箋で利用するICカード(HPKIカード含む)とは?
では、電子処方箋で利用するICカード(HPKIカード含む)とは具体的にどのようなものなのでしょうか。ここからは、代表的なICカードであるHPKIカードについてご紹介します。
HPKIとは、保健医療福祉分野の公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)の略称です。電子署名や電子認証を行う基盤であり、医療現場における公的資格の確認機能を持っています。基盤の設置要件は厚生労働省により策定されており、要件を満たした認証局がHPKI資格認証に使用するカードであるHPKIカードを発行することができます。現時点では、認証局は日本医師会、日本薬剤師会、医療情報システム開発センターの3つです。発行にかかる時間や費用は、それぞれの認証局によって異なる場合があります。
ICカード(HPKIカード含む)の普及の状況について
ウィーメックス株式会社が2022年1月に実施した調査においては、開業医のHPKIカード保有率は11%、勤務医の保有率は5%(医師全体で約6%)であることがわかりました*。保有していない理由としては「必要性がない」という回答が45%でしたが、電子処方箋の導入を検討する医師が増えれば、こうした状況は変化する可能性も大いにあると言えるでしょう。
電子処方箋に利用できるICカードとしては、HPKIカード以外にもマイナンバーカード等の利用が検討されています(2022年3月時点)。これが実現すれば、医師や薬剤師にとっては選択肢が増えることになります。